「感受性のスイッチを全開にする!」ポーラに心を動かされた芸術少年の挑戦
多様で複雑な価値を秘めているがゆえに、人の心を動かす力を持っている──そんな企業の在り方に引かれ、入社を決めたひとりの若者がいます。今までの自分の価値観を築いてきた文化や芸術に関わる仕事を選択した彼が語る、働き方の哲学とはどのようなものであるかご紹介します。【talentbookで読む】
「好きなことを仕事にしたい」気持ちに正直な選択
菅原は2018年4月に新卒で入社し、2019年現在、市場接点開発部において海外でのイベント企画・プロモーションを担当しています。潜在顧客の開拓や、イベントを通じて社会へ新たな価値を提供することを狙いに据え、さまざまな取り組みで世界中の人や社会とのつながりをつくり、あらゆる形で美を届けること、また未来のお客様との接点をつくっていくのが使命です。
菅原 「今進行しているのは、中国で開催を予定しているイベントです。ポーラを知らない方や少し知っているという方をターゲットに、認知度を上げブランドに興味を持っていただくことを目標にしています。これまで、本部としても海外での大規模なブランディングイベントを実施したことがありません。ゼロから構築していけるのが醍醐味であり、魅力ですね」
入社当時から独自の感性を生かし活躍する菅原は、充実した日々の中でさらに仕事への想いが高まります。
菅原 「ゆくゆくは、ブランドマネジメントや新しいブランドをつくるといった仕事に携わりたいです。今、テクノロジーや AIの進化によって、あらゆる物事はデータ化して分析できるようになってきました。すごく合理的だし、論理的ですよね。
でも、人の心って不思議なもので、なぜかイメージに投資してしまう。『なんか好きだから』という曖昧で非合理な理由で、好きなブランドのものを買ってしまったりする」
ビジネスとしてブランド構築やマネジメントを行おうとすると、心という不確実なものを相手にしなければなりません。特にイメージに投資するという行為に残っている、人間らしいとも言える不確かさは、割り切れない、解き明かせないデジタルなデータをも裏切りかねない厄介な代物です。
菅原 「古くさいかもしれないけれど人間らしくて、よくわからないけれど引かれてしまう。ポーラもそんなふうにお客様の心に響くブランドでありたいですよね」
そう未来を見据える菅原の原点は、学生時代にありました。
「自分の価値観に正直でありたい」自ら歩む道だから
菅原はこれまでの人生において、「好きなことを学び、好きなことを仕事にしたい」という気持ちに正直に、進学する大学や就職する企業などの選択をしてきました。
菅原 「中学時代から音楽が好きだったので、文化や芸術の花形であるフランスに興味があったんです。中でも、私はフランスの批評家ロラン・バルトの思想や作品を研究していました」
文学を軸に、歴史や美術、ファッションなど、幅広い分野に考察と作品を残したロラン・バルト。菅原は、彼の貫いた独特な感性に深く共感しました。
菅原 「おこがましい言い方ですが、近しさや親しさを感じたんです。たとえば、断定的な表現に対する畏怖や慎重な姿勢、想いを言葉にして発することの葛藤や抵抗感なども、今の時代にはなかなか出会えない感覚で興味深かったので」
もうひとつ、菅原は学生時代からずっと音楽に打ち込み、合唱の指揮者を務めてきました。100名を超えるメンバーの歌声を統べることは、難しさと楽しさを併せ持っています。
菅原 「大人数の声を美しくそろえて音色にするには、ほんの少しテンポを変えるのさえも至難の業です。一挙手一投足に細心の配慮を払い、理想のハーモニーに仕上げるためには、決して妥協しない。そんなことをひとりで抱えながらタクトを振るので、いつもある種の孤独感がつきまとっていました」
ステージで声を発することがない唯一の立場でありながら、目指すゴールイメージを描き、声の響きとして音楽を表現するのが指揮者の使命。その道筋をひとりで考え、決めて、全体を率いていく──。
正しいと信じながらも、それをひとつの答えとして明確にしなければならない指揮者の戸惑いや孤独が、まさしくロラン・バルトの感性に共鳴したのでしょう。
難しくも興味深い心の機微。かたちのないものに挑むおもしろさがある
大学卒業を控え、菅原は自らの進路を決断する岐路に立ち、大学院に進学するか、就職するかという選択に迫られます。ですが、ここでも菅原は自分の好きなことや自身の価値観に正直であり続けました。
菅原 「卒業論文はフランス語で書きました。達成感は大きかったですね。でも、執筆中から複雑な気持ちがどんどん大きくなって、胸を占めていったんです。それは、ロラン・バルトが最も畏怖していたと思われる “言葉にすることの痛み”でした」
大学院への進学は、基本的に研究者の道を選ぶことを意味しています。職としての研究である以上、何かしらの「発見」や「成果」を導き出し、言葉にしていかなければなりません。
