不動産賃貸物件の入居申込情報を即時に確認できる「リアルタイム物件情報」を擁し、不動産業界のDXを進めるイタンジ。不動産賃貸業務支援サービス領域での圧倒的なシェアを背景に、業績を右肩上がりに伸ばしています。
2018年にGA technologiesグループ入りし、グループ中期経営計画の中でも重要な位置づけをされている同社は、いまどのような事業を行い、どのようなキャリア採用に注力しているのか。同社人事部の田村光穂さんに話を聞きました。(構成・文:水野香央里)
「リアルタイム物件情報」が競争力の源泉
――御社は現在どのような事業を行なっていますか。
当社は2012年に設立された、不動産テックの会社です。リアルタイムな物件情報を共有する不動産業者間サイト「ITANDI BB」や、不動産賃貸業務のDXサービス群「ITANDI BB +」などを提供しています。2018年には東証マザーズ(現グロース市場)上場の不動産テック企業GA technologiesのグループ会社となりました。
イタンジはBtoBのSaaS事業を行ってはいますが、その周辺領域には未着手のリアル領域が広がっており、事業展開の余地があると考えています。単に業務をデジタル化することがゴールではなく「テクノロジーで不動産取引をなめらかにする」というミッション実現に向けて不動産業界やその周辺領域をテクノロジーの力で支援している会社、と捉えていただければと思います。
例えば、賃貸物件を借りたい方が、紙の書類でやり取りが何度も発生したり、対面でのやり取りが多かったりと、入居希望者が煩わしい思いをすることがあります。当社のサービスは、「物件情報のタイムラグ」と「アナログなやりとり」をテクノロジーでなめらかにすることで、不動産業界で働く人と部屋を借りたい人、双方の体験を変えていきたいと考えています。
――主力サービスは具体的にどのような機能を備えているのでしょうか。
「ITANDI BB」は当社の競争の源泉となっています。管理会社様は物件情報を無料で掲載でき、仲介会社様も無料で物件情報の検索ができます。
「ITANDI BB +」は、月額料金と有料のオプションで構成されます。主力サービスの賃貸不動産の申込受付システム「申込受付くん」は、入居希望者が入力した申込情報を管理・仲介会社、賃貸保証会社へ連携し、申込書提出から審査までを効率化できる機能です。なお、全国の入居申込の約40%で活用いただいています。
なお、「ITANDI BB」はこのシステムと連動しているので、物件状況が常に最新になっている仕組みです。
また、24時間365日内見予約が可能な「内見予約くん」があります。内見予約受付時に、仲介会社がウェブ上で希望日時を選択するだけで、入居希望者への来店日時調整メール送信など、問い合わせの一次対応を自動化します。
このほか、入退去や更新に関する契約をオンラインで完結できる「電子契約くん」、入居者とのチャット機能を備え、入居中・更新・退去に関する手続きをスムーズにウェブ上で完結できる「入居者管理くん」などといった、一連の不動産取引をなめらかにするサービスを提供しています。
年平均成長率38%の目標達成に向けて邁進
――現在の会社の戦略方針について教えて下さい。
2023年11月に永嶋章弘が3代目の社長に就任し、第二創業期として新たな成長を目指しているところです。これまでは先駆者として、フロンティア精神で業界を引っ張ってきましたが、現在は競合が台頭し、マーケットはレッドオーシャンになっています。
そんな中、次のステージに進むためには、いま一度マーケットがイタンジに期待していることを認識し、さらなる成長に拍車をかけていかなければなりません。2024年6月に発表したグループの「中期経営計画 2026」では、2026年度までの3期間でイタンジ事業における売上収益2.6倍、CAGR(年平均成長率)38%などの数値目標が示されました。
賃貸仲介領域においては、注力エリアのクロスセルによるマーケットシェア拡大を進め、新たに参入した売買仲介領域においても、SaaSプロダクトの拡充とシェア拡大を行うとともに、セールスの増強によって高成長率の実現を目指しています。
――戦略の実現には人材採用も重要になりそうですね。
エンジニア組織の強化を図ることは、テックカンパニーとしてのベースを強化するために明確な経営課題となっています。より多くのエンジニア経験者に当社を選んでもらえるように、本格的な取り組みを進めているところです。
当社のサービスは4サービスで不動産仲介会社の利用率No.1(リーシング・マネジメント・コンサルティング調べ)になるなど、業界内での認知度は高くなってきています。一方で、エンジニア採用の強化のためには、IT企業やSaaS企業としての認知度向上が必要だと感じております。
ビジネスサイドでは、アップセルやクロスセルで新しい商材を提案し、1社あたりの取引を増やすことが重要になります。個々のスキルアップと同時に、セールスやカスタマーサクセスのキャリア採用にも力を入れていかなければいけません。
――キャリア採用者にどのようなことを求めていますか。
新規開拓にあたっては、紙やファクス、電話といった従来のアナログなやり方に親しんできたお客様にSaaSを導入した新しい業務フローを提案する必要があります。既存のサービスに加え新たなサービスのアップセルやクロスセルの提案をすることもあるでしょう。そのため、新しい環境や新しい知識を吸収することを楽しめる人が活躍できるのではないかと考えています。
なお、イタンジ社員の半数以上が不動産業界の未経験者であることからも分かるように、業界経験がなくても活躍できますし、一定のスキルセットとやる気があればどんどん昇進できる環境です。新卒採用も行っているので、新卒メンバーのマネジメントにも力を発揮してもらえることを期待しています。
自社サービスに携わりたいエンジニアを募集中
――前職での経験は具体的にどんなものがあると望ましいですか。
