「デジタルの民主化」をコンセプトに、現場部門の非IT人材でも業務アプリを作成できるサービスを中核に成長するドリーム・アーツ。1996年の設立以来、顧客の業務プロセスのデジタル化を支援し、2023年10月に東証グロース市場に上場しました。
金融、サービス、製造、流通など様々な業界の大手企業をクライアントに持ち、急成長する同社は、現在どのようなポジションで、どのようなキャリア採用に注力しているのか。同社キャリア採用担当の内藤澪奈さんに話を聞きました。(構成・文:水野香央里)
主力製品は大企業向け「ノーコード開発ツール」
――御社は現在どのような事業を行っていますか。
ドリーム・アーツは、大企業や公的機関などのエンタープライズ向けに事業を展開するSaaS企業です。自社プロダクトを持っていることが特徴で、事業領域を「Big Donuts(ビッグドーナツ)」という言葉で表現していますが、企業の心臓部である基幹系システムを取り囲む現場向けのシステム領域を手掛けています。
主力製品の「SmartDB(スマートデービー)」は、非IT人材でも業務アプリケーションを開発できるノーコード開発ツールで、企業固有の複雑な業務プロセスを現場主導でデジタル化することを可能にします。このほか、企業情報ポータル型グループウェア「InsuiteX(インスイートエックス)」や、多店舗ビジネス向けクラウドサービス「Shopらん(ショップラン)」を展開しています。
なお、SmartDBは、SaaS型ワークフロー市場で3年連続シェアNo.1を獲得しており、市場全体のシェアでは32.3%、大企業向け市場では54.7%と圧倒的なシェアを誇っています(いずれもテクノ・システム・リサーチ社の「2023年SaaS型ワークフロー市場のメーカーシェア調査」による)。
2024年9月には、日本企業の海外拠点のDXを支援する「Global Connect」構想を発表し、SmartDBの国際対応を強化しています。海外の支社や事務所でもSmartDBなどを利用できるよう、多言語対応や海外法令対応、セキュリティ対策などの機能を追加し、さらなる事業拡大を狙っています。
――自社プロダクトということは開発をすべて社内で行っているということですね。
当社のエンジニアがプロダクトの企画、開発を行い、自社でサポートを行っています。SmartDBは、誕生から今年で20周年を迎える歴史あるプロダクトで、これまでさまざまな機能追加をしながら成長してきました。自社プロダクトに関われることは、特にファーストキャリアとしてSIerを選んだエンジニアの方には魅力を感じてもらえるのではないかと思います。
マーケティングやセールス、カスタマーサクセスも、基本的に自社で直接販売を行うことでこれまでお客さんとご縁とつないできました。ただし今後はプロダクトをさらに広めていくために、SIerや事業会社、コンサル会社などにご協力いただく必要があると考えており、戦略パートナーの拡大に注力しているところです。
「お客さんとケンカするくらい議論しろ」の意味
――現在どのようなキャリア採用に注力していますか。
2023年10月に上場した当社は、現在さらなる成長を目指す拡大フェーズにあり、エンジニアやセールスのほか、デザイナーやコーポレートを含む幅広い人材を募集しています。戦略パートナー拡大のためのアライアンス担当や、SmartDBの資格認定制度を広める職種についても、鋭意募集を行っているところです。
特にエンジニアについては、開発経験があり、フルスタックエンジニアを目指したい方を求めています。フルスタックといえば、フロントからインフラまでという横軸で考えることが多いですが、ドリーム・アーツでは横軸にプラスして、レガシーな言語からモダンな言語までという縦軸にも幅を広げることができますので、真のフルスタックエンジニアを目指すことができます。
SmartDBには、リリース当時の言語で作られた機能の上に、新しい言語で作られた機能が追加されています。今後も大企業で多くの方に使ってもらえるよう機能開発を続けていきますが、その過程を追い続けることができるのも、当社のエンジニアとして働く魅力のひとつではないかと思います。
――クライアントと直接対話をする機会もあるのでしょうか。
当社では「お客様」ではなく「お客さん」と呼ぶようにしているのですが、お客さんとの対話は当社が非常に大切にしていることのひとつです。やはり、自分が作った機能がどう使われているのか分からなかったり、意味を感じることができなかったりすることは、エンジニアにとってモチベーションを下げる要因になるでしょう。
