「一社が一つの“場”を持つ未来」 XRソリューションを提供する360Channelが描く「WEB metaverse」の世界観 | キャリコネニュース
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「一社が一つの“場”を持つ未来」 XRソリューションを提供する360Channelが描く「WEB metaverse」の世界観

株式会社360Channel 代表取締役社長の中島 健登さん

総合XRプロデュース事業を展開する株式会社360Channel。オンラインゲームの開発・運営を手掛けるコロプラグループの新規事業として立ち上がり、現在7期目を迎えた。

創業以来、行政や企業とともにさまざまな場面で「XRコンテンツ」を提供してきた同社は、世の中が「メタバース」という言葉を知る前にバーチャルな世界の価値を提供してきた先駆者だ。

未だ曖昧な「メタバース」の世界は今後どのように変わっていくのか。XRが生み出す可能性と、それを担っていく人材像とは。代表取締役社長の中島 健登さんにお話を伺った。

(文:千葉郁美)

XRにより多くの人に触れてほしい。その思いで走り続けた

――御社はコロプラのグループ企業として、VRやARによるさまざまな事業に取り組まれているかと思います。具体的な事業の内容について教えていただけますか。

360Channelは現在7期目に入りまして、非常に多岐にわたる事業を展開しています。VR動画の配信サービス「360Channel」の運営のほか、コロナ禍以前にはオフラインのVRイベントの企画運営なども手掛けてきました。自社でもVR動画の制作に携わっていまして、国内最大規模の制作を実施してきたと言っても過言ではないはずです。

最近ニーズが高まっているものでは、メタバース関連のシステム、企業研修やトレーニング系のコンテンツ、プロモーション利用のソリューションといったところです。

――業界や領域を限定せず、非常に幅広い分野で展開されているのですね。

そうですね。こうしたソリューションは語り尽くせないくらいたくさん作ってきました。なかには360Channelやコロプラの名前が出ていないような、取り組みの裏側を担っているケースもたくさんあります。

XR(AR, MR, VRなどの総称)の技術に対して、今でこそ「メタバース」と騒いでくれるようになりましたが、5、6年前はまだXR自体を知らない人、体験したことのない人が圧倒的多数でした。なので、とにかく手当たり次第にXRが役に立つ場面を探して、本当に意味がありそうなものを形にして、多くの人に少しでもXRを身近に感じてもらえるようなものを作ろうというスタンスでやっていましたね。その結果、XRに触れる機会をかなりの数、創出しているんじゃないかなと思っています。

メタバースのキーとなりうる「NFT」


スカパーJSATのメタバース活用事例

――「メタバース」という言葉が最近知られるようになりましたが、それが一体何を意味しているのかを把握している人は少ないように思います。

最近はもうあまり見られなくなりましたが、メタバースを語る人の中でも、なんとなく「メタバース」と認識しているものには、さまざまな意味が内包されていました。

XRもメタバースと同じ文脈で言われることが多いですが、XRはメタバースを“現実で体験するとより楽しめるであろう”インターフェースの一つです。

また、最近はもうあまり見られなくなりましたが、NFTもメタバースと同一に語られがちです。確かに、Open SeaのようなNFTのマーケットプレイスで販売されているものが、メタバース空間で使用できると、今は多くが投機対象でしかないNFTのデジタルコンテンツの使途が増えていきます。といったように、親和性は非常に高いとは思いますが、NFTという技術が使用されていなくても、メタバースで十分ユーザーは楽しんでいますし、NFTにとってもメタバースの空間が無くても、楽しめる方法は存在している、といった関係性であると考えています。メタバースにおけるXRと同様に、メタバースとNFTも、お互いの良い点を伸ばし合える領域であることは間違いありません。

――なるほど。業界の認識と一般の認識は少しズレがありそうですね。

一般的には、ゲーム空間や仮想空間でコミュニケーションをとることが「メタバース」だと認識されていることも割とあると思います。それは間違いではないものの、業界ではもっと広い領域でのメタバースを目指しているということだと考えています。

ただ、最近は急速に人々の理解も進んできており、もっとブロックチェーンの技術がゲームやその他アプリケーションにも展開していくことで、メタバースの文脈だけじゃなく、また違う世界線が生まれてくると考えています。

――今後、メタバースを意識した取り組みを始める企業も増えてくるかと思います。どのような展望が考えられるでしょうか。

そうですね。企業がメタバースに取り掛かろうという時、まずは幅広い方に馴染みのあるゲームのように3DCG空間を回遊するメタバースから始めるのがいいと思っています。多くの人にとって理解しやすいし、手に取ってもらいやすいですから。

