キャリアコンサルタントとして、年間200人以上の学生の就職活動相談にのる中で、必ず出てくるのが学生時代の活動内容の話です。話を聞いていると、最近は昔に比べて「長期インターン」をする学生が非常に多くなってきました。
しかし、詳しく聞くと「それって本当に、インターンなのか?」と思うことが多々あります。以前、中~長期インターンの”無給インターン”がブラックだと話題になりましたが、ある意味それ以上にブラックだと感じる”無意味なインターン”も非常に多くなってきたと感じています。(文:キャリアコンサルタント 坂元俊介)
当事者のインターン生は”無意味”だと気づきにくい?
“無意味なインターン”とは、一言でいってしまえば”成長することができないインターン”です。ただ、こうしたインターンは長時間労働やパワハラといったわかりやすい特徴があるブラックバイトとは違い、学生がその環境をダメだと気づきにくい傾向があります。
多くの学生は「社会人と同じ仕事をして自分の実力を知りたい」「社会人から指導をしてもらって成長したい」「アルバイトでは出来ない難しい仕事をして経験を積みたい」といった目的意識を持ってインターンをしています。
しかし、成長できているかどうか、というのはブラックアルバイトのように「時給が安い」「労働時間が長い」など定量で測れません。定性的な場合が多いため学生自身が気づきにくくなっています
しかも学生の中には、「成長に繋がるのであれば無給でも構わない」という人もいて、企業につけ込まれやすい構造があります。
長期インターンを始めようとする人に伝えたいこと
成長できない”無意味なインターン”の典型例は以下の2つが挙げられます。
1つは、社員がやりたくない仕事を「営業インターン」と称してやらせるパターンです。学生には、アポイントを取るための電話「だけ」をさせて、その商談に行かせることも、同行に連れていくことすらもさせません。ただひたすらにアポ取りだけをさせているだけにも関わらず「これで営業の力がつく」と謳っているインターンです。
これはいわゆる「コールセンターでの荷電業務」と呼ばれるもので、10年以上前は非常に高給なアルバイトでした。しかし、人が集まりにくいこともあり、”営業インターン”という呼称に変更し、以前のアルバイトより低い報酬で業務をさせています。
2つ目が「マーケティングインターン」という名でウェブ用の記事を書かせるパターンです。業務内容はあるお題や商品に関して自分で調べものをして、フォーマットに従ってただひたすら記事を書く「だけ」というものです。もちろん、コンテンツマーケティングの知識や、SEO対策・記事内容に対して指導やフィードバックがあればマーケティングインターンになります。
しかしこのケースは、誰かの指導もフィードバックもなく、ただひたすら、記事を書くだけ。自分が書いた記事がどのような効果を生んでいるのかも知らされない、ということが多かったです。払われる時給も、フリーランスに執筆を依頼するよりもかなり安い金額でした。
つまり、「成長」という餌で安い報酬で人を集め、自分たちがやりたくない仕事や外部に頼むと高くなる業務を学生に「インターン」と称して押し付ける。これこそ、まさに”無意味なインターン”なのです。
こうした無意味なインターンを回避するために、これから長期インターンを始めようとする人は、
・具体的にどんな業務をするのか
・どういう人たちと関わり、どんな指導を受けられるのか
・成長した先には、社会人と変わらない仕事を任せられるようになるのか
をしっかりと確認してください。そのインターン先では、頑張った先に自らが望む「成長」が本当に得られるのか、を考えてみてください。
そしてインターン開始後も、違うインターン先の友人と情報交換することをおすすめします。自分の活動内容に違和感を覚えたら、せっかくの時間と熱量の投資が無駄になってしまう前にインターン先を変えるのがいいでしょう。
坂元 俊介
株式会社STORY 取締役/キャリアコンサルタント・ヘッドハンター
同志社大学経済学部卒。新卒でリクルートHRMK(現リクルートジョブズ)入社。中途・新卒領域における求人広告媒体の営業に従事、その後、営業として3つの新メディアの立ち上げを行う。リーダーや大手担当を経験。Webベンチャーでのオフィス長経験を経て、30歳になるタイミングで家業の和菓子屋を継ぐとともに、企業の採用コンサルティング会社を立ち上げ、採用人事支援なども行う。リクルートの同期が立ち上げた株式会社STORYの法人化に伴い、取締役に就任。大学生・第二新卒層のキャリア支援をおこなうSTORY CAREER事業部の責任者を兼任。毎年数百名の大学生・社会人のキャリア支援を行っている。