私がやらずに誰がやる。大企業を相手に「有言実行」を貫く男が“見据えるもの” | キャリコネニュース
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私がやらずに誰がやる。大企業を相手に「有言実行」を貫く男が“見据えるもの”

▲株式会社ジュピターテレコムのポータル刷新プロジェクトで、ファシリテーションを務める栗木(2017)

▲株式会社ジュピターテレコムのポータル刷新プロジェクトで、ファシリテーションを務める栗木(2017)

アカウント・エグゼクティブのリーダーとして業務改革プロジェクトに複数携わりつつ、主力製品のロードマップ策定、新規事業リーダーを兼任する栗木楽(くりきらく)。営業部門、製品開発部部長、マーケティング部立ち上げなど、現場最前線で失敗・成功を多数経験した彼が自身のキャリアの中で獲得した“視点”とは【talentbookで読む】

やはり私は「当事者」がいい。──大企業営業の「開拓者」になるまで

私が所属しているのは、アカウントエグゼクティブ2グループというグループです。1グループの構成メンバーがある程度中堅から若手であるのに対して、2グループは私ともうひとりのベテラン社員のみ。

このグループの社内での立場は、言うなれば「開拓者」でしょうか。他の営業メンバーと異なり、大型案件や、製品を育てるチャンスにつながるような案件を担当し、会社にとってのモデルケースをつくる立場にいます。

プロジェクトを進める部門と製品開発部門とも協働し、お客さんにとっての成功と、私たちドリーム・アーツにとって重要な製品・新機能の成功を、同時に追いかけているのです。

私の業務内容は、大きく4つに分かれます。第一に営業として、数万人規模の大型案件で提案を進め、受注すること。第二にプロジェクトマネージャとして、お客さんとともにワクワクするような構想設計をすること。第三に製品企画として、ユーザの本音のアイデアを機能に翻訳すること。最後にカスタマーサクセスの観点で、システムを導入してすぐに効果を実感できるプロセスをお客さんと一緒につくること。

業務は多岐に渡ります。そしてとてもクリエイティブ。ですが、そういった難しさにやりがいを感じています。今思えば、私は幼少のころからそういった“つくり出す喜び”に囲まれた環境にいたように思えるのです。父は設計士、母はパース(図面を立体に起こす仕事)をしていました。叔父は日本画の画家です。自分たちの右脳と左脳を使って、ゼロから何かを生み出す人達に囲まれていたんですね。

また10人の大家族で育ったので、多くの人とワイワイしている時間を楽しいと感じます。今進めている案件でも、毎回25人〜30人くらいでディスカッションしていますが、そういう環境が自然と心地よく思えて。そういった意味では今の環境にたどり着いたのはある種必然めいているのかな、と。

その前の環境──前職は中小企業向けのコンサル会社で、新規ビジネスの立ち上げ支援を行っていました。提案だけでなく、お客さんがその後マネジメントできる状態まで2年〜3年、会社の中に入り込んだり、店舗スタッフとして働いてみたり、お客さんの中に入り込んで……。

ただ、コンサルタントという立場上「入り込む」というのにも限界があって。「自分ごとになれない」「良いときも悪いときも本気で喜んだり悲しんだりできない」という点に物足りなさを感じていました。

「自分たちがモノをつくり、サービスを提供している」「良いも悪いも、結果に責任を負う」という立場はシビアだけど、やっぱり私は「当事者」のほうがいい。そんな想いで、転職に至ったんです。

「売る」のではなく「共感する」──試行錯誤で学んだ、大企業営業に必要な“視点”

▲第130回電算機業務研究会技術研究会(2018)にて、小田急電鉄さまの事例を紹介する栗木(左)

▲第130回電算機業務研究会技術研究会(2018)にて、小田急電鉄さまの事例を紹介する栗木(左)

ドリーム・アーツに転職し、営業として大企業に応対するようになって戸惑ったことがあります。まず、大企業は「新参者」に対して「鉄壁の守り」を敷いているということ。前職のお客さんは中小企業で、良くも悪くも判断・決定は素早く直感的だったので、こちらもノリの良さで押していました。

しかし、その方法は大企業相手には通用しない。既存取引先と新参者っていうのは大きく扱いが違うので、この壁を越えるのがこんなにも大変なのかっていうのは営業の初期の時代には痛感していました。そして、重厚長大な意思決定のプロセスにも戸惑いを感じましたね。

社長が最終決定の判子を押す前にすべての根回しが済んでいて、そこまでに1年かかるなどというのは、私にとって未知の世界でした。初めは失敗ばかりでした。取れた案件と取れなかった案件の差すらわからないで営業していた時期もあったんです。でも、試行錯誤を繰り返すうちに「大企業にはどう接した方がいいのか」が、だんだんと見えてきました。

まずは「お客さんを先に好きになって、感情移入する」こと。いかにも「営業の売り込みモード」というのは、すぐに看破され警戒されます。日本の大企業というのはなんかしら誇りを持って長年ビジネスをやっているところが多い。お客さんが取り組む世界観を、まずは自分が好きになる。すると、単なる売り込みではないアプローチ方法が浮かんできます。

次に「熱血担当者を見つけ関係を深める」こと。企業対企業といっても、単にモノの価格だけで交渉が進むわけではない。「あなたと仕事をしたい」というような人間的な感情や相性も重要です。だからこそお客さんの中に情熱的で、深く付き合える相手──「熱血担当者」を見つけることに重点を置いています。

そしてこれは前提的なことですが、「専門分野のエキスパートになる」こと。一般に大企業の方々は、頭もよく経験も豊富で、出入りの業者からの情報にも事欠かない環境にいます。

