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ソニーグループがソフトウェアエンジニアの採用強化 採用オウンドメディアで求職者のニーズに応える

ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エンタテインメント・テクノロジー&サービス、イメージング&センシング・ソリューション、金融など、多様な事業を有するソニーグループ株式会社。

コロナ禍以降、採用活動をオンライン中心に切り替えただけでなく、ビジネスやテクノロジー、企業文化に関する動画や記事を作成するなど、求職者に対するオンラインでのアプローチを強化している。事業をさらに成長させていく中で、同社はどのように新たな人材を獲得しているのか。ソニーグループ株式会社採用グループの種子島由子さんと吉沢友美さんに話を聞いた。(聞き手・文:藤間紗花)

採用オウンドメディアでは学生ライターも活躍

ソニーグループ株式会社採用グループの種子島由子さん(左)と吉沢友美さん

ソニーグループ株式会社採用グループの種子島由子さん(左)と吉沢友美さん

――コロナ禍で、さまざまな企業が採用活動において停滞や変化を余儀なくされました。御社にはどのような影響がありましたか?

吉沢さん:ソニーにとっても採用計画が立てにくい状況でした。一方で、外出自粛が推奨される中でゲームやホームAV商品のニーズが社会的に高まったので、採用抑制や凍結を行うことなく積極的な採用活動を行っていました。

――採用活動をオンライン中心へ切り替えるのは、大変ではなかったですか?

吉沢さん:すぐに「オンラインで開催しよう」というマインドに切り替えられたので、特段躊躇することはなかったと記憶しています。比較的スムーズに移行できたと思います。むしろオンラインだからこそ、今までアクセスできなかった首都圏以外の学校にアプローチできるようになりました。

経験者採用の場合にも、遠方にお住まいの方やIターン・Uターンご希望の方のお時間を確保しやすくなりました。求職者側にも「イベントの参加や面接がオンラインでできるならエントリーしてみようか」と考えてくださる方が増えたのではないかと思いますし、オンライン化したメリットは大きかったと感じています。

――御社では2021年6月に、採用オウンドメディア「Discover Sony」をローンチされて以来、御社のビジネスやテクノロジー、カルチャーについてコンスタントに発信を続けられています。やはりコロナ禍による採用活動の変化が関わっているのでしょうか。

吉沢さん:コロナ禍以降、求職者の行動パターンや働き方において大切にされるポイントが大きく変化しています。そこで私たちも採用オウンドメディアを作り、自社について情報を発信していくことが必要だと考えました。

企業ごとのビジネスや文化、オフィスの雰囲気や働く人々の空気感、そして会社説明会や合同説明会の開催情報など、欲しい情報を求職者自身が好きなタイミングで、直感的に選定してキャッチするという傾向が強くなっていると感じます。当社の「Discover Sony」は、そういった求職者のニーズに応えるために立ち上げたものです。

スタートしたばかりの頃は、ありものの素材をリライトする形で掲載していたのですが、少しずつオリジナル記事を増やしていきました。今後もコンテンツの更新は変わらず続ける予定ですし、ますます内容を充実させていきたいと考えております。

――現在「Discover Sony」のオリジナルコンテンツの制作は、どなたが担当されているのでしょうか?

吉沢さん:コンテンツの企画は私たち採用チームのメンバーです。実際の記事の執筆は採用メンバーのほかに、インターンシップの学生にもお願いしています。インターン生の記事は学生ならではの目線で書かれていて、興味深い内容になっています。採用オウンドメディアでありながら、インターン生もコンテンツづくりに参加できるのが「Discover Sony」の特筆すべきポイントではないでしょうか。

「ソフトウェア人材も活躍できる場」のアピールに試行錯誤

JR品川駅港南口のすぐ前にあるソニーシティ(本社)

JR品川駅港南口のすぐ前にあるソニーシティ(本社)

――多様な事業を展開されている御社ですが、新卒採用においては、希望の職種やカテゴリーを選択する「コース別採用」と、特定の職種に絞らない「WILLコース・専門性不問コース」を展開されています。この2つについて詳しく解説いただけますでしょうか。

吉沢さん:当社では、主体的にキャリアを選び取ることで仕事に対する期待と覚悟を持ってほしいという思いで、10年以上前からコース別採用を導入しています。どの職種・職場に配属されるかわからない不安な状況を「配属ガチャ」と表現されたりもしますが、「コース別採用」ではそういったことも起こりにくいです。

種子島さん:一方で「ポテンシャル確認希望」というチェック項目も設けており、ご自身が選択したコース以外でも適性をチェックしてもらえる仕組みも作っています。学生自らの意志に基づいてコースを選択してほしいという想いはベースにありつつ、まだまだ自分の進みたい道を模索中の方も多いかと思いますので、こういったサポートも取り入れています。実はこっちの方が向いている、という偶然の出会いもあるかもしれませんし。

入社後も、新しい挑戦をしたいという個人の意思により自ら手を挙げ、希望する部署やポストに応募できる社内募集制度があります。所属部署に2年以上在籍している社員であれば、上司の許可なく自由に応募することが可能であり、社内で転職するようなイメージで自分のやりたいことにチャレンジができる。ソニーにとって主体的なキャリア形成の上で欠かすことができない制度ですが、多くの社員がこの制度を活用しています。

――“ソニー”という名前を聞くと、ハードウェアをイメージする人も少なくないと思いますが、御社では現在ソフトウェアエンジニアの採用を強化しているそうですね。エンジニア獲得に向けて行っている活動や課題などがあれば教えてください。

吉沢さん:ソフトウェア人材の獲得には、日々いろいろと苦戦しながら工夫を重ねていて、まさに試行錯誤している状況です。具体的な活動としては、ソフトウェア人材をターゲットにしたオンラインのイベントを開催したり、私たちが求めるDX人材について「ソニーのDX領域の取り組み」を紹介するオンラインライブを配信したりしています。

