楽器・音響機器メーカーのヤマハの求める人材は「こころ豊かな暮らしづくりに貢献できる働く仲間」 | キャリコネニュース
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楽器・音響機器メーカーのヤマハの求める人材は「こころ豊かな暮らしづくりに貢献できる働く仲間」

国内最大の総合楽器メーカーのヤマハ株式会社は、2022年5月に発表した中期経営計画「Make Waves 2.0」の基本方針の一つに「ともに働く仲間の活力最大化」を提示した。

同社が成長力を高めるべく注力する人材への取り組みとは。また、コロナ禍を経て多様性が叫ばれる今、価値創造を担う人物像はどのように変化しているのか。人事部採用グループ リーダーの佐藤 玲司さんと同グループの大内 亮さんに伺った。(取材・文 千葉郁美)

グループ人材全員で「一つのヤマハ」を形成しグローバル化へ対応

ヤマハ株式会社人事部採用グループ リーダーの佐藤玲司さん(左)と人事部採用グループ 主事の大内亮さん(右)

ヤマハ株式会社人事部採用グループ リーダーの佐藤玲司さん(左)と人事部採用グループ 主事の大内亮さん(右)

――2022年に発表となった中期経営計画において、経営戦略の3本柱のひとつに「人材」へのアプローチを据え、高い推進力で実行していく姿勢を示されました。これまでの御社の人材に対する姿勢に対してどのように変わったのでしょうか。

佐藤さん:当社ではこれまでにもヤマハグループで働く人々を大切にすることを重視してきており、経営・事業計画に織り込んで活動してきました。昨年春からスタートした中期経営計画でそれを3本柱の一つとして掲げたことは、そのスタンスをさらに推し進めることを表しています。

当社は国内外に複数の拠点を持っています。売り上げは海外比率が既に7割を超えており、生産拠点の多くも中国・インドネシアにあります。海外拠点で働く大勢の社員とともにグループ全体が「一つのヤマハ」として、共に働いていきたいと考えています。ヤマハで働く人々とヤマハとのエンゲージメントが高まることは、事業を成長させ社会に貢献するための価値創造の源泉になるという考えのもと、働く仲間の「活力」を高めることが企業理念やビジョン実現に繋がる、というスタンスをより明確にしたことは大きな変化といえます。

――グループ全体の活力最大化に向けて、具体的にはどのような施策が進められているのでしょうか。

グループ全体での取り組みの一つには、グローバルな人事に関する取り組みがあります。2022年の春にはグローバル人事の専門組織を新設し、取り組みを一段強化しています。これまでは海外拠点の人事に対してヘッドクウォーターとしてガバナンス的にアプローチするする傾向がありました。しかしそれだけでは融合することはできないと気づき、個々の拠点で取り組んでいる活動を尊重し、それを繋げてグループ全体のものにしていくという形で取り組みを開始しています。

海外グループ会社との関係性においては、人材交流を大きく加速させようという動きもあります。ヤマハ本体のより一層のグローバル化が必要という課題認識がある中で、それを解決するために日本で海外籍の方に入社していただくだけではなく、海外グループ会社との人材交流を積極的に行うことで、グループ全体を融合さていくこと進めています。

また、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)と人権尊重に対する取り組みもグループ全体で力をいれています。ダイバーシティや人権に対する価値観や課題は社会的・文化的背景によって大きく異なります。価値観を統一する、変えるなどということは非常に難しいことです。それぞれの価値観を尊重し、各社が行っていることを互いに発信・共有することで、ひとつのヤマハになることを進めています。

 世界中で想いを持った仲間が活躍している


世界中で想いを持った仲間が活躍している

――グローバル化に向けた取り組みは足早に進んでいるのですね。一方、少し粒度を細かくして国内のヤマハ株式会社ではどのような取り組みが進められているのでしょうか。

佐藤さん:一つは社員の人材開発のあり方の見直しがあります。従来は終身雇用の慣行の名残もあり、「就職」というより「就社」という意識が強かったように思います。会社の採用・配属の前提にも、そのような認識があったように思います。採用においては、どちらかといえば「会社のために働いてくれる人」「優秀な人」を採りましょうという考えでした。このような会社と社員の関係に対する考え方、個々人の働き方に対する意識は近年大きく変わってきていると認識しています。

