これからの「知」をアップデート。ゆめみが考える「インターネット以降」の教養力

インターネットは今や、生活に欠かせないインフラへと成長しています。たとえば直接に会わずとも仕事のやり取りが完結してしまうほど、私たちの働き方も大きく変えました。さらに、検索すればすぐに答えが探せるため、情報収集の仕方も格段に変化しています。

ゆめみでは「インターネット以降」に着目し、変動性や不確実性、複雑性や曖昧性を持ついわゆる「VUCA時代」の現代において、これからの時代に必要となる「教養」をアップデートさせたいと考え「リベラルアーツラボ」を設立しました。

立案者であるコンセプターの吉田 理穂は、2018年からこの構想を抱いていました。

吉田 「『勉強し放題制度』という社内制度を使って、プロジェクトの視察でヨーロッパへ行ったんです。まずは、スイスにある小さな都市バーゼルで開催される世界最大級の現代アートフェアのアートバーゼル、そしてイタリアのヴェネチィアで2年に1度開催されているヴェネチィア・ビエンナーレを視察しました。

そこで実感したのは、アートワールドの勢いと、アートひとつとっても、作品に含まれるコンテキストは、国や地域、もしくは人種や宗教ごとで捉え方は違うということ。

たとえば、2019年度のヴェネチィア・ビエンナーレのテーマは、『May you live in interesting times(興味深い時代を生きられますように)』だったのですが、この言い回しは、伝統的な中国の呪いの翻訳であるとされている英語の表現で、皮肉を表現するときに使われています。『興味深い時代』とは裏返しに『不安な時代』を表しています。

さらに、テーマで用いられている、伝統的な中国の呪いとされていた言葉は、実は中国には存在しないという。つまり『フェイクニュース』を示唆しています。フランス館では、『フェイクニュース』と『ブレグジット』に関わるアート作品の展示がありましたが、時代背景や国や地域など交差したコンテキストを理解することで、今の社会や時代を見つめられるようになるのではないかと実感し、ゆめみの他のメンバーにとっても大切なんじゃないか、と思うようになりました」

個人的な活動として以前から、視覚障がい者の方へ向けたボランティア活動をしていた吉田。社会課題に向き合うことに関心を抱いており、いろんな課題に関して、職能の垣根を超えて気兼ねなく意見を交換できる場が必要なんじゃないかと考えていました。

変化の激しい時代の中、私たちは早急になんらかの答えを出さないと取り残されてしまうと思いがちです。

しかし、あえて「簡単に答えが出ない世の中」だと受け入れ、今こそ「知的体力をつける」時期と捉えたらどうだろう。そのきっかけとして、リベラルアーツラボという場をつくりたいと考えたのです。

エキスパートたちと「壮大な雑談」ができる場に

▲吉田(写真左)と太田(写真右)

▲吉田(写真左)と太田(写真右)

2019年4月、吉田の構想が会社の委員会設立制度を利用してついに形となり、リベラルアーツラボが発足しました。この場を通じて、さまざまなカルチャーを社内に根付かせてナレッジを蓄積して教養力を底上げし、どんな時代でも適応できる力を身に付けるきっかけにしたいと考えました。

掲げたコンセプトは、「エキスパートたちとの、壮大な雑談」。

リベラルアーツラボの立ち上げは「社内の教養力を底上げする」ためだけではなく、議論や対話を通じて、社外とのコラボレーションを行うことも目的のひとつです。

たとえば大学研究室やNPO団体、アーティストなど、事業においてあまり接点のなかった人たちとの交流も、勉強会をイベント化させることで参画ハードルが下がると感じています。勉強会では、さまざまな専門領域のエキスパートをお招きし、社内・社外の参加者と雑談をする中で、それぞれがインスピレーションやアイデアを生み出す場を目指していきます。

当初は吉田を含めた3人での始動でしたが、間もなくデザイナーの太田 朝子もメンバーに加わりました。

太田 「前職はメーカーでインハウスデザイナーをしていました。同時にフリーランスとして海外の友人と仕事をしたり、海外旅行をしたりする中で、日本におけるデザイナーの立ち位置を変えていきたいと思うようになったんです。

それで次のフィールドとして、社内のカルチャーに共感したゆめみを選びました。もともと人と人をつなぐことに興味があったので、社内外の知識交流の場をつくりたいと思ってリベラルアーツラボに参加しました」

その後、コンセプトに共感してくれたメンバーが少しずつ集まり、20名規模にまで拡大。2019年11月のイベント開催に向けて準備を進める中で、吉田たちはある企画を考えます。

