商品力のポテンシャルを計測せよ!女性ダイレクターが導き出した「ヒットへの方程式」 | キャリコネニュース
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商品力のポテンシャルを計測せよ!女性ダイレクターが導き出した「ヒットへの方程式」

▲New Product Launch Div. ダイレクターの堀木宮子

▲New Product Launch Div. ダイレクターの堀木宮子

世界中からユニークな商品を見つけ出し、改良を加え、提供することでお客様のニーズに答え続けてきたショップジャパン。しかし2016年・2017年とヒット商品に恵まれず、業績は低迷。そんな状況を変えたのが、New Product Launch(以下、NPL)という施策。NPLの全容と、生まれた背景をご紹介します。【talentbookで読む】

売り上げのV字回復に貢献したNPLはこうして生まれた

ショップジャパンは世界中から、ユニークな商品を見つけ出し、改良を加え、ショップジャパン独自の商品としてお客様にお届けしています。見つけ出す商品は、海外のヒット商品であることが多いのですが、海外でヒットしているものが必ずしもすべて日本でヒットするとは限りません。

ショップジャパンは商品を日本で販売するにあたり、丁寧にさまざまなプロセスを踏みます。商品の改良を行い、販売に必要なクリエイティブの制作や、テスト販売実施のための媒体費、そして部署横断で販売を進めるため人的リソースもかけ、テストマーケティングを行うのです。しかし、実際にヒットする確率が3割あれば良い方。

たとえばショップジャパンのヒット商品として周知されている、「ビリーズブートキャンプ」や「ワンダーコア」、「トゥルースリーパー」は、これまでショップジャパンが見つけてきた商品の数に比べるとほんの一握りです。

そのヒットの打率を7割近くまで引き上げ、2018年度の売上のV字回復に貢献したのが、New Product Launchという商品ローンチまでのシステム。NPLを立ち上げた、部長の堀木宮子は導入前をこう振り返ります。

堀木 「テストマーケティングまでは商品発掘のバイヤーや、マーケティングを担うブランドマネージャーのセンスや主観に頼っていたため、お客様に本当に受け入れていただける商品なのか、結果が出るまではまったく予想が立たないというのが課題にありました。

ショップジャパンはひとつの商品に、多くの部署が関わり、協力し合いながら販売までたどりつきます。そのプロセスの中でも、メンバーの責任感が強いので、ヒットする・しない関係なく全力で向き合うんです。それは姿勢として正しいのですが、だからこそリソースやコストが増大してしまうという現実がありました」

その現実は確実に会社をむしばみます。2016年度と2017年度の売上が、ヒット商品の少なさから振るわなかったのです。

もっと、客観的判断やプロセス、原理原則をつくり、ヒットの打率の高いものにコストやリソースを投資するべきではないか──。堀木が経営陣とディスカッションしたのは2017年の夏のことです。そして、それから堀木を含む3名のメンバーでこのNPLシステムのしくみ化から稼働までを担当しました。

「関門」を設けて、流れを五分割する──NPLの“からくり”

▲NPL導入後、ヒット商品となった「スクワットマジック」

▲NPL導入後、ヒット商品となった「スクワットマジック」

堀木が立ち上げたNPLシステムは、商品力のポテンシャル──「商品調査をし、将来的にどのくらいヒットするのか」を統計学的観点から計測します。これが商品の販売決定を行う指標になるのです。

NPLシステムの肝は、「関門を設けること」。これまでは商品販売までのプロセスがひとつの大きな流れになっていましたが、NPLシステムでそれを変えました。販売まで大きく4つのゲートを設け、ゲートごとに設けたスコアをクリアした商品のみが次のゲートに進むことができる。

これによりダムのゲートを開くようなイメージで、ゲートが進むにつれて投資できるコストやリソースが増えるため、リスクを最小限に抑えられるのです。従来は商品担当者の熱いパッションで販売するかどうかを決定していましたが、客観的な指標があることにより、他部署への協力を仰ぎやすくなったというのもこのシステムを導入した利点になっています。