「この機能がとてもよかった、すごかった」といったお客さんの声は、エンジニア自身が商談やヒアリングに同行して直接聞くこともできますし、営業の担当者がチームのチャットなどを通じてエンジニアに積極的にフィードバックしています。
また、当社は「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」をミッションに、「協創力を究めよ Peak the Arts of Co-Creation」をスローガンに掲げているように、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションによる「協創」というカルチャーを非常に重視しています。
簡単に言うと「チームで力を合わせて、より良いものを作り上げていく」ということですが、単に仲の良いゆるい関係ということでは全くなく、社内では「お客さんとケンカするくらい議論しろ」と言われることもあるくらいです。
プロダクトを本気で価値のある良いものにしていくために、お客さんとの間に遠慮なく意見を言い合える関係を構築しているからこそ、「協創」が可能になるということです。このようなカルチャーを大事にしてきたからこそ、ドリーム・アーツという会社はここまで成長できたのではないかと考えています。
若手のうちからたくさんの「打席」に立てる
――営業職やマーケティング職について求める経験などはありますか。
当社のお客さんは大企業なので、大手企業にいた経験を活かせるのではないかと思います。大企業のジレンマのような部分を知っていたり、内部事情が理解できたりすることは大きなポイントになると考えています。
ただし採用にあたっては、経歴よりもどんな考え方で仕事に取り組んできたかを重視しています。実際に、銀行でリテール営業をしてきた方や、メーカーでルート営業をしてきた方で、当社のフィールドセールスとして活躍している人もいます。法人営業をしてきた方が、当社でマーケティング職にキャリアチェンジしている例もあります。
また、ビジネス職でもエンジニアと同様に「協創」のカルチャーに適応できそうかも重視しています。「法人営業の豊富な経験があるが、理念に共感できない人」より「個人営業の経験のみでもカルチャーマッチしている人」を優先して採用しています。
――御社のお客様は大企業ですよね。若手の活躍は難しいのでしょうか。
実は当社では、フロント部署であるマーケティングや営業、カスタマーサクセスで若手がとても活躍しています。大企業への営業はやはり大変で、提案の相手が本部長クラスや取締役などの役職の高い方になるのはよくあることです。
そういう方に商談しに行くとなると、当然こちらの説明レベルも非常に高いものが求められます。そのため、他社では40代、50代のベテランに任されることも多いのですが、当社の場合は、そういった大企業に20代の若手、新卒2年目、3年目の社員が営業に行くこともあります。
当社にはそのような、普通の会社の20代が経験できないことに挑戦できる環境があります。キャリアアップを目指している若手社会人にとって、当社は非常にいい環境だと感じてもらえるのではないでしょうか。
実際、新卒で入社した社員からは「入社してすぐにたくさん打席に立たせてもらえた」「若手がチャレンジできるように応援してくれる」「色んな経験をさせてくれる文化がある」という声を聞いています。もちろん、ただ突き放して「やってこい」ではなくて、上司や先輩がフォローアップを行った上で若手の挑戦を後押しします。こういった文化が会社全体にあることも、ドリーム・アーツらしさだと思っています。
研修プログラムでキャリア入社の活躍を支援
――御社で働く魅力はどのようなところにありますか。
一番の魅力は、やはりプロダクトの利用規模の大きさです。大企業向けに事業を展開しているので、当社のプロダクトは数万人、数十万人が利用します。これだけ大きなプロダクトの開発に直接携われることは、当社で働く一番の魅力です。
それだけに、社員に求められるレベルも高く、プロフェッショナルの意識を一人ひとりが持つことが大切になってきます。それぞれが高いプロ意識と当事者意識を持って自己研鑽に努め、スペシャリティがあって初めて自分の意見を言うことができるし、お客さんと本気で議論することができます。
これが「協創」の根本になる考え方で、社員みんなが、スペシャリストを目指しています。創業当初から掲げてきたこの理念のもとで、社員一人ひとりが「お客さんの今日を改善したい」と本気になって向き合ってきたからこそ、その思いがお客さんに伝わり、信頼関係を築き上げることができたのだと考えています。