ただ、C向けのサービスやましてやCGMを作ることは、もうすでにレッドオーシャンと言えるかもしれません。世界で数億人のユーザーを持つゲーム空間やVR空間は、非常に大きな「場」として出来上がっています。

僕らはそうした既にあるメタバースのサービスへの「出店」を支援することもしているのですが、たとえば何かプロモーションをするために場を借りるとしても、コストがかかりすぎるし、その場限りになってしまいがちというのがネックです。

そこで、当社では「一社に一つの場を持とう」という取り組みを強く推しています。しかも、ホームページを持つくらいの感覚で持ってほしい。僕たちはこれを「WEB metaverse」と呼んでいます。

実際の事例としては、プロ野球球団の春季キャンプを行なっている施設を再現したものがあります。

通常、関係者以外は入れないキャンプ施設の中を歩き回ることができます。パブリックビューイングでは他のユーザーと共に観戦できて、チャット機能で会話をしたり、プロの解説者に質問して回答をもらうこともできたり。

コミュニケーション面もそうですが、再現したキャンプ施設の様子が「再現度が高い」と非常に好評でした。

また、このサービスはアプリではなくWebブラウザコンテンツなので、URLからアクセスできるという手軽さも特徴です。アプリよりも更新が楽ですし、アプリのプラットフォームへの手数料もかからない。ブラウザであれば、例えばSNSで送られてきたリンクを開くだけでアクセスできるわけです。それこそ、ホームページにアクセスするような感覚です。

――企業の業態によって活用の仕方にはさまざまな可能性がありそうですね。

そうですね。実際に、幅広い領域の方とお話はさせてもらえています。ただ、それぞれの領域で課題もあります。アパレルのような物販なら、3DCGで見ただけで買うことを判断するかどうか、ですとか。表現しなければいけないことは結構たくさんあると思うので、そういったところをクリアしていけたらいいなと思います。

そうして会社がそれぞれ1つの「場」を持つようになって、場と場がシームレスに移行できるようにしていきたいですね。

ビジネスとエンジニアリングの知見を兼ね備えた「WEB metaverseのプロ」が集う

本社内にあるパークオープンエリア

――そうした先進的な事業を進めていく上で、御社が必要とするのはどのような「人」でしょうか。

まず大前提として、業界をしっかりと把握し続けていく必要性があります。他のサービスに比べ自分達のサービスは置いていかれていないかとか、例えば、弊社のプロダクトは操作性、視認性が高いUI/UXを売りにしているが、そこの追及ができているかとか。そういったことを常に考えて仕事にあたってもらうことは、変化が多い業界ですので非常に大事かなと思っています。

また、ヒューマンスキルとしては素直で好奇心を持っていること。それから、何かすごく好きなものがあること、会話ができること。この4つが大事だと思っています。

素直さや好奇心を持って仕事に当たっていると、大概間違えない。大きな失敗をしないと思っているので、採用の時点ですごく大事にしていますね。「すごく好きなもの」は、最終面接で仕事の話よりも聞いてしまいます。好きなものの話をする時がその人が非常に多くの熱量を割いていると思いますので。そして、会話ができることというのは、相手の質問の意図を汲み取ってそれに回答する」というシンプルなことではありますが、それができるかは重視しています。

――職種としては、どのような方の活躍が期待されていますか。

エンジニアに関しては、UnityとWebGLという技術による開発を進めています。Unityはスマホゲームなどの開発でよく使われている技術ですね。WebGLはブラウザ上で3D表現を行うための技術で、技術自体は15年ほど前からあるものですが、昨今のメタバース需要の高まりからも非常によく使われる技術になりました。

また、先にお話ししたようなWEB metaverse(企業や行政との取り組み)を推し進めるにあたっては、ビジネスとエンジニアリングの双方に強みを持つ営業が活躍していますし、さらに積極採用したいところです。クライアントの課題や実現したいことをしっかりと把握できて、どういったシステムに落とし込めるかを具体的に考えることができるという人材ですね。これが、なかなか難しいんです。まだまだ若い業界なのでその道のプロがいるわけでもないですし。ある意味、今当社で頑張っている彼らがプロとしての道を切り拓いているのではないかと思っています。

コロプラというゲーム開発会社のもとで、一般に向けたエンタメ性の高いものを作っているイメージがあると思います。だからこそより僕らはtoBに対してどう提供していくか、エンタメで培った能力をどう活かすかを意識して取り組んでいます。

WEB metavesreの可能性は各産業、各業界に広がっています。今後も多くの人に触れてもらえるコンテンツを作っていきたいですね。

【プロフィール】

中島 健登(なかしま・けんと) 株式会社コロプラに新卒総合職1期生として入社。 入社して半年後にコロプラ社から出資を受け、株式会社360Channelを創業、現在に至る。

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