堀木は導入から稼働まで意識したことは、スピード感だと言います。

堀木 「このシステムの立ち上げから実際に動き出すまでを、たった 1カ月半で行いました。メンバーは私を含めたったの 3人。

ゼロからイチを生み出す新規部署やビジネスの立ち上げは、早く結果を出し、自分たちが何をやっているのか、周りに認めてもらうことが大切だと思っています。 だからこそ、スピード感が命です。 2年前のお盆の時期。チームメンバーのふたりには休暇を返上して一緒に頑張ってもらいました」

そしてNPLの導入で、発売前からヒットする確率の高い商品を見極められ、投資に集中できたことにより、気軽に、正しいスクワットで下半身を引き締めるエクササイズマシン「スクワットマジック」や、1台8通りの調理ができる電気圧力鍋「クッキングプロ(販売当時は前身の商品)」というヒット商品に恵まれたのです。

堀木 「大変ながらも、それを乗り越えると達成感や喜びを感じる、まさに “大人の文化祭 ”の感覚でした。

しかもそれに対する評価もちゃんとした形でいただいて。社員が投票する形で表彰されるチームが選ばれる年度末のアワードがあるのですが、それに NPLが選ばれたんです。NPLがショップジャパンのビジネスの加速に必要な存在だと認めてもらえたことがすごく嬉しかったですね」

社内を巻き込むために大事なのは“明確化”と“ひもづけ”だった

▲堀木がチームに説明した際に使用した「コーヒーストラテジー」のビジュアル

▲堀木がチームに説明した際に使用した「コーヒーストラテジー」のビジュアル

軌道に乗せることができたNPLですが、社内の協力がなくては稼働までたどり着くことはできません。

堀木 「新規部署の立ち上げや、ビジネスのスタートは、絶対にひとりではできません。社内の協力があってこそ。しかし、形や実績がないものに対して、大切な時間を割いてもらうことは容易なことではありません」

堀木が社内を巻き込むために意識していたことは──。

堀木 「私がいつも意識していることは、ビジョンとゴールを明確に共有することです。自分たちがこれから取り組むことが、どこにどんな良い影響をもたらすことができるのか、実現後の Afterの姿を伝え、奔走してくれるメンバーのモチベーションを高めることを大事にしています」

そして、このビジョンやゴールの浸透には、堀木らしいやり方があると言います。

堀木 「必ずビジョンやゴールをビジュアル化しています。言葉でダラダラと説明されるよりも、見ただけでイメージしやすいため、人の印象に残りやすい。そして、変な誤解や解釈が生まれません。

たとえば、新商品の商品発掘戦略を珈琲の栽培から販売に例えたビジュアルを使用した際には、チームメンバーが日常的に “コーヒーストラテジー ”という言葉を使っていました。『 1週間前に、●●と発表していた戦略』と説明するよりも、『コーヒーストラテジー』と言った方が、あーあの話ね!と全員がぱっと思い浮かべることができます」

大事なのはビジョンやゴールのビジュアル化、そしてそれを覚えやすい単語とひもづけること。思想の伝わりやすさと正確さを確保するための工夫が、そこにはありました。

そしてもちろん、ビジョンやゴールを伝えるためには手間も惜しみません。

堀木 「新たなことをスタートする際には、必ずキックオフミーティングを実施し、ビジュアルを用いてビジョンとゴールを説明するのですが、今回はかなりの回数を重ねましたね。半年間で 8回も開催していました(笑)」

堀木がこの手法を編み出したのは、ショップジャパンに入社する前、「愛・地球博(2005年日本国際博覧会)プロジェクト」に参画していたことがきっかけです。

堀木 「さまざまなバックグラウンドの方と一緒につくり上げていかなければならないプロジェクトでした。商社、広告代理店、百貨店や物流の方など職業や文化の違う方々が集まりひとつのチームとして動きます。

映画にたとえると制作委員会のような感じですね。さまざまな業界から集まったメンバーと、成功するかどうかわからない未知のイベントをゼロからつくらなければならなかったんです」

そんな多種多様なメンバーを取りまとめていたプロジェクトリーダーの姿が、堀木の考え方に大きな影響を与えたのです。

堀木 「このときのプロジェクトリーダーが、メンバーが同じ方向に向かっていけるよう、ゴールやプロジェクトが成功した後の姿をビジュアル化し説明していたことがすごく印象に残っています。言語や価値観が違うメンバー同士でも、共通認識を持ってまい進していました。

今、私が組織のリーダーという立場になって、このときの経験が生きています」

まだまだ挑戦は終わらない。プロダクト強化という野望

▲NPLチームメンバーのミーティング風景。実際に商品を持ち込みながら会議をすることも

▲NPLチームメンバーのミーティング風景。実際に商品を持ち込みながら会議をすることも

NPLが立ち上がって、約2年。現在、チームとして課題に感じていることは、お客様に期待される商品を提供し続けることだと堀木は言います。

堀木 「今までのショップジャパンは、すでにある商品をどのように販売していくかといった、マーケティングが強いブランドでした。おかげさまで大ヒット商品を生み出すことができています。

しかし、それではヒットすればショップジャパンの商品だと認知はしていただけますが、毎年、毎月、いつもお客様に期待される商品を提供し続けているブランドとは言えません」

その課題を克服するために必要なものは──。

堀木 「『ショップジャパンなら、ワクワクする商品に巡り合えるわ!』とお客様が Webサイトや店舗に、常にふらっと立ち寄っていただけるよう、プロダクトの強化をしていきたいです。

そのためには、これまでよりもスピードアップし、イノベーティブでユニークな商品をラインナップし続けなければならないと考えています」

テレビショッピングという手法だけでなく、商品力でお客様を引きつける、それが堀木の理想なのです。

そして、チームの規模も大きくなっています。

最初はたった3人しかメンバーがいませんでしたが、2019年現在は15名に拡大。

チームメンバーが増えてもなおチームが団結し、同じ方向を向いていくために。堀木が意識しているのは、メンバーとのコミュニケーションを欠かさないこと。

堀木 「新卒社員や、社歴の浅いメンバーが多く、どうしても業務上でのコミュニケーションは月 1回ほどの頻度になってしまいます。よりこのチームで成長してもらいたいので、私自身のアイデンティティや、チームの良さを知ってもらうために、私から必ずコミュニケーションするようにしているんです。

商品カテゴリーごとに担当を分けているのですが、その担当を決める際にも、このコミュニケーションが役立っています。自分の興味関心のあることの方が、仕事への熱量がより大きいものになる。なので、普段の会話からメンバーの背景や人柄を読みとき、担当のアサインをしています」

このやり方も堀木が若手だったころの経験から生まれたもの。

堀木 「私がまだ 20代のときに商品企画担当者として起用されたときのことです。起用してくれた、 60歳くらいの年の離れた社長が『あなたの個性をどうやって生かしたらビジネスがうまくいくか』と真剣に問い、考えてくれました。

これまでスキルや経験を聞かれることはありましたが、持って生まれたパーソナリティを認められたことが嬉しかったのを今でも覚えています」

そして堀木が考える自分自身のステップとは。

堀木「これまでチームの旗振り役として、ミッションやゴールをつくり、チームを率いてきました。組織が大きくなったこれからは、メンバーたちと一緒に NPLのビジョンをつくっていきたいと思います」

社内の制度に向き合って試行錯誤を重ね、ショップジャパンをより良い方向へと導いてきた堀木。

安定して高クオリティな商品をお客様に提供し続けるための挑戦は、これからも──。

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