医療の面白さと社会貢献の理念が体感できる工夫を ポストコロナ時代に描くテルモの採用戦略 | キャリコネニュース - Page 2
おかげさまで10周年 メルマガ読者数
65万人以上!

医療の面白さと社会貢献の理念が体感できる工夫を ポストコロナ時代に描くテルモの採用戦略

2020年の新型コロナの猛威は我々の生活を一変させ、それは働き方にも大きな影響を及ぼした。

これまでの採用はスキルや経歴などが重視されてきたが、今後はそれに加えてテレワーク、セキュリティ、メンタルヘルスといったものへの対応力が求められるようになってくるだろう。さらに、近年の働き方改革やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、SDGsやESG、ウェルビーイングの潮流もあることから、採用の高度化が予想される。

こうした背景から「ポストコロナの新採用戦略」 という連載のテーマを掲げ、新たな事業を進めるために実際にどのような人材を雇用し、起用しているのかという観点から、企業の次世代の姿を追っていく。

第1回は日本の大手医療機器メーカーの「テルモ」を取り上げる。
2021年に創立100周年を迎え、国内のみならず世界160以上の国と地域で事業を展開。

海外事業の売上比率は約7割に上り、グローバル企業として確固たる地位を築いている。
そんなテルモが、コロナ・パンデミックの渦中で感じた採用の課題や取り組んできた採用戦略、採用に対する意識の変化について、テルモ株式会社 人財開発室長 朝日章吾さんと人財開発室 採用(新卒)チームの松本幸大さんに話を伺った。

テルモ株式会社 人財開発室 室長の朝日章吾さん(右)と採用チーム 主任の松本幸大さん(左)

テルモ株式会社 人財開発室 室長の朝日章吾さん(右)と採用チーム 主任の松本幸大さん(左)

有機的な組織づくりを図るためにオンライン化を促進

──まず、コロナ前後で変化した働き方について教えてください。

松本幸大(以下、松本):2020年からのコロナ禍で、当社においてもリモートワークが増えました。コロナ以前から時差勤務や在宅勤務の制度を整えていた背景もあり、コロナ禍で一気にリモート環境のワークスタイルが浸透していきました。

そのため、オンライン化への障壁はそこまで感じずに今の働き方に移行できたと考えています。
オフィス勤務がメインの本社地区では大体3割程度が出社していて、残りは在宅勤務で働いているような状況です。

──リモートワーク導入後に何か課題はありましたか?

やはり、初めの頃は慣れないというか多少の違和感やぎこちなさはありましたね。

出社前提の働き方で、ミーティングも会議室で行うのが普通だったため、Web会議ツールを使ってミーティングをはしごしていくやり方に慣れるまでは少し時間がかかりました。

ただ、リモートワークが働き方のベースになりつつも、人財開発室では週1でチームミーティングを行っていて、メンバー同士と顔を合わせる機会を設けています。

部門によっては月1回リアルで会うなど、人間関係の希薄化につながらないよう、それぞれが工夫しているような感じですね。

朝日 章吾(以下、朝日):私は2021年にメガバンクからテルモへ入社しましたが、テルモは風通しの良い風土が根付いているなと感じています。

「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念をベースに、当社社長の佐藤がグローバル全体でよく口にしているATM(明るく、楽しく、前向きに)という考え方が社内に浸透しており、心理的安全性や意思疎通が図りやすい職場環境だと言えます。

当社が長年手掛けてきた製品の一つで、国内シェア70%を誇るECMO(体外式膜型人工肺)は、コロナ蔓延下需要が高まり、供給側の使命や社会的責任を感じながら、製品供給を行ってきました。

当社では、①全てのアソシエイト(社員)の健康と安全を最優先にした対応 ②医療を止めないために製品の安定供給に最大限努める ③テルモグループの力を結集して、新型コロナウイルスの感染防止と積極的貢献を図る といった3つの基本方針のもと行動して来ました。デジタルシフトやオンライン化を進め、有機的な体制を構築することで、コロナ禍においても異なる拠点間での円滑なコミュニケーションや情報共有ができるように努めてきたのです。

医療の面白さが伝わるようにリアルでの体験を重視していた

開放感のあるエントランス

開放感のあるエントランス

──コロナ前に行っていた採用戦略は具体的にどのようなものだったのでしょうか。

松本さん:当社は医療機器メーカーなので、採用セミナーや説明会では実際にモノを見せて、触れて、体験してもらうことで、「医療の面白さ」が伝わるように意識していました。

どうしても医療と聞くと、敷居高く感じる方や堅い業界だと思っている方もいるので、当社の製品をリアルで体感してもらうことにより、医療業界に興味を抱く学生を増やしたいという思いで、採用活動に取り組んできました。

新卒採用では、大きく開発技術職と企画営業職を採用するのですが、その割合は2:1と開発技術職の方が多いですね。

朝日さん:直近、事業が伸長している関係で、これまで新卒採用は3人体制で担当していましたが、2022年の4月より組織の再構築と増員をかけ、現在は7人体制で運用しています。

優秀な人財を獲得するためにはエージェントとのネットワークやマネジメントが大事で、それにはヒューマンリソースがどうしても必要になってきます。かつスピーディに採用を回していく上では、チーム内で役割分担を明確化し、色々な方に面接へ入ってもらえるような仕組みを整えるのが肝になります。私の役割としては、新卒採用とキャリア採用そして教育研修を担当し、アソシエイト一人一人の人財開発に取り組んでいます。

採用活動のフルオンライン化で意識したインタラクティブ性

──コロナ禍でオンラインが前提になったなか、採用戦略にどのような変化がありましたか?

