コンプライアンス違反に厳しい昨今、「お願いすれば黙っていてくれる」と思うのは甘い。11月上旬の掲示板ミクルに、「これって酷くないですか?」というスレッドが立った。スレ主は製薬会社に勤務する主任で、仲の良い同僚T君と共に新入社員の基礎教育係を任されていた。
しかし、 T君にはキレやすいところがあり、新入社員が少しでも言い訳などしようものなら大声で怒鳴り散らしたり物を投げつけたりするという。スレ主も「今の時代、完全にパワハラです」と認めている。
これが新入社員から社長に伝わり、T君は社長から「二度とやるな!」と叱責され、スレ主も
「Tがパワハラしないよいうに見張っといてくれ。もしやったら俺に報告してくれ」
と告げられた。ところがその一週間後、T君はまたもパワハラをしてしまった。(文:okei)
「私はT君を守りたかったんです」 頭を下げて新人に口止め
当然、パワハラを受けた新人は「社長に報告する」と表明した。スレ主はT君が処分されることを恐れ、彼を守りたい一心で新入社員を必死に説得した。「俺からT君によく注意しておくから、社長には報告しないでくれ」と頭を下げ、ようやく承諾を得たという。
しかし結局社長に報告され、スレ主はT君と共に大目玉を食らい教育係から外されてしまった。納得がいかないスレ主は、
「『社長には言わない』って約束したのに言いに行くって酷くないですか?」
と共感を求めた。
この相談には、スレ主に対する冷たい叱責が相次いだ。
「関係ない同僚が頭下げて黙っていてくれというのは腐敗以外のなにものでもない」
「新入社員からしたら主さんもパワハラしてるように見えますね」
「公私混同する主任にパワハラな新人教育担当なんて、まともな会社じゃないですね」
また「プライべートな感情で仕事を放棄している」「二人とも教育係なんて向いてない」として、新入社員の行為は間違っていないという意見が大半を占めた。
社長からすれば、一度は厳重注意だけでやり直すチャンスをあげたのに、監督役を命じた社員にまで裏切られて心底がっかりしていることだろう。スレ主は友人を守ろうとして会社での信頼を失ってしまった。残念だが、今後出世は難しいかもしれない。
「私と同じ立場だったら本当に同じ事しないんですか?」と反論
スレ主は批判に対して、2人とも悪かったのは認めるが「T君とは一緒に映画や飲みに行ったりゲームをしたり、今まで会って来た人の中で一番気が合う人でした」と弁明。
「皆さん第三者だから好き放題言えるみたいですが、私と同じ立場だったら本当に同じ事しないんですかね?」
と反論している。確かに友情は大事だが、そんなに大切なら尚更、説得や担当替えを打診するなど、T君が最悪の事態に陥らないよう厳しく対処するべきだったのではないか。情が絡むと難しくなってしまうなら、同僚と仲が良過ぎるのも考えものだ。
このスレ主の問いには、「プライベートと仕事は別問題。そんな事で同僚を庇ったりしないですよ」「その理屈は通じない」などと、再び厳しい批判が押し寄せた。新人が病んで退職し、労基署に訴えなかっただけ良かったという指摘もある。
今更ながら、厚生労働省の「パワーハラスメントの定義」には、次の3つの要素が明記されている。
1.優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
2.業務の適正な範囲を超えて行われること
3.身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
まさにT君が新人に対して行ったことだが、冷静に考えればスレ主がしたことでもあるとすぐにわかる。生意気な新人だったのかもしれないが、本当に二人とも教育係に向いていなかった。社長が新人の訴えを聞き入れ、適切な対応をしたことは、会社にとって不幸中の幸いと言えそうだ。