海外で戦うために必要なこと──中国出身、女性社員の奮闘記
日本最大級のリサイクルショップであるコメ兵。2019年現在、その市場を日本だけでなくアジアの他国にも広げている。そんなグローバルな風潮が高まる社内で働くひとりの女性社員がいる。2017年度入社で中国出身の斉 光蕊(さい こうれい)。管理本部・経理部で働く彼女は、どのようにここまで走ってきたのか。そしてこれからのビジョンは──。【talentbookで読む】
強まるグローバルの風。高まるコミュニケーションの重要性
現在、企業活動がグローバル化してきていることは言うまでもない。そんな風潮の中、日本最大級のリユースデパートであるコメ兵も海外を強く意識している。ブランド品の消費、保有量の成長が著しい中国市場を中心としたアジア諸国へ事業展開を推進。香港を皮切りに北京・上海・タイに現地法人を設立して着実に事業拡大を図っているのだ。
しかしそれは、決して簡単なことではない。海外で事業を行うにあたって、あらゆる要因を考慮する必要があった。課題となってくるのはその国々に合わせた財務・税務の計上、日本本国との連結会計の調整業務。
言葉の壁が存在するのはもちろんのこと、現地駐在との情報共有から直接、銀行等の金融関連や法務局とのコミュニケーションも発生する。それに対し、日本本国の経理部門内でも外部の専門家とチームを組んで対応してはいる。だが、時間と負担が多大にかかる業務となってしまっていることは確かだ。
このような厳しい状況の中、管理本部・経理部の斉光蕊は奮闘している。
斉は、元々大学で国際ビジネスの企業会計や資金調達について専攻していた。12歳で日本へ来て日本の言語はある程度できていた。それだけでは足りないと思い社会に通用するビジネススキルを取得したいとの想いで日本の事業会社の選考を決意した。斉はこの時期に会計のスキルの土台を形成する。
そして同時に語学も勉強していたために、そのふたつを生かせるところ──国際系会計事務所への就職を考えていた。が、日本の企業を知ってから国際会計業務に関わる仕事を目指すという想いを持って就職活動を開始する。
斉 「語学を生かしながらビジネスに直接的に関与する事で経営、事業運営を経験し次のステップへ到達すると考えました。日本の事業者がどのような考えを持って運営されているかをしっかり経験しないと気持ちが入らないし、伝わらないと思って……」
店舗営業で学んだ、商品知識と“接客力”
そうしてたどり着いたのがコメ兵。そもそも親がコメ兵をよく利用していて、小さいころから知っていたと言う。
実際にエントリーをして企業内容、対応していた人事企画部メンバーが好印象だったこと、そして後の同期となる内定者との懇親会で打ち解けたことが斉が入社を決意した理由だった。
斉 「入社したタイミングはインバウンドバブルの真っただ中でしたがいずれは飽和状態を迎えると考えました。同業他社も海外へ進出する中でコメ兵も海外進出を強化すると思いそこに自分が活躍できるかもしれない土壌があると感じました。大学で学んだ財務諸表を読み取る力を生かしてリスク分析もしました。
固い印象の会社なのかなと思い緊張して面接を受けましたが人事企画部の社員の方もとても気さくで丁寧に対応いただいてすごく安心し、信頼感を得たのを覚えています」
入社後は、有名ブランドバッグが並ぶ名古屋本店本館3階で、商品知識・接客技術を先輩から学びながら業務に従事した。
斉 「エルメスのカラーバリエーションを覚えるのがとても大変でした。ルージュでも微妙に違う配色がとてもたくさんあるので覚えるのも至難の業。お客様からの問い合わせニーズも高く、いつも対応に苦慮していました。詳しいお客様から教えてもらうこともたくさんありました(笑)」
そして入社10カ月目からはバッグの鑑定士としてデビューする為のカリキュラムに沿った勉強を開始する。厳しく、難易度の高い試験をめでたく突破して2年目の秋には鑑定士として買取センターでの業務を開始した。
初めての査定のときのことを、斉は今でもはっきりと覚えていると言う。