松本さん:コロナ禍では、セミナーや面接も全てフルオンライン化し、会社説明や医療機器の特長なども動画を活用しながら学生に伝えていきました。そのなかで心がけたのが双方向なコミュニケーションです。

一方通行な説明にならないように、説明会のアジェンダにあらかじめ質問項目を用意し、MicrosoftのFormsなどアンケートがとれる機能を活用し、参加型でインタラクティブな説明会になるよう企画しています。

朝日さん:企画営業コースの採用では、OBOG訪問のオンライン化にも着手しました。アフターコロナの売り手市場という市況や、コロナ感染を回避しながらも「OBOGから話が聞きたい」という学生のニーズに応えるために、ビズリーチ・キャンパスを活用してOBOG訪問を始めたのです。

現在では、学生と話したい有志のテルモ社員約40人が、学生のキャリア相談や進路についての面談対応を行っています。

私も実際にOBOGとして学生と向き合っておりますが、そこで感じているのが「コロナで表面的な情報が溢れかえっている」ということ。

数多ある情報の取捨選択ができない。ネットや人づての噂に引っ張られ、自分自身の指針や将来像が描けずに、トレンディな就職活動をしている。このような学生も少なくないと思っており、社会人として最初の一歩を踏み出す大事な就職活動で道を間違えないように、生き方含めて相談に乗っています。

新卒採用の舵取りも変えていて、先程述べたとおりリソースのボトルネックを解消するためにチーム人数を増やして対応しています。

さらに、企画営業コースの募集要項に新設した「No.1採用」では、学生時代に学業や部活、ボランティア活動など、何か秀でた実績やオンリーワンの取り組みなどを行ってきた学生を採用し、希望通りの配属先を就いてもらうというものになっています。新たな打ち出し方でしたが、幸いにもテルモに興味を持ってくれる学生が増えたと感じています。

言行一致した企業の強みを生かし理念に共感する人材を増やす

同社が扱う輸液ポンプ

同社が扱う輸液ポンプ

──先行きが見通しづらい、ポストコロナにおいての採用戦略で意識していることは何でしょうか。

朝日さん:私自身、長年学生を見てきているなかで、明らかに学生のモチベーションに変化が生じているのを肌で感じます。仕事を通じて社会に貢献したい、誰かの助けになりたいというような視座の高い学生も増えてきており、そういう意味では、当社の「医療を通じて社会に貢献する」はシンプルかつわかりやすい企業理念だと思っています。

テルモの手がけるヘルスケア領域は社会的に意義のあるビジネスであるのはもちろん、時価総額約3兆円を誇り、かつ企業理念と事業の実態が言行一致している稀有な存在だと言えるので、採用競争力や訴求力においては大きな強みを持ち合わせています。

テルモの始まりは1921年にまで遡り、第一次世界大戦の影響で体温計が手に入りづらくなった状況を打破するべく、複数の医師たちが発起人となって体温計を開発したことに端を発しています。

資本の色がなく、無色透明な企業経営が根底にあり、現在ではグローバルで160以上の国と地域に展開し、50,000点もの医療製品を提供するような会社にまで成長しました。

これこそ、テルモの強さだと考えています。

松本:朝日が話した当社の企業理念に共感していただけるか、ということも新卒採用で重視しています。我々が目指す方向性と学生のそれとが合致していて、お互い共通のビジョンが描けるかどうかが大事になってきます。

部門ごとに適材適所で人材採用していく仕組みづくりが鍵に

──コロナ禍でキャリア・中途採用で新たに実践したことや課題感についてはいかがですか?

朝日さん:採用においては情報が大事だと思っているので、エージェント会社の数を増やすことに注力しています。また、エグゼクティブやミドルマネジメントなど職位ごとの採用に長けているエージェントと繋がり、密な連携をとることで、適材適所の採用が実現できるような体制を整えている最中です。

一方、課題については部門ごとに求人数が日々動くなかで、いかに優先順位を決めてスピーディな採用につなげていくかのプロセスが、まだ道半ばであること。これからは新卒とキャリア採用の間に、第二新卒も顕在化してくると予想していて、この3つのマーケットをつなげる戦術を取ることが採用戦略で重要になってくるでしょう。

エージェント会社の活用、求人数に対する面接対応の最適化のほか、研修やオンボーディングも大事だと捉えています。

──ありがとうございます。最後に今後の展望について教えてください。

朝日さん:採用における3つの要諦として「トップ」、「スモール」、「リアリティ」が挙げられます。

トップはできるだけ職位の高い人や人事部が求職者と話をすること、スモールは少人数で、1on1で面接を行うこと、そしてリアリティは仕事の現実感を見せることです。

これらを踏襲しつつ、入社後もギャップが生じないような採用活動ができればと考えています。

また、採用エージェント会社にも我々の“テルモ愛”を感じてもらうため、神奈川にある「テルモメディカルプラネックス」にてエージェントの方々向けの見学会も実施したいと考えています。

テルモの歴史や技術を実際に見てもらうことで、当社の求める人材に対するイメージアップを図ってもらい、採用に役立てていきたいですね。

【プロフィール】
朝日章吾(あさひ・しょうご)
人財開発室長
1991年富士銀行(現:みずほ銀行)入社。西日本エリアの採用ヘッド、シンガポール拠点企画課長の後、みずほFG人事部次長時には、就職人気ランキングTOP10入り。2014年から横浜・新宿など大企業営業部長。21年テルモ入社。人財開発室長として新卒採用・キャリア採用・教育研修を統轄。

松本幸大(まつもと・ゆきひろ)
人財開発室 採用チーム 主任
2011年テルモ入社。輸液ポンプや抗がん剤の投与デバイスなどの医療機器の営業を約7年間経験し、2018年10月から人財開発室で新卒採用を担当。

関連記事

アーカイブ