――そういう環境で働くことは魅力的である一方で、転職にあたってはややハードルが高いと感じられる若手社会人もいるかもしれません。
当社では社員の成長や活躍を支援するため、教育研修をはじめとして、新しい仲間の順応を促進するオンボーディングの制度を整備しています。新卒・キャリア採用を問わず、入社時には全員が参加するオリエンテーションを実施するほか、SmartDBなどプロダクトの知識を身につける研修など、社員の成長段階に合わせたきめ細やかなカリキュラムを用意しています。
特にセールスやマーケティングの部署については、3カ月のオンボーディングのプログラムが組まれていて、それに沿って課題を1つずつ達成していくことで力をつけてもらいます。プログラム終了後も、先輩社員などに同席してもらいながら仕事を覚えてもらいます。エンジニアにはフロントの部署を経験してもらうこともあります。
また会社として、「協創」という考え方や、「顧客との信頼」「自律とリーダーシップ」「挑戦と変革」「機会の本質」「やりぬく忍耐と勇気」「建設的対立」といったバリューについて考える「DA(ドリーム・アーツ) Values合宿」など、私たちが重視しているカルチャーを理解してもらうための施策も行っています。
――細かなフォローをしているのですね。
実は私もキャリア採用で入社したのですが、そのとき驚いたのが、その月の新入社員が私1人だけだったにもかかわらず、入社後すぐにオリエンテーションが行われ、各本部長や役員が私のためだけに、それぞれ1時間かけて「うちの本部はこういうことをしています」とていねいに説明をしてくれたことでした。
私にとってドリーム・アーツという会社を知る上でも、とても意味のあるオリエンテーションでしたが、そこまでの対応をしてくれる会社って多くないのかもしれません。こういったところにも「協創」を大切にする当社のカルチャーが現れていると思います。
変化を恐れず挑戦し続けられる人物を求む
――「協創」のカルチャーが現れている取り組みには、他にどんなものがありますか。
「協創」を行うためには、各社員に情報が広く共有されていることが前提になります。隣の部署が何をしているか分からないとか、何に困っているのか分からないという環境では「協創」は生まれません。
例えば、週に1回開催されるリーダー以上が出席する会議には、誰もが参加することができます。また、社員の週次報告である「Weekly Report」には、全社員がアクセスできるようになっています。
また、社内では「フランクコミュニケーション」と呼ばれているのですが、過剰な敬語を使うのをやめよう、フランクに話そう、ということになっています。本部長や役員、社長とも距離が近くて、話しやすい雰囲気があります。
――働き方については、どんな特徴があるでしょうか。
オフィスは、東京本社と広島本社、沖縄に那覇オフィスと石垣オフィス、グループ会社として中国に大連オフィスがあります。東京オフィスは恵比寿にあり、お客さんとの協創にも使えるようなスペースも多い、オープンなオフィスとなっています。
社内コミュニケーションは、社内メールはゼロで、チャットでコミュニケーションを取っています。リーダーとの1on1を毎月実施し、お互いを尊重した対話を大事にする文化です。
柔軟な働き方ができ、月半分は出社が必要ですが、残り半分はどこで働くかを選ぶことができます。コアタイムなしのフルフレックスタイム制で、例えば夕方に保育園に子どもを迎えに行くために、仕事を中抜けして戻ってくることもできます。
――採用活動にあたって今後強化していきたいことはありますか。
「ウルトラVUCA」ともいわれる先行きが不透明で将来の予測が非常に困難な時代の中で、さらなる拡大に向けてさまざまな挑戦を続けているのがドリーム・アーツという会社です。デジタル化のニーズは日本だけでなく世界中で一層高まっていますが、先を見通すことは誰にもできません。
当社も2018年にオンプレミスからピュアクラウドへビジネスモデルを転換するなど、これまで経営戦略を大胆に変更し、新しいことを取り入れてきました。当社では変化を恐れず挑戦し続けられる人物を求めており、そういった方々にお会いできるよう採用広報に力を入れているところです。
当社が打ち出す「デジタルの民主化」には、情報システム以外の現場部門の方がデジタル化を進めていける環境を整えるという意味を込めています。国内のSaaS市場は今まさに伸びている業界ですが、その中で若いうちから挑戦することが面白いと思える人、挑戦したいと思える人に入社してもらえたら嬉しいです。
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