“18歳未満の子どもはゲームを1日60分に制限する”ことなどを盛り込んで炎上した香川県の条例案。「子どもたちを依存症から守るための対策」としているが、一律で制限することや、科学的根拠を疑問視する声も多い。この問題に対して慶応義塾大学特任准教授などを務める若新雄純氏は、2月13日放送の「モーニングCROSS」(TOKYO MX)で「依存症の本質」から考えるべきだと主張した。
若新氏は以前からこの条例の方向性には疑問があり、どちらかといえば反対の立場だという。SNSやスマホ、ソーシャルゲームが社会の一部となる中、
「教育という視点で、制限するというやり方は本当に正しいのか、というのを考えたい」
と語りだした。(文:okei)
「依存症になる人は、自信のなさから生まれる不安を誤魔化している」
若新氏によると、依存症には大きく分けて「薬物」「行為」「人間関係」の3つがあるという。スマホをずっといじってしまうなどが「行為」で、ホストクラブ通いやDVを受けているが関係を断てないなどが「人間関係」だ。薬物の場合は使う出発点が何であれ「使う」ことによって依存していくが、「行為」や「人間関係」に関しては、単に使っている時間が長いから依存するわけではないとのこと。
長く使っていても依存にならない人がいる一方で、
「依存症になる人は、ふだん友だちとの人間関係が上手くいっていないとか、周囲から認めてもらえず自分に自信がない人だと言われている」
とのことであり、自信のなさから生まれる不安や寂しさを誤魔化すために、ゲームに没頭し過ぎてしまうことが多いという。
スマホやゲームを長時間やっていても、地元にたくさん友だちがいる、皆に頼られて仲間を率いるような人たちは依存症にはなりにくいと指摘する。つまり、「自分には居場所や活躍の機会がある」と思えていれば、依存症にはなりにくいといわれている。
厚生労働省サイトの「依存症対策」欄には、依存症の発症について「孤独の病気」とも言われていることが説明されている。学校や職場での孤独感や自信のなさから、アルコールや薬物、ギャンブルに頼ることで始まる場合もあるとのこと。依存症は、精神的に何かから逃げたい心理で陥ってしまうようだ。
「制限することは、問題の本質ではない」
では、教育の現場は何を考えなければならないか。若新氏は、学校生活での順位付けなどを問題視する。中高生になると成績が張り出されたりして、「自分には価値があるのか」と不安になっていくというのだ。
「問題はスマホやゲームを制限するんじゃなくて、すべての人がいい成績をとれるわけじゃなくても、どこかで自分には出番がある、自信を持ってやれるという場所や機会を、学校側は提供すべき」
その上で、「香川県は制限のほうからやろうとしているが、それが問題の本質ではない」として、「やっぱりどんな人でも自分に自信を持てる場をつくる教育が必要だろうと思います」と持論を語った。
MCの堀潤さんが、「教育現場では一時期、順位をつけないという教育もあったが、これにも批判は上がった」というジレンマを語ると、若新氏は、「順位はただの順位でしかないからそれはそれでやればいい」として、
「社会的な評価がなくても、無条件で”僕には価値がある”という自信のつけ方を真剣に教育の文脈で考えるべきであって、ツールの制限には意味がない」
と断言した。機器の利用時間を問題にするのではなく、依存症になる根本原因と向き合うことが大切、ということだ。
内閣府の調査によると、日本の若者は世界の若者と比べて自己肯定感が低い。まずはそうした部分から考えていくべき、と言えそうだ。
ネット上では若新氏の意見に対して、「自信を持てる教育うけたかったなー」「自信の付け方の教育ね。確かにそうかも」「うちの息子、就活で完全に自信を失って。変な行動をとっていたのでとても理解できた」などの感想が上がっている。