社内のワーキンググループが主体となって、ソニーのソフトウェア技術や、現在活躍しているソフトウェアエンジニアについて紹介する活動も行っています。「まずはソニーのソフトウェアについて知ってもらおう」という取り組みですね。もちろん、先ほどご紹介した「Discover Sony」でも積極的に発信を続けています。

また、一般的に公開されている求人を見るだけでは、なかなか魅力を伝えきれない部分もありますし、そもそもソニーでソフトウェアエンジニアが活躍しているシーンを想定していただけていない方には、ホームページや求人にまで辿りついてもらえない可能性も高いので、ダイレクトリクルーティングによるアプローチも強化しています。

過去の応募者や出戻り歓迎のキャリア戦略

「NEST」と呼ばれるスペース。打ち合わせや休憩に使われている

「NEST」と呼ばれるスペース。打ち合わせや休憩に使われている

――経験者採用においては、求職活動中の方のみならず「いつかソニーで働いてみたい」と考えている方も利用できる「キャリア登録」が設けられていますが、こちらはいつごろから利用できるようになったのですか?

吉沢さん:今年の2月ごろにスタートしました。ソニーに興味を持ってくださる方に登録してもらい、その方に合ったお仕事があればスカウトを送らせてもらう仕組みで、最近始まったシステムではありますが、キャリア登録から入社した社員もすでにおります。

実はこのキャリア登録には特別な部分があり、過去にエントリーいただいたときに残念ながらご縁に至らなかった方にお声がけし、登録していただいているケースもあります。今回採用された社員も、5~6年前にエントリーをしたものの入社には至らなかった人材でした。

ですが、弊社でこの数年間に新しい事業も出てきて「ぜひご案内したい」という求人がありましたので、スカウトを送らせていただきました。すると、年月を経ても当社に関心を持ち続けてくれていたようで、スカウトを受け取った後にカジュアル面談を受けていただき、双方理解を深めながら無事内定に至りました。今後もこういった採用の形は増えていくと思います。

――内定に至らなかった経験のある人が、数年後企業からのスカウトを受けて入社するというケースは、かなり珍しいと思います。

吉沢さん:そうだと思います。あとはソニーの社員の特徴として、一度退職した人が戻ってくるというパターンが多いです。これには退職時に気まずい雰囲気にならないことや、戻ってきやすい風通しの良さなど、ソニーならではのカルチャーが関係していると思います。

種子島さん:毎年、新卒採用のイベントとして、グループ各社が集って2日間のセッションを行う「グループキャリアフォーラム」というイベントを開催していますが、コンテンツのひとつに、ソニーを卒業した元社員を呼んで「どうして辞めたの?」「正直、辞めてからどうだった?」といった話を聞くものがあります。まさに当社の自由闊達なカルチャーを体現しているもので、学生の皆さんからも非常に人気のあるコンテンツの一つです。「Discover Sony」でも、ソニーを卒業した人に話を聞く記事を公開しています。

――元社員が辞めた理由を公の場で正直に話せるというのは、円満に退職できているからこそできることですね。

吉沢さん:退職というより「卒業」というような感じで辞めていく方が多い印象です。ソニーという場で個性を高めながら学び合いともに頑張ってきた仲間が、次のステージへ羽ばたくために卒業していくという捉え方ですね。

自分のキャリアアップのため、経験値の幅を広げたいというポジティブな理由で卒業する方が多いので、違うステージでまた装備を変えていろいろな武器を手に入れたあとで、「今の自分ならソニーでどのように活躍できるだろう」と考えて戻ってきてくれるパターンも多いのではないでしょうか。

ソニーでは、人材理念を“Special You, Diverse Sony”と定義していますが、「誰とも違う個性豊かな⼀⼈ひとりの成⻑と、その挑戦を発揮できる機会や場所となるソニー」という考え方が脈々と文化として培われているなと、こうした社内の空気を通じて感じています。

種子島さん:ソニーは創業当時から一貫して、社員と会社が「お互いに選び合い、応え合う関係」であろうとしています。社員は、ソニーという会社が自分にとって成長し挑戦する場としてふさわしい場かを問い続け、会社はそれに応えられているかを常に確認していくという関係が、ソニーらしい企業文化でもあります。

キャリア支援においても、社員の自主性を重んじ「自分のキャリアは自分で築く」という考え方がベースにあります。人材流動性が高まり個人の選択肢が増えるからこそ、これまで以上に自分がどうなりたいのかという意思が求められ、より自分で選択しキャリア形成していくようになるのではないかと思います。だからこそ、社員と会社の関係性やエンゲージメントの持つ意味も、より重要になってくるだろうと捉えています。

ソニーが求職者の皆さんに選んでいただけるような、魅力的な成長のフィールドとなれるよう、そして企業文化も含めた魅力を採用活動においてしっかりお届けできるよう、グループ全体でのシナジーを活かしながら、あらゆる活動を一層充実させていきたいと思います。

種子島 由子(たねがしま・よしこ):ソニーグループ株式会社 採用グループ 統括部長。総合電機や自動車メーカー、リテールや製薬会社などさまざまな業界で人事を歴任し、2022年入社。ソニーグループの採用活動を統括している。

吉沢 友美(よしざわ・ともみ):ソニーグループ株式会社 採用グループ。新卒で大手証券会社に入社し、人材紹介会社に転職。採用コンサルティングやヘッドハンティング業務を通して企業の採用・求職者双方の支援を経験後、2021年に入社。現在はソニーグループ横断での採用力強化施策の企画・実行に取り組む。

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