働き方改革後も月240時間以上の労働、約300万人 「部下の残業を抑えるために自分が過重労働した」管理職も
大企業の残業時間は2019年4月から、原則として月45時間、年間360時間となった。労使の合意があっても、年720時間、複数月の平均は80時間を超えることはできないとされている。違反した場合は6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられることになっている。
労働基準法の定めによる法定労働時間は1日8時間、週40時間だ。上限ぎりぎりである80時間の残業を加えても、月に働けるのは最大約240時間の計算になる。
しかし、総務省統計局の労働力調査の月次調査を見ると、役員を除く雇用者のうち、2019年4月から11月までに月平均240時間以上働いている人は約295万人いることが分かった。働き方改革後も過酷な働き方をしている人が多数いることがわかった。
「働き方改革によって余暇が増えた」わずか17%
上限規制の効果も多少はある。2018年度、月241時間以上の労働をする人は平均約319万人と、約20万人減っている。10月の1回だけ400万人を超えたが、昨年は11月の時点で、400万人を超えた月は1回もなかった。
しかし、労働者の感覚としては、働き方改革の効果は薄いというのが本音のところのようだ。ワークポートが昨年10月に発表した調査によると、昨年4月からの働き方改革によって「余暇が増えた」と感じている人はわずか17%しかいなかった。
自身の働き方についても「変わらない」と回答した人が73.1%と最も多く、「悪化した」と回答した人も16.7%いた。「改善された」と答えた人は10.2%だった。
自動で社内の電気が消えても、つけ直して仕事を再開するのが日課になっている
調査では「時間的余裕が減りストレス過多」(30代男性、システムエンジニア)、という声のほか、
「仕事量が減らないのに残業時間削減を迫られるため、定時までに仕事を終わらせろというプレッシャーが強まりかえって苦しくなった」(20代男性、システムエンジニア)
「自動で社内の電気が消えても、つけ直して仕事を再開するのが日課になっている」(30代女性、公務員)
「労働時間の短縮ばかりを考え、業務が雑になっている」(30代男性、その他)
「部下の残業を抑えるために自分が過重労働になった」(30代女性、接客販売)
などの声が寄せられていた。
残業時間の上限規制は、今年4月から中小企業にも課される。大企業の現状を鑑みるに、規制がさらに形骸化しないか心配なところである。