それはまさしくロラン・バルトが抵抗し続けたことではないか──大いなるジレンマに菅原は直面したのです。
菅原 「『ロラン・バルトはこんな作品を書きました。そのとき、彼はこのように考えていたのです』と、過去の事実に個人的な意味づけをする。そのある種固定化した考えを言葉にするのが、少しつらいと感じていました。
私の価値観において、それは愛のあることじゃないように思えた。だから、私にとって研究者は進むべき道ではないと思ったんです」
一方、ビジネスならばどうなのか。その問いかけに、菅原は指揮との共通項を見いだしました。
菅原 「ビジネスには最終目標となるゴールが不可欠です。当然ながら、自らの考えや行動をきちんと示し、断言せざるを得ません。そんな制約、そんな局面に身を置く方が、迷うことなく進んでいけるだろうと考えました」
就職するとしても、文化や芸術に関連する領域で仕事をしたい。そんな想いを軸に据えて、菅原は就職活動を始めます。
菅原 「でも、そういう仕事ってなかなかありません(笑)。難しいながらも企業探しを続けていく中で、出会ったのがポーラでした。企業理念の『 Science. Art. Love.』の “Love.”に惹かれたんです。
特にメーカーで “科学”や “文化”をうたう企業は多いですが、 “愛”ってあまりないんですよね。しかも、単数形の愛。マスイメージとしてお客様を捉えるのではなく、創業当時の想いとして 1対 1で向き合っていたのがポーラの特徴だったんです。その姿勢が、他の化粧品メーカーとは違う独特な印象を受けました」
それが、菅原とポーラとの出会いでした。
企業理念と並んで、もうひとつ菅原が心を引かれたもの。
それが、2017年に刷新されたポーラ・オルビスグループの理念、「感受性のスイッチを全開にする」でした。
菅原 「この理念には主語がありません。誰が誰のスイッチを全開にするのか……。それは “すべての人”だと考えました。たとえば、ポーラによってお客様が感受性のスイッチを全開にし、さまざまな角度から自分の審美眼を育む。そしてもちろん、社員も。これってとてもユニークだと思いませんか?」
新しい何かを生み出そうとすると、つい他者を感動させる方法を考えがちです。でも第一に感動させるべきは、自分自身。自分が良いと思えないものが、他の人に響くわけがありません。
菅原 「このグループ理念をすごくアーティスティックだと感じました。私は、自分の感動を他者の感動につなげてこそ『感受性のスイッチを全開にする』のだと思っています」
洗練と主張を備えつつ、誠実であれ。ポーラの価値を伝えていくために
多様な目線で見つめ、意見を取り入れることで、物事は洗練されていきます。
しかしそれは同時に、丸みを帯びて尖りを失っていくことも意味するのです。
クリエイティブな表現を追求するとき、これらはどちらも正解であり、障壁になり得ます。
菅原 「最初はすごく尖っていたのに、できあがったのはつまらない……なんて残念です。自分の意見を通すこと、相手の意見を受け入れること、そのバランスを取るのは非常に難しい作業です。
でも、ポーラには一人ひとりの意見や個性を尊重する風土があります。感性や価値観をきちんと言語化し、訴求していく姿勢は認められるのです。その信頼感や安心感は、ポーラの強みだと思います」
そして、ポーラというブランドの魅力を最適なかたちで世に伝え、人々の感受性のスイッチを入れていくのが菅原の使命です。
菅原 「たとえば、ファッションやバッグのラグジュアリーブランドといえば、ヨーロッパが本場ですよね。それは、彼らが歴史の礎に立っているから。時間をともなう歴史には、逆立ちしてもお金を積んでも、決して手に入れられない価値があります。
そして、ポーラにも同じものがあります。 90年に及ぶ歴史で育んできたお客様やステークホルダーとのつながりや、社会からの信頼、企業姿勢など、すべてがポーラの武器になるはずです」
先人が築いた価値をブランドの力に変えて、より多くの方々へ魅力を発信する仕事に携わっていく。それが菅原の進んでいく道なのです。
菅原はその道を、ポーラの行動規範にある通り「全方位的な誠実」というスタンスで歩いていこうとしています。
菅原 「難しくはありますが、全方位に誠実になれれば迷わず進んでいけます。前進あるのみですよ、ビジネスなんですから。それこそ、就職を決めたときに感じた通り、最終的なゴールを明確に描いて、時には相手を論破するほどの強さを持って臨む姿勢が大切なのだと思います」
表現に対する葛藤、集団を率いる立場としての孤独。自分の心との対立の難しさを理解しつつも、決して逃げない誠実な姿勢。
菅原自身、強さも弱さも、迷いも意志も内包した尖りだらけの原石です。その想いを真っ向から表現し、世に発信していくことで、ポーラもまた変化を遂げていくでしょう。
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