働き方は生き方そのもの “好き”を貫いて巻き起こすイノベーション
テクノロジーが進化し、人々のライフスタイルが変化し多様化する中でも、音楽、アニメ、映画など数多くのヒットコンテンツを生み出し続けているポニーキャニオン。経営企画と人事を兼務する檀原 由樹は、そんな魅力的な総合エンターテインメント企業を支えるひとり。彼の探究心と行動力は、様々な革新をもたらしています。【talentbookで読む】
夢を叶え、憧れの会社へ
「中学生のころから、ポニーキャニオンに入りたかったんです」と言う檀原由樹。将来就きたい仕事を漠然と夢見ることはあっても、中学生にしてその照準がピタリとひとつの会社に絞られていることは、なかなかないでしょう。
檀原 「『スワロウテイル』という映画を中学生のときにビデオで観て、衝撃を受けたんですよ。もともと音楽を聴いたり映画を観たりするのが好きで、将来はクリエイティブな仕事に関われたらいいなとぼんやり思っていた僕の目に、『スワロウテイル』のパッケージやエンドロールのクレジットで映し出された “ポニーキャニオン”の社名が飛び込んできて。
こんなすごい作品を生み出す会社で僕も働きたいって明確に思ったんです」
多くのエンターテインメント作品に触れる学生時代を過ごし、大学生のときにはジャズ研究会で鍵盤楽器を担当し、ファンク、ソウル、ジャズなどのブラックミュージックや生音を使ったクラブミュージックを演奏することに熱中。
同時に、どうすればジャズがメジャーシーンで売れるのかというビジネス視点も持っていた彼は、やがて迎えた就職活動で、“ものを売ったり、売るための施策を考えていきたい”という想いを胸に、エンターテインメント業界を志望しました。そして、中学生のときに抱いた夢を見事に叶え、2009年にポニーキャニオンに入社することとなったのです。
檀原 「ポニーキャニオンから内定をもらったときは、やっぱりすごく嬉しかったです。中学生のころから入りたいと思っていた会社ですからね。ただ、最終面接のときにそのことを話したら、当時の社長に嘘なんじゃないかと疑われてしまいましたけど(笑)」
“ものを売ったり、売るための施策を考えていきたい”、檀原の熱意が通じたのか、最初に配属されたのは第一志望の営業部でした。
檀原 「最初は慣れないことばかりだし、今思えばミスしてばかりでしたけど、毎日がとても楽しかったんですよね。自社のアーティストの作品を置いてもらうようにいろいろなCDショップに営業をかけるわけですけど、『こういう見せ方はどうですか?』とか、『この商品とこの商品を並べてみませんか?』とか自分からCDショップに提案して、売り場を自分で作らせてもらったりもしました」
決められた範囲内で決められたことだけをこなしていく受け身ではなく、自発的に、積極的に仕事に向かう檀原。彼を突き動かしていたのは、湧き出るアイディアと、自分が関わるからにはその意味を見出したいという強い意志でした。
檀原 「そのうち、CDはCDショップで買うという“当たり前”に疑問を抱くようになって。日ごろあまりCDショップに行かない人、行きたくても行く時間がない人が気軽に手に取りやすいように、某大手コンビニエンスストアチェーンに商談に行き、CDを置いてもらえるようにしたんです。結果、その販売促進は功を奏したこともあって、仕事がますます楽しくなりました」
“好き”だからこそ困難も乗り越えられる
2年ほど営業部で過ごしたのち、音楽マーケティング部へ。ライブ会場で行う怒濤のCD即売を、分析と直感と行動力で乗り切りました。
檀原 「担当するアーティストがライブを開催する際、会場で数千枚を売るようなビッグアーティストだと実際にどのくらいCDを用意しておくのかという見極めがすごく難しくて。即売期間中に品薄になってはいけないと、休日で物流が止まっている中、社内外あちこちに電話をかけ、倉庫を開けてもらい、どうにか欠品前にCDを届けてもらったこともあります」
営業部、音楽マーケティング部にいた7年間は、休みもあまり無くGWや年末年始にもイベントやライブで稼働していたと言います。しかし、“好き”という気持ちが揺らいだことは一度もありません。
檀原 「今振り返ってみると確かに身体的には結構きつかったのかもしれません(苦笑)。でも、やめたいと思ったりしたことはないんです。気持ち的にはいつもポジティブでしたから。それはやっぱり、子どものころから変わらずにエンターテインメントが“好き”だからなんだろうなと思います。
素晴らしいエンターテインメントをいかに人に届けるか、自分自身が楽しめる仕掛けを考えながら仮説を立てて実行する。どんな困難があったとしても、そこには何にも代えがたい喜びがあるんです。
あとは、上司や先輩や現在のチームメンバーにしても、常に周囲の人に恵まれてきたんですよね。同じことをやり続けるのはあり得ない、日々考え、提案して、少しずつでも良い方向へ変えていこう、という意識の人ばかり周りにいるし、自分も常にそうありたいと思っています。理解ある環境で自分のアイディアを形にしていけているわけで、それってすごく幸せなことだなと思っています」
より視野を広げて分析、提案、改善できる醍醐味
2015年末には、経営企画部に異動。それまでの働きを認められての抜擢でしたが、突然の人事に当初は戸惑いもあったようです。
