『テラハ』制作陣は木村花さんをヘイトから守るべきだった 恋愛リアリティ番組が孕む致命的な危うさ | キャリコネニュース
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『テラハ』制作陣は木村花さんをヘイトから守るべきだった 恋愛リアリティ番組が孕む致命的な危うさ

画像はキャプチャ

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22歳の若さで5月23日に死去したプロレスラーの木村花さんをめぐり、ネット上の誹謗中傷を見直す機運が高まっている。木村さんは、恋愛リアリティ番組『テラスハウス』に出演。番組内での”コスチューム事件”以降、木村さんに対するSNS上でのバッシングが加熱していたことが報じられている。

与野党は、ネット上の誹謗中傷をなくす対策を協議する方針で一致したことが伝えられている。だが、番組自体が視聴者のヘイトを助長する構成になっており、出演者のケアが不十分であるなどの問題も多い。海外でも、同様のリアリティ番組出演者から自殺者が出ていることも併せて考えるべきだろう。(文:ふじいりょう)

発端の”コスチューム事件”、番組制作陣は何度も配信

木村さんに対するバッシングの発端となったのが、Netflixで3月31日に配信された”コスチューム事件”だ。木村さんが新日本プロレス東京ドーム大会に出場した際に新調したというオーダーメイドの10万円のコスチュームが火種になる。

木村さんがコスチュームを洗濯機に入れたままにしていたところ、男性出演者が乾燥機にかけたことで収縮させてしまう。木村さんは男性に激しく憤りの言葉を投げつけ、男性がかぶっていた帽子をはね飛ばして去っていくという場面が賛否両論を巻き起こした。

ツイッターでは、木村選手に対して「気分悪い」「早く卒業してほしい」といった投稿が目立ち、木村選手のアカウントに「消えろ」というリプライを送るユーザーも現れていた。

同じ回は、フジテレビでも5月19日深夜に放送。さらに、コスチューム事件を振り返る未公開映像を同月14日にはYouTubeに公開している。その度に木村選手へのヘイトがヒートアップ。『テラスハウス』の制作陣が”大事件”として扱い、何回もこのシーンを配信したことが、ネットでの誹謗中傷を増幅させたことは間違いないのではないだろうか。

海外でも、恋愛リアリティ番組では度々出演者が亡くなる事件が起きている。韓国では2014年3月に『チャク』に出演していた女性が収録中に自殺。イギリスでは17年に放送された『Love Island』の第3シリーズに出演していた元サッカー選手が2年後にやはり自殺している。いずれも番組内で”キャラ”を演じることを求められており、本来の性格と世間のイメージとのギャップに悩んでのものだったと考えられている。

恋愛リアリティ番組は、あたかもノンフィクションであると視聴者に思わせるような演出がなされ、もちろん『テラスハウス』も例外ではない。同番組は台本がないことを標榜しているが、今回のコスチューム事件は、木村さんが”人の話を聞かないイヤな女性”であることを誇張して、それまで恋愛関係に発展しそうだった男性出演者との破局が決定的になったことを視聴者に分かりやすく見せたといえるだろう。

プロレスの「ヒール」が視聴者に理解されなかったのか

プロレスでは、しばしば「ベビーフェイス」「ヒール」という役割が与えられるが、木村選手も『テラスハウス』における”キャラ”を理解して収録に臨んでいたのだろう。レスラーとしては、先輩選手に対しても物怖じせずに噛み付く生意気なキャラクターであったこともあり、そこに違和感はなかった。

ただ、同番組の視聴者のうち女子プロレスのファンは少数だっただろう。それだけに、木村選手のキツさが誇張され、それがネットでの誹謗中傷に拍車をかけたといえる。

リアルを”演じる”ということに悩む出演者は、今回の『テラスハウス』に限らずこれまでも多かった。テレビ関係者からは「出演者へのケアが足りなかった」といった声もあるという。コスチューム事件にまつわるコンテンツを何度も投入するのならば、同時に木村選手をヘイトから守る対策が必要だったのではないか。

木村選手が所属するスターダムは、昨秋に新日本プロレスの親会社ブシロードが買収して、変革期を迎えていた。その矢先、新型コロナウイルスの影響で3月以降の試合が中止に。本業のプロレスができなくなっていたことも、木村選手の中で同番組や、視聴者の反応が心に占める割合が大きくなってしまったのかもしれない。

何より、彼女はまだ22歳の若い女性だった。周囲の大人がメンタルケアを放っておいたという批判は免れないだろう。

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