従来は「キャリア」といえば社内キャリア、組織内キャリアのことを指していて、会社の中で何をしてどういったポジションに就くか、という価値観が多数派だったのではないかと思います。今は「キャリア」という言葉の定義がより広がっていて、「人生をどう生きるか」というところを起点に、その一部を実現する手段が会社で働くこと、という考え方に変わってきていると思います。この価値観の変化は非常に早く、ヤマハとしてもしっかりと対応していきたいと考えています。

具体的には、「社員と会社の対等な関係の中で、社員は会社という公器を使って自己実現をし、会社は社員との共創によって生み出した新たな価値を世の中に提供する」という考え方を広く社内に発信しています。一人ひとりの自律的なキャリア開発を支援する取り組みもスタートしています。

多様な事業がある中で何をやりたいかの明確化を

静岡県浜松市にある本社併設企業ミュージアム「Innovation Road」

静岡県浜松市にある本社併設企業ミュージアム「Innovation Road」

――昨今の働き方に対する考え方の変化は、採用活動にも影響がありますか。

大内さん:こうした考え方の変化は採用活動をする上で如実に感じるところです。新卒の若い世代はもちろんですが、転職を検討している方もより自己実現や社会貢献への目的意識を持たれて動かれているなという印象です。

従来なら、当社の事業やスタンスをある程度理解してもらった上で入社してもらい、その後の社内での育成や配置は、本人の意思をふまえつつも基本的には会社側の人事施策の中でマネジメントできていたと思います。一方昨今では、事前に当社で働く社員の具体的な仕事内容、働き方、自己実現のあり方などがしっかり伝わらないと、安心して飛び込んできていただくのが難しくなってきていると認識しています。

当社は楽器だけでもピアノやギターなど複数の事業部があり、また、音響機器やゴルフなども含めて多種多様な事業体の集合によって成り立つ組織です。より具体的に「どこでどんなことをやりたいのか、できるのか」ということをしっかり認識いただいた上で入社の意思決定をしてもらうことは、一つの重要なポイントだと考えています。

――細やかで丁寧な採用活動が求められているのですね。事業や仕事の魅力を感じてもらうためにはどのような工夫をされているのでしょうか。

大内さん:仕事内容を知ってもらうために一番有効なのはインターンシップですね。当社では2週間程度、実際の仕事そのものを体験していただいています。現場の雰囲気や働く人たちから社風などを感じ取ってもらうことが理解につながって、その結果入社を決めていただくというのが理想ですね。

インターンシップ以外でも、個別の会社説明会を開催して70名ほどの方に来社していただき、若手の社員と交流していただくようなイベントを催しました。来社が困難な場合にも、オンラインで社員から仕事内容を聞くといった内容で進めています。コロナ禍によってオンライン実施ができるようになってからは、一度に100人以上を対象として開催できるようになったのは一つ大きなメリットだと感じています。

――2週間の現場体験とは、比較的に長期間で充実した内容が期待できそうですね。技術系の職種では工学を学ぶ学生が多数おられると思いますが、インターンシップを通じて知ってもらいたいことはどのようなことですか。

大内さん:一口に工学を学んでいるといっても学生たちが作っているものや研究しているものは多岐に渡りますが、ものづくりには共通点があります。機械設計・製図をして試作をして評価をして…というプロセスは、対象が違ってもとても似通っているので、学生さんにもそういったことに気づいていただく一つの機会だと思います。楽器や音響機器作りなどとは一見関わりがなさそうでも、実際には大学で培ってきた学びや技術は開発に活かせることを、インターンシップで体験していただけるといいですね。

――直近では2月にインターンシップを実施されたとのこと、昨今のコロナ禍では、完全なオンライン化やリアルとのハイブリット実施など、各社が工夫を凝らして実施しているようですが、御社ではどのように実施しているのでしょうか。