斉 「初めての査定は高額なエルメスのバーキンとケリーでとても緊張しました。新規ご利用のお客様で、先輩のサポートをいただきながらもしっかりお客様のお話を聞き、相場とコメ兵の事を、想いを持って伝えたんです。そうしたら買取が成立して。ほんとうにうれしかったですし、すごい達成感でした」
当社のビジネスモデルの根幹である買取・販売を経験した斉は、その年の暮れに営業で得た知見を持って経理部門へ異動を志願する。名古屋本店長は会社の成長と斉の成長を鑑みてこれを承諾。2019年2月に管理本部・経理部へ着任した。
そして管理本部・経理部へ──想定外と想像以上の日々
斉の新たな活躍の場──管理本部・経理部は、想像以上に忙しく、領域が広い部署であった。それもコメ兵という会社の規模を考えれば無理もない話ではあるのだが、年商500億を超える上場会社の経理部門。当然のことながら、様々な業務が飛び交う。
斉 「あまりの業務の多さ、広さに目が回る思いでした。志願したのは自分なんですけど、それでもこんなはずじゃなかった、とか想定外だ、って何回も思うこともあります」
しかし、それでも斉は気持ちを切らすことなく、地道に業務を遂行していく。基本的な業務である請求書のチェック・仕分け計上・振込対応や社員の立替金の支払・決算前のリードシートの作成などを行いながら、先輩社員と業務に向き合う日々を送った。
ただ、管理本部・経理部が扱う業務は、社内のみで解決できる問題ばかりでもない。社内のコミュニケーション以外にも金融機関の訪問や会計士、税理士等の専門家・監査法人の担当者との打ち合わせなど店舗営業では会わない関係者とのチームアップを行い、業務遂行している。
斉 「買取・販売業務では関わる人ってお客様と、あと同じ店舗のスタッフくらいだったんですけど、本部に転属してから社の内外問わず範囲も広がって。正直すごく大変です。スムーズに取次する事や仕事に参画する為の知識を得て早く名前を覚えてもらおうと必死です」
そんな中、店舗営業で得た接客力と持ち前の語学力が斉の身を助けたのだと言う。グループ会社の北京、上海の駐在担当とのコミュニケーションから中国の金融機関との調整も早くから担い、メキメキと実力を発揮してきている。
そんな斉は業務のやりがいに対してこう語る。
斉 「海外グループ会社の業務で振込等の実務を正確に遂行することを意識しています。自分がミスをしてしまうと取引先様に直接ご迷惑をかけかねないので、大変ですが直接的な業務でやりがいを感じています。その過程で上司からも海外の経理マニュアル制作を依頼される等、少しずつ認めてもらえている実感もあるのはうれしいですね!」
会社とともに、走り続ける──成長と挑戦というビジョン
管理本部・経理部という場で自らの能力を生かして挑戦を続ける斉。業務以外にも会社の発展のために活動を行っている。自ら中国語講座を開講して部内メンバーの語学力のアップと結束力の向上に寄与しているのだ。
斉 「海外グループ会社の接点が増えてきている中で経理部としてお客様とのコミュニケーションを多くして信頼関係を構築できるきっかけになればと思いました。現地採用のスタッフとも言語の壁を出来るだけ低くして楽しく仕事出来るような雰囲気づくりにもつながればいいなとも。部内でもなかなか好評いただいて楽しくなっちゃってます」
そして会社だけでなく、斉自身も成長しようと常に挑戦できる環境を欲している。そんな斉のこれからのビジョンは──。
斉 「仕事を通じて資格取得を目指し海外グループ会社の主担当として経営サポートを行っていきたいです。今夏には海外グループ会社へ出張で赴き、現地での経理業務を確認してより理解を深めて精度の高い会計を提案していきたく思っています。
コメ兵は、成長したければ成長したいと望むだけ、それに見合った環境を用意してくれる会社だと感じています。もちろんその分、全力でものごとに取り組むことは要求されますけど。業務と学びを同時に行える環境提供に感謝しています」
斉は、これからも自らに目標を課して更なる成長を目指していく。
海外へとマーケットの拡大を狙うコメ兵。そこで必要なのは年齢・性別・国籍に関係なく、自走して、成長していける人材なのだと考えている。そして、そのために必要な土壌は、すでにある。
チャレンジングな企業風土が社員を育て、社員が会社を大きくする──斉と、コメ兵の挑戦はまだ始まったばかりだ。