檀原 「人事異動の時期でもないのに、突然ひとりだけ異動になったんですよ。転職したくらいに業務内容がそれまでとはガラっと変わって、一から勉強することになりました。政治学科出身の僕は、その時点で経営知識はほぼゼロ。『BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)が?』と突然言われても、高校野球の話をしているのか?と思っていましたから(笑)。
でも、だんだんと業務を進めていくにつれ経営企画の仕事も、課題を特定して、仮説を立てたり検証したりしながら新たな提案をしていくという点において、それまでやっていたマーケティングの仕事と通ずるものがあると気づいてきたんです」
会社の経営戦略・計画作り。M&A(買収、分割、合併)やアライアンス(業務提携、資本提携)などの投資業務。グループ会社の経営管理。新規事業の立ち上げ。大きく分けてこの4つの業務を同時進行させている経営企画部もまた、檀原の手腕を発揮できる場所だったのです。
檀原 「提案していいことの範囲が、アーティストや作品単位から会社規模へと広がったことで、よりいっそう仕事が楽しくなってしまって。営業部や音楽マーケティング部にいたときに抱えていた目の前の課題感が、今度はより俯瞰して構造的に捉えられるようになったのと、それを解決するための選択肢やアプローチの仕方も増えて経営企画という仕事のダイナミックさを感じました。
最初に任されたのは、会社をより成長させるためのM&Aと中期経営計画の立案。音楽事業だけでなく、ビジュアル事業やアニメーション事業など、幅広く手がける全社を見渡す必要があります。各事業の収益構造や課題を把握・分析して、改善案を出して……経営企画部に異動したてのころは、カレンダー通りの勤務になり休みの日はソワソワしていたんです(笑)」
2019年11月には、新規事業の一環として、最新鋭の技術が詰まった未来型ライブ劇場“harevutai”をオープン。配信ライブ設備が整っている会場は、コロナ禍にあって注目を浴びるとともに、どんな状況でもエンターテインメントの火を絶やさないという覚悟と希望の象徴ともなりました。先見の明があったのです。
檀原「今となっては当たり前になったライブ×配信に、コロナ禍の前に振り切ったのが“harevutai”。かつてライブ会場でCD即売をしていたときに、遠方から足を運ぶお客さんの姿を見て感じていた、ライブがもっと身近なものになったらいいのにという想いがヒントとなったんです。
緊急事態宣言下みたいな制限がある中でも配信であればライブはできるし、物理的に収容人数が増やせなくても、配信であれば望む人すべてが好きなアーティストのステージを観ることができる。さらには、インタラクティブ(双方向)コミュニケーションも楽しめますから。エンターテインメントの新たな可能性を示せたと思います」
また、グループ会社であり、ディストリビューターとしてインディーズシーンのヒットやアーティストの成長を支えてきたPCI MUSICが手がけるアーティスト総合支援プラットフォーム「bazoo(バズー)」(https://bazoo-music.com/)が、10月より本格始動しています。
檀原 「音楽配信のディストリビューションを軸に、プロモーションやマネジメント、著作権管理、SNS運用、CDリリースなど、あらゆるアーティスト活動を総合的に支援するサービスです。従来は制作スタッフがライブハウスで演奏を聴いたり、YouTubeで検索したり視聴したりしていたアーティスト発掘という業務をデジタル化するという狙いもあります。
新規事業の立ち上げって、不確実性が高く常に緊張感が漂う一方で、刺激的でもあって。これまで積み重ねてきた経験値、培ってきた人間関係、インプットしてきた知識などをフル活用する必要があり、とても醍醐味があります」
多様な人材が能力を最大限発揮できる会社を目指して
2016年からは、経営企画部での業務に加え、HR戦略室で人事制度改革や組織・人材開発にも取り組んでいます。
檀原 「会社は人で成り立っているので、突き詰めると経営戦略と人事戦略は一体化していないと意味がないと考えています。そうした意味で、経営企画部とHR戦略室を兼務できたことは僕にとって非常に良かったです。社員それぞれが日々の業務や会社に対してどんな想いを抱いているかを汲み上げながら、全社的な制度設計を考えています」
英会話、MBA取得、海外研修など、学びたい人のために会社が費用負担する支援制度も充実させ、自身も仕事をしながら早稲田大学大学院経営管理研究科に通い、MBA(経営学修士号)を取得しました。
檀原 「2019年から2年間、大学院に通いまして。平日は週3~4くらいのペースで、18時50分から22時まで授業を受けて、その後もグループワークや懇親会があって。さらに、週末は朝9時から21時までびっちり授業や課題があるし、もちろん通常業務もあるわけで……さすがにその期間は、寝る時間がなかったです。
同時期に大学院に通ってMBAを取得した社内の先輩方とは、『本当によく頑張ったよね』って褒め合いました(笑)。
ただ、好きなことのために学ぶっていうのは自分にとって最高に楽しいことなんです。制度設計や人材育成を考えるにあたっても、大事にしたいのはその人の中にある“好き”の気持ち。歯を食いしばって努力するのも大事だと思いますが、好きで時間を忘れるくらい熱狂している人は努力とは比べものにならないくらい強いと思います。
よく、好きