「子ども向け補聴器」で世界の難聴者に笑顔! 口数が増え、性格も明るくなった
日本は人口1万人に対して医師が23人。1人の医者が430人を診る計算になり、医師不足と言われている。世界的に見ても、OECD最下位の韓国、ポーランド、メキシコの22人に次ぐ23人で、下から4番目の少なさ。オーストリア(49人)の半分以下だ。
しかし世界を広げれば、人口1万人に医師1人未満という医療事情の悪い国も多数ある。2015年2月24日の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、そんな国々に日本の画期的な医療技術を届けようとする企業の努力を紹介した。
細かな調整が必要で大量生産ができない
先天性難聴は1000人に1人生まれると言われ、たとえ異常があっても早めに補聴器などで音を聴かせることで、会話できるようになることも多い。
しかし、新生児に行う難聴のスクリーニング検査を受ける割合は、日本全国で6割程度。2年前から補聴器をつけているヒロト君(6歳)のお母さんは、補聴器の効果をこう語る。
「他の子に比べ口数が少なかったんですが、補聴器をつけてから積極的に話すようになり、性格が明るくなりました」
補聴器は聞こえの度合いによって細かな調整が必要なため、大量生産ができず、ひとつずつ人の手で作られている。ヒロト君の補聴器を作ったのは、東京・国分寺にあるリオンだ。従業員770人、国内シェア25%で国内最大手の補聴器メーカーである。
高齢者向けを中心に29の国と地域で補聴器を販売しているが、現在力を入れているのが先天性難聴の子ども向け製品。海外販売担当課長の中野渡直子さんが注目したのは、ベトナムの子どもたちだ。
1960年代、ベトナム戦争で米軍が散布した枯葉剤が原因で、様々な障害を持つ子どもが生まれた。土壌に残された化学物質によって影響は子や孫の世代にも続き、先天性難聴はそのひとつと言われている。
「効果なし」と見捨てられた子が音に反応
ベトナムでも3年前から新生児検査を行っているが、国立産婦人科病院ですら検査機が1台しかなく、すべての新生児を検査できない。街の耳鼻科で販売している補聴器は15~30万円するドイツ製だが、裕福でない人も借金して買うという。
中野渡さんは、ハノイのサダンろう学校を訪れた。5歳児の教室を見ると、重度の難聴の子どもたちは補聴器をつけておらず、お遊戯では無表情に体を動かすだけ。彼らには補聴器をつけても効果がないと考えられているからだ。
中野渡さんは検査機を持ち込み、自らの手で聴力検査をした。このひとりグエン君は重度ではあるが低い音は聞こえていると分かり、補聴器をつけてみると音に反応。先生の声に合わせ口を動かし、太鼓の音に大喜びで笑っていた。
「耳が聞こえないまま放っておかれるよりは、聞こえた方が生活の質は格段にあがる。最新の技術を紹介したい」
番組ではこのほか、沖縄のITベンチャー企業アクシオへリックスが、アフリカのスーダンで移動診療所「ドクターカー」を展開する様子を紹介した。
検査機器などを設置した車で病院のない地方の村々を訪れ、マラリアなどの病気を未然に食い止める一助になっており、ITを駆使して地方と都市部の専門医を結ぶ医療システムまで作った。
スリランカからの留学生がベンチャーで社会貢献
アクシオへリックスは25年前、スリランカからの留学生が立ち上げたベンチャー企業だ。社長のシバスンタラン・スハルナンさんは、事業の意義をこう語る。
「生まれて40年、50年、一度もお医者さんを見たことがない人がいた。我々が作ったものが向こうの国で実際に使われて、何らかの病気が良くなったという事実さえ残れば、大成功だと思っています」
スハルナンさんやリオンの中野渡さんの取り組みは、ビジネスでありながら人助けができるやりがいのある仕事だ。グエン君が補聴器をつけて笑ってお遊戯する様子を見つめる中野渡さんの笑顔から、そんなことを思った。(ライター:okei)
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