当社のエンジニアには、さまざまなバックグラウンドのメンバーがいますが、これまでSIerで働いてきた人が、事業会社のエンジニアとして働くことや、自社サービスに携われることに興味を持って入社することが多いです。
また、当社では既存のプロダクトの保守や改修だけではなく、新しいプロダクトの開発に関わることができるのが特徴です。インハウスのデザイナーや動画クリエイターが在籍しており、内製でプロダクトを作り切ることを大切にしているので、ここに共感して入社を決めてくれる人も多いですね。
セールスやカスタマーサクセスでは、法人向けの営業や顧客サポート経験がある方を求めています。当社のお客様は不動産会社様ですが、不動産業界の経験は必須ではなく、むしろSaaSのサービス提供や、人材・金融業界などで法人営業の経験がある方も当社にフィットしやすいと考えています。
――不動産業界での経験は必須ではないとのことですが。
入社時にはそうですが、業務を行うためには業界知識が欠かせません。新卒・キャリア入社ともに、最初はグループ全体の研修で、不動産業界の基礎知識を学んでもらいます。仲介会社向けのカスタマーサクセスの「不動産とは」といった研修から、業界基礎をインプットしてもらいます。
プロダクトについては、イタンジ社内で「プロダクトの説明」「お客様への提案ポイント」「お客様の業務効率化のために必要なこと」といったことを学ぶ機会を設けています。
今年2月には、当社内にセールスイネーブルメント部門を立ち上げました。イネーブルメントとは「できるようになる」という意味で、主にセールスとカスタマーサクセスの社員を対象に、現場に出る前の入社後1カ月から2カ月かけて、すべてのメンバーがムラなく業界知識と業務理解を深められる仕組みを作っています。
研修内容は、セールスであれば一人で商談ができるようになるまで、カスタマーサクセスであれば一人でシステムオンボーディングできるようになるために、必要な知識やスキル、ノウハウを身につけてもらいます。
このような体制で、不動産業界未経験のメンバーにも活躍してもらえるようしっかりとフォローしています。
エンジニアがフルリモートをしない理由
――御社の魅力について、候補者にどう伝えていますか。
まずはバーティカル(業界特化型)SaaSであることです。業界そのものだけでなく、その業界で働いている人の働き方や人生までも大きく変えることができるのは、ホリゾンタル(汎用的な)SaaSにはない強みであり、面白さだと思っています。
さらに、まだまだ拡大期の組織で、ステップアップを目指すには最適な環境だと思います。社内にはキャリアチェンジの制度もあり、例えばセールス職として入社したメンバーが、社内の人員配置の都合や本人の意欲によって、カスタマーサクセスやコーポレートなどへのキャリアチェンジを希望することが可能です。
さらにグループの社内公募制度を利用して、グループ内の他の会社へ異動するチャンスもあります。マネジメント軸の縦のキャリアアップだけでなく横の変化もできるので、自身の可能性や選択肢を広げることができます。
――働き方についてどのような制度を設けていますか。
コアタイムなしのスーパーフレックス制度を導入しています。チームで動く部署が多いので、勤務時間は10時から19時をベースにチームで揃えることが多いです。
なお、SaaS業界で特にエンジニアはフルリモートの会社も多いですが、私たちはやはりFace to Faceのコミュニケーションが大切だと考えています。リモートワークを取り入れつつも、体温を感じ合える場を設けようという考え方です。
――リモートで働く時間が長くなると、社内の一体感の醸成も課題になりますが、どういった施策を行っていますか。
社内イベントを積極的に開催することで一体感の醸成を図っています。3年前からイタンジ全社の表彰式を行っていて、今年も11月に開催する予定で、この1年のメンバーの活躍をみんなで称える場となります。
社内イベントも行っており、昨年のクリスマスには、役員と社長がサンタの着ぐるみを着て、お菓子を配ってオフィスを回るイベントを行いました。最近では「子ども虐待防止オレンジリボン運動」を支援するためのチャリティーイベントを開催し、手作りのバーカウンターやケータリングを準備して、社会貢献と同時に、社員同士が交流するきっかけも作っています。
こういったイベントは「カルチャー推進委員会」というチームが中心となって行っていて、事業成長に徹底的に向き合う文化だけでなく、メンバー同士のつながりやコミュニケーションの活性化を通じて、イタンジで楽しく働けるような社内のカルチャーを作っていくことを目指しています。
ミッションに共感できる人に応募して欲しい
――田村さんから見て、イタンジはどんな会社ですか。
どんな人がいますか、と聞かれたら「いろんな人がいます」と答えているくらい多様で、「イタンジといえばこういう人」という像が、いい意味であまりないと感じます。何かに染まる必要はなく、お互いに尊重し合いながら、ありのままの自分で仕事ができる環境です。
社内の雰囲気は風通しがよく自由ですが、個人主義的ではなく、子育てしながら働いているメンバーを周りがサポートし「ありがとう」が返ってくる、といった当たり前の優しさを大切にしている会社です。
一方で、チームの目標を達成するとか、その先にある「テクノロジーで不動産取引をなめらかにする」というミッションや、「不動産のインフラとなり、人々が大切なことに向き合えるようにする」というビジョン、「それはクレイジーか」「意志を持って飛び込む」などのバリューを実現することへの一人ひとりの思いは非常に強いと感じます。
新しく入社する方には、ミッション・バリューへの共感とともに、イタンジをもっと大きくしたいという強い思いを持って、会社のために何ができるのかを常に考えて日々取り組んで欲しいと考えています。
今後も、既存のメンバー含め、よりミッション・バリューへの理解が深まるよう、イベントの開催やサポート体制構築などのアクションを続けていきたいと考えています。
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