そのため特定分野のエキスパートになり、お客さんにとって価値ある存在であるということを、私は非常に意識しています。私が深めてきたのは「働き方改革」「Notes移行」「コミュニケーション改革」「営業改革」といった分野です。これらのテーマを語らせたら、どんなメーカーやSIerの営業やエンジニアにも負ける気がしません。

これらを意識し始めてから、明らかにうまくいき出しましたね。そしてそういうスキルは積極的に共有したい。そういう想いから「営業虎の巻」っていう、どういう要素が必要かという資料をつくるなどしています。

「モノ作り」と「コト起し」を同時に!──「異業種格闘技戦時代」を生きる大企業の、変革のカギ

▲株式会社ジュピターテレコムのポータル「J:METIS」の刷新では、モノづくりとコト起しを重視し、エンドユーザを巻き込んでプロジェクトを推進

私が入社してから14年。大企業の変化を間近に見てきた体感として、2010年を境に大企業を取り巻く環境の変化が激しくなってきた印象を受けます。海外のディスラプターが日本の市場に浸透し、消費者が変化した影響を企業が被ったのがこのころ。

団塊世代の大量退職、2012年問題あたりから、慢性的な人手不足が顕在化してきました。企業の生産性の低さや安倍政権の働き方改革の宣言があり、ブラック企業のあぶり出し、残業へのメスが入って、企業は本気で変わらないといけないモードになったのです。

そんな状態で、大企業はどこに向かうべきなのか。従来型のビジネスモデルがまだ生き永らえている間に、「環境変化への柔軟な対応の作法」を身に付けている状態にシフトせねばならないと、私は考えます。

必要なのは「優先順位の高いモノに早く取り組み、早く実現する」という姿勢です。市場の変化は激しい。予想もしなかった競合が迫ってくることもあれば、急に既存顧客が去っていくことも。以前は5年〜10年だった変化のサイクルが、今やその半分、3分の1になっています。

今必要だと思っていることのうち、3年後には不要になってしまうことの方が多いのだとしたら、必要な100個を全部3年かけて一気に実現するというよりは、優先度の高い5個をまずは3カ月で達成するようなスピード感が、生き延びるための第一歩だと思うのです。

数万人の顔も知らない社員同士が同じ時間や空間を共有し、意識を合わせて組織を変えていくのは、物理的に不可能です。アナログな手段で変われる範囲には、間違いなく限界があるのですから。

大企業はその人数の多さからお互いの考えや文脈を揃えることが難しい。だからこそITの必要性は認識されている一方で、「より多機能で、安い物が良い」という価値基準は、アップデートされていない。最近はツールの選択肢や機能の幅が増えてきました。社員の生産性を高めよう、付随業務の縮小をしよう、組織のノリを良くしよう、創造性を高めようとしたときに、必要な手段は一見揃っているように見えます。

そうにも関わらず、「高機能なSaaSを導入して山ほどオプションを付けたのに使われているのはメールとスケジュール機能だけ」みたいなケースが頻発するのは、「システムの構築とは道具の調達だ」という根強い意識にあると思います。

このような失敗をいくつも聞き知っているからこそ、私は「モノづくり」だけでなく「コト起し」という概念を重要視しているのです。「コト起し」とは、お客さんのゴール設定や、そこに到るまでのプロセスを一緒に考え、その手段としてモノの提供だけでなく、体制や進め方も組み上げていくこと。

強力なチームビルディング、ファシリテーションによって想いを形にし、「モノづくりとコト起しの同時推進」を戦略的に仕掛けていくことが大事なんですね。

大組織の変革は「道具の調達」だけでは成り立ちません。ツールが活用され、効果を発揮するところまで一緒になって取り組む「ビジネスパートナーを選ぶ」という視点が肝要だと考えています。

私がやらずに誰がやる。「有言実行」を貫く男の覚悟

▲働き方改革セミナーに登壇する栗木(2018)

▲働き方改革セミナーに登壇する栗木(2018)

かつては私も営業として、「売る」行為に視点が寄っていた時期もありました。ときには提案したものが結局形にならず、お客さんを失望させてしまったという失敗も。そういう悔しい経験をいくつか経た今、「有言実行」というのが私にとって非常に大事な行動指針になっています。

この場合の「有言実行」とは、「壮大なことを提案したならば、提案した人がその実現に責任を負うべきだ」ということ。「責任を負う」とは、手取り足取りなんでもサポートするという意味ではありません。手厚くシステムのお世話をするほどありがたがられる時代もあったけれど、「サポート」の度合いは、担当の能力やお客さんとの相性などにより、都度変わってくる。

また、「せっかく採用したのだから、大いに活用しよう」とか、「こんな良い機能があるんだから、あの場面でも生かせるんじゃないか」といった有機的な活用の広がりは、外部の私たちの働きかけでは限界があります。お客さんの中にある火種に、ノロシが上がって火がついて、リレーのように広がっていくような状態が理想です。

2019年現在の私の使命は、今までコミュニケーション改革、業務改革で培ったノウハウを、大企業のお客さんが3カ月で成功を実感できる提案内容・プロジェクト推進・活用支援に昇華させること。「浅く広くライトに売る」のではなく、とことん追求するべきだと私は思っています。

会社として、「お客さんの成功」を泥臭く、本気で追求していくのを第一優先に。そういう姿勢でありたいと思っています。ドリーム・アーツの繁栄は、あくまでその先にある。

「有言実行」を貫くのは、言葉ほど簡単ではない。製品企画からプロジェクト推進まで、すべての工程に関わり関係者を巻き込んでいく必要があります。

しかし、お客さんと私たちの成功の循環が回っている状態を、他ならぬ私自身がつくり出す覚悟を持って、日々活動しています。

株式会社ドリーム・アーツ

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