グローバル展開拡大に向けた採用強化を図る製薬大手・協和キリン キャリア採用では手厚いオンボーディングフォローを実施
医療用医薬品の研究開発、製造、販売を手がける協和キリン株式会社。海外市場での価値最大化を図るべくグローバル基盤強化をより一層推進している。
事業の成長を支えるグローバル人材の獲得や育成に注力するなかで巻き起こった新型コロナウイルス感染症拡大は、同社にどのような影響を及ぼしたのか。また、これからの協和キリンがますます成長していく上で必要となるのはどのような人材像なのか。人事部 採用育成グループの原川 和之さんに話を聞いた。(聞き手・文 千葉郁美)
海外事業の拡大に向けてグローバル人材の採用を強化
――コロナ禍を前後した採用戦略の変化についてお聞きします。御社の採用はどのように行われていたのでしょうか。
ここ数年キャリア採用に力を入れておりまして、2020年は100人以上、2022年は大体200人を年間の採用目標にしています。
キャリア採用を増やしている背景には、当社のグローバル展開強化があります。
当社は現在、グローバル・スペシャリティファーマとして海外展開の拡大を急いでいます。コロナ禍が発生する直前、2018年後半から2019年にかけて当社は欧米を中心にグローバル製品の発売に至りました。販売数量の拡大に向けて重要となるのは各国での販売許可や承認を得ることです。販売に至るまでは、たとえばEUとしてのお薬の承認は取れるものの、欧州各国の薬事規制が異なり、それぞれの当局との薬価交渉などを経ていかねばなりません。
そうした事業戦略の背景があり、主にグローバルで事業を推進するために、人材の必要性が高まっていることからキャリア採用数を増やしています。
――事業の拡大にはグローバル人材の獲得は非常に重要となってきますね。既存の従業員の皆さんの中にも語学力を高めたい、海外事業にチャレンジしたいと考える方もいるのではと思いますが、従業員の成長を支援するような仕組みはありますか。
社内の研修体系に加え、語学やビジネススキルを自ら学ぶことを支援する制度を設けています。当社では、「社員と会社はお互いの成長にコミットしたイコールパートナーである」と考えています。その中では、社員を個として尊重し、自律した行動を求めています。会社は自己成長やキャリア開発に繋がる機会を提供していき、個々人が自らのキャリアにをオーナーシップをもって築いていくことを支え、促していくことが大切ですキャリア開発の重要性は増しており、自己啓発のプログラムを増やしたりeラーニングを拡充したりするなど、より柔軟でよりニーズを満たす支援の仕組みへとアップデートしていくことを考えています。
丁寧なオンボーディングでキャリア採用かつ在宅勤務の「不安」や「働きにくさ」を解消
――御社はこれまで大量採用を実施してこられましたが、コロナ禍においては対面方式の採用活動が制限されるなどの環境変化があったかと思います。採用計画や活動も見直しをされたのでしょうか。
採用計画については、コロナ禍が大きく影響することはありませんでした。採用数や人材像は変わらず、引き続き大規模採用を実施してきました。
一方で採用活動においては、コロナ禍に入って比較的早期からオンラインでの選考に切り替えましたが、他社も同様にオンライン化したことによってキャリア採用市場全体の選考におけるスピードがずいぶん早くなったなと感じています。当社もそのスピード感についていけるように、オペレーション面を見直して体制を整えてきました。
懸念点としては、候補者の方に会社の魅力を伝えづらくなったことが挙げられます。会社の雰囲気や空気感というのは、直接会社に来ていただくことで知ってもらえることが大きいと考えています。そこをオンライン下でも伝えられるようにするには、一人一人の応募者にできるだけ向き合うことや、エージェント会社を介する場合にも担当者に対して丁寧な説明をすることを心がけています。
また、コロナ禍をきっかけに入社後すぐ在宅勤務することが多くなったことから、キャリア採用では入社後のオンボーディングを見直しました。入社された方にアンケートをとったところ「在宅勤務による入社に不安を感じた」という声が多く寄せられました。そこでコロナ禍以前よりオンボーディングを丁寧に実施するなど内容を充実させたり、人脈形成や悩みを共有できる機会を設けたりするなどしています。
具体的には、同じタイミングでキャリア入社をした方々に同期のようなつながりをもっていただけるように、入社3ヶ月以上経った方に対して「キャリア入社の集い」を開催しています。当社の価値観を体現するためにどのようなことをしたらいいのか、社員それぞれが持つ価値観を元に考えるグループディスカッションを執り行い、会社への理解を深めていただきつつ社員同士の関係性構築を図っています。
また、この集いの中では同じくキャリア入社した先輩社員に質問や相談をする機会も作っています。その際は似た経験を持つ社員同士で、部署内で困っていることやキャリア入社ならではの悩みごと、困りごとなどを共有していただける場にしています。キャリア入社でも安心して仕事を継続していただくための環境づくりとして、こうした取り組みはキャリア入社の従業員に役立ったのではないかと思います。
――在宅勤務の環境でも社内とのつながりを作るきっかけになりますね。在宅勤務の方を例に挙げていただきましたが、従業員のみなさんの働き方は在宅勤務を中心としているのでしょうか。
コロナ禍の最中においては本社オフィスを中心に在宅勤務を中心とした働き方になりましたが、2022年1月からグローバル全体でハイブリッドワーキングモデルを導入しています。これは、一人一人が業務特性に合わせて自身の役割を果たすことを前提に、個人やチームの生産性とウェルビーイングの向上のために自ら働く場所を選んで、主体的に働き方をデザインするというものです。
オフィスという場所は、従業員同士のつながりを作ったり、イノベーションを生んだり、チームワークをもたらすための共創の場と位置付けをして、各部署単位で柔軟な働き方を実現しています。例えば人事部では、集中して資料を読んだり、作成したりするときには在宅勤務を選択している方が多いです。一方で、みんなで意見を出し合って議論を深めたいような時には出社をしています。
グローバル・スペシャリティファーマとして共に成長していける人材を
――コロナ禍にも一定の落ち着きがみられ、ポストコロナを意識した動きも始まっています。今後、御社の働き方や採用戦略はどのように変わっていくとお考えでしょうか。
ハイブリッドワークについては施行後1年が経過しましたので社内アンケートを実施し、その結果をもとに、モデルが意図した個人やチームの生産性とウェルビーイングの向上により一層繋がるようなアップデートや仕掛けを行っていく予定です。
キャリア採用の戦略に関しては、会社の理念や価値観に基づきグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらす「Life-changingな価値の継続的な創出を実現」というビジョンの達成に向けて共に働く仲間を探していくことは今後も変わりません。
――最後に、御社が今後の成長に向けて必要とする人材像を教えていただけますか。
募集するポジションが100近くあるため一概には言えませんが、そのなかでも共通する部分は、目指すべきところや価値観をしっかりと共有して成長を達成していくこと、それにコミットできるような人材が必要だと考えています。前述いたしましたようにグローバルに活躍していただける人材の必要性は高まっているわけですが、言語だけではなく一緒に働く人々の多様性を受容できることや、コロナ禍をはじめとした変化に対応し、かつ前向きにチャレンジして取り組んでいく、そういった人材が必要と思います。
【プロフィール】
原川和之(はらかわ・かずゆき)
人事部 採用育成グループ 2006年入社、営業本部で10年間、医薬情報担当者として腎領域を担当。その後、法務・知的財産部を経て、2019年から現職。