ブレークスルーのヒントは、「異質」なものを受け入れる力

▲12月18日開催【AI時代のベーシックインカム論と組織論】(左から電通プロデューサーの日塔氏、駒澤大学の井上准教授、ゆめみ代表取締役の片岡)

▲12月18日開催【AI時代のベーシックインカム論と組織論】(左から電通プロデューサーの日塔氏、駒澤大学の井上准教授、ゆめみ代表取締役の片岡)

まずは吉田と太田がイベントのホストをアサインし、かつ参加者に向けたPR施策などを担当。その他のメンバーも、会場設営や応援係などで協力してくれました。

認知度向上のため、吉田たちはまず「30回連続イベント」の開催を企画します。

「アート」「建築」「宗教」「メディア」「経済」など、ジャンルを問わずさまざまなテーマを設けました。吉田や太田の恩師や知り合いにはじまり、どんどんゲストの輪を広げている最中です。

吉田 「イベントの特徴として、当社の事業内容に反し、あえてITに特化した内容は入れていません。また、イベント中に気軽に質問できるようにしたり、ネットワーキングできる時間を重視したりしています。

ゆめみは日々、さまざまな業界のクライアントに対してコミュニケーションを取って、パートナーシップを組んでいるので、メンバーはITリテラシーだけではなく、スムーズなコミュニケーション力も大切だと感じました。受託開発やメディア運用を手がけているゆめみは、一見するとバリバリのIT企業です。そんな企業だからこそ、まったくフィールドの違う視点を取り入れることがブレークスルーにつながるのではと考えています」

これまでに「オランダ人的生きがいのススメ」「AI時代のベーシックインカム論と組織論」「表現が困難な時代のクリエイティブ-デザイン編」などのテーマで研究者や大学教授、クリエイティブ・ディレクターの皆様に登壇していただきました。少しずつ、社内外からフォロワーが増え始めて、さまざまな反応をいただいています。

太田 「とくに社外の反応が多く、『ゆめみを初めて知りました』と言ってくださる方がけっこういらっしゃいました。興味を持ったキーワードも参加者によって違っていて、興味深かったですね。

一方で社内では、まだそこまで浸透していない印象を受けます。でも、2019年に10回連続で開催しているので、インパクトはあるかなと。これから社内でしっかりアプローチすることが大事だなと感じました」

当社のような受託開発をメインとする企業は、発信する機会があまり多くはありません。そのためイベントドリブンにすることで情報がシェアされ、会社の認知度も高まっている効果を実感するようになりました。

イベントのコラボから派生した事業も展開していきたい

▲実際に開催された勉強会の様子

▲実際に開催された勉強会の様子

まずは、「30回連続イベント」の達成に向け、引き続きテーマを考案中です。リアルな場でのイベント開催だけでなく、動画配信やSNSでの記事展開、ポッドキャストなど親しみやすいメディアにも力を入れていきます。

リベラルアーツラボが、テーマを設定して、そのテーマに集まった参加者と共に対話や議論を重ねることで、人生において新しい「キーワード」と出会い、これまでの世界観を広げるきっかけの場になることを願って活動しています。

吉田 「たとえば、YouTubeなどでは履歴をもとに『おすすめ』の動画が表示されるように、インターネット上では、レコメンドされるコンテンツや思想にたどり着きがち。リベラルアーツラボは、各自が持つ『興味の壁』を飛び越えられるような勉強会にしていきたいと思っています。

普段は検索しないテーマの言葉を届ける機会にしていきたい。そうすることで新たな発見をしたり、自分の可能性を超えられたりすると思っています」

太田 「クリエイターとして、自分の専門領域にとらわれた開発しかできないのは怖いかなと思います。世の中に求められているものは何かを考え、情熱をもってものづくりをするほうがクオリティが上がりますよね。自分が何が好きで、どんなふうに社会に貢献できるのかを考える場にしていきたいと思います」

今後はラボでの取り組みを、他のIT企業にも広げていくことを次のステップとして考えています。さまざまなエキスパートとやクライアントとコラボできるような場をつくり、その先には製品開発やサービス企画に貢献できることを目指します。

吉田 「2020年度は、3つのことを行いたいと思っています。まずは、ゆめみ社内にある他のラボや委員会と協業しながら、社内事業や研究開発につなげていくこと。そして、リベラルアーツラボに興味を持ってくれる組織や個人を見つけてネットワークを広げていくこと。最後に、リベラルアーツラボの取り組みや手法を教育プログラム化していくことです」

インターネット以降の道なき道への旅は、まだ始まったばかり。さまざまな領域の人たちと協力しながら、リベラルアーツラボはブレークスルーの起爆剤となる場づくりを目指していきます。