性別や年齢、国籍など「多様性」を尊重する動きが広まっているが、日本社会ではまだ浸透しているとは言えない。2月には東京オリンピック・パラリンピック組織委員会元会長・森喜朗氏による”女性蔑視発言”が問題視されたが、性別に関する固定観念は職場や日常生活の場でもよく見かける。(文:コティマム)
都内の30代女性は販売業の正社員で年収500万円。職場では性差別があると感じている。というのも、女性が店長業務を全て請け負っているにもかかわらず、対外的な店長はずっと男性社員なのだ。
「君が男性ならもっと本腰入れて指導するのに」男性上司の言葉
「取引先のお偉い方々から『責任者は男じゃないの?女性じゃあね』と言われ、店長はずっと男性だった。でも実際の業務を私が行っているのを他の従業員や上司は知っているため、休日問わず業務連絡が入ってくる。それでも給与は役職手当がつくので店長の方が月8万円も高い」
職場の「責任者は男性が当たり前」という固定観念から、店長になれない女性。「女じゃなければ年収100万円以上高いのかと思うと、怒りしかない」と納得できないでいる。
香川県の30代女性(建築・土木技術職/正社員/年収300万円)も、職場での役職に関する性差にもどかしさを感じている。
「今の会社に勤務して14年。中途採用で一般職採用。しかし業務内容はとても専門的なもの。私はその専門的な業務をやりたくて、採用試験を受け採用されました」
女性は専門的な仕事をしているが「総合職」ではなく「一般職」採用。入社当時は「どんな場合も女性は一般職」という”暗黙のルール”があったという。
「1年後、同じ業務内容ながら総合職採用で男性社員が入社。彼は今係長まで昇進しました。もうすぐ部長です。年収も昇給スピードも全く違いますが、業務内容は同じ」
女性は14年の間に総合職への職種転換を求めたが、人事からは取り合ってもらえなかった。
「14年間で使えない男性が何人も私より昇進し、異動していきました。男尊女卑が抜けない男性上司から『君が男性ならもっと本腰を入れて指導するんだが……』『分からないことがあれば、笑って誤魔化しておけばいい』『君はそこまで覚える必要も知る必要もない』等々、笑いながら言われたことは一度や二度ではありません」
「男性だから」という理由でどの現場でも力仕事を割り当てられる
キャリコネニュースには「肉体的な固定観念」に悩む男性からの声も寄せられている。千葉県の30代男性(福祉・介護/パート/年収150万円)は、過去に日雇いの派遣社員で工場勤務をしていた時の体験談を明かしてくれた。
「求人では『簡単な軽作業』とあり、詳しい内容を読んでみても体力を必要とせず簡単そうでしたので応募。いざ就業したら、まず男女別に仕事を割り振られました。女性はシール貼りやハンディーターミナルでの作業。男性はひたすら20kg以上のダンボールを運び続ける力仕事。実際の求人ではシール貼りしか掲載がなく、性別で仕事が違う事も、力仕事がメインだとも書いてありませんでした」
男性はかなり小柄で、虚弱体質なため力仕事が苦手だという。
「派遣社員の仕事に応募する際は、力仕事がなさそうな現場を選んでいるつもりです。しかしどの現場に行っても”男性”というだけで力仕事を回される事が多いように感じます。また酷い現場だと、私に聞こえるように近くで本部に電話し『こっちは金払ってるんだから、もっと体力あるやつ回してくれ』と言っていました」
「男性=力持ち」「女性=か弱い」と多くの人が当たり前に思っているかもしれない。もちろん体力には男女差があるが、力仕事の苦手な男性がいるのも当然のことだ。
男性は「向き不向き関係なく男性というだけで力仕事を割り振られる場面が多々あり、生きづらさを感じます」と複雑な思いを語っている。
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