大内さん:直近では全てを対面実施することを基本としています。ただ、感染拡大の状況によって柔軟に対応できるように、インターンシップの受け入れ部門側であらかじめ対面・オンラインのそれぞれの前提で、2パターンのプログラムを準備してもらっています。

インターンシップは必ずしも採用のためだけにやっているわけではありません。来ていただく以上は「ヤマハって面白そうな会社だったな」と思ってもらえるように注力しています。

人の心を震わせ豊かな生活につなげる発想ができる人材を

ライブの真空パック「Real Sound Viewing」

ライブの真空パック「Real Sound Viewing」

――インターンシップをはじめ、コロナ禍においては従来の採用活動がままならず、オンライン実施という新しい方法が生まれるなど、活動を見直すきっかけにもなっているのではと想像します。そうした変化を経て、今後の採用活動はどのように行なっていくことが望ましいとお考えですか。

佐藤さん:まずはヤマハを志望いただく方と1対1で丁寧に対話していくことです。お互いが理解し合った後に入社していただくことを大事にしていきたいと思っています。

採用上の課題の一つとしてあるのは、働く場所の問題です。当社は静岡県浜松市に本社を置き、国内の機能もほとんどが浜松に集約しています。元々、地方に拠点を置く会社としての“地の不利”の課題認識はありました。コロナ禍を経てテレワーク勤務という形態が働き方のスタイルの一つとして一般化しました。当社も、人事制度を変更しハイブリッド型の働き方を推進することで、採用における課題の一部は解消されました。今後も世の中の変化には柔軟に対応していきたいと思います。

大内さん:こうした課題意識を人事や採用のみならず経営までを含めて共有して取り組んでいくことが、今後重要になってくるのではないかと思います。

――最後に、これからの御社の成長に必要となる人物像とはどのような方でしょうか。

大内さん:新卒採用でよく見られているポイントは自分でどんどん進んでいけるかどうか、というところですね。好きなことや興味のあること、自分の専門分野や趣味でも、なんでもいいのですが。言われたから、課題だからやるとかではなく、自分でちゃんと課題設定して、未開の地でも自ら道を切り拓いていくような人たちが最終的に当社に入社されているなと思います。そういう人たちがイノベーションを起こす元となる技術を作ったり、新しい市場を開拓したりしてくれていると、今までを見て思いますし、今後もそうだろうと思います。逆に、「ただ音楽が好き」だというだけでは辛いのではないかなと思いますね。

キャリア採用の場合ですと、やはり即戦力を求められますので、「ご自身の得意分野や実績をヤマハでどう活かせるか」を明確にストーリーとして語れることがポイントだと感じています。

佐藤さん:当社は楽器・音響機器メーカーですが、ただ単にモノを作って売ることが目的ではありません。私たちが音・音楽を通じて本当に実現したいのは、「世界中の人々のこころ豊かな暮らし」です。楽器が奏でる音が人に伝わり、心を揺らす。人々が心を震わせることが人々の豊かな生活につながると信じている。そういう思いが企業理念の「感動をともに創る」であり、ブランドプロミスとして掲げる「Make Waves」に込められています。

当社に興味を持っていただくきっかけとして「楽器が好き」「音楽が好き」というのは喜ばしいことです。その上で、自分自身が世の中に対してどんなことを起こしていきたいのか。それがご自身の人生にどんな意味を持つのか、自分なりのイメージや思いを持った方に、ぜひ私たちとともに働く仲間となっていただきたいと考えています。

【プロフィール】

佐藤 玲司(さとう・れいじ)
人事部採用グループ リーダー 1992年入社。 物流部門にて物流情報網の構築や流通ネットワークの再構築を担当。 2013年より、ゴルフ用品事業の経営管理、品質保証を担当。 2019年、人事部にて人事制度・人材開発等の企画を担当。 2022年4月より現職。

大内 亮(おおうち・りょう)
人事部採用グループ 主事 2006年入社。 音声信号処理ソフトウェア開発者として、業務用カラオケ機器や遠隔会議用マイクスピーカーの開発を担当。 2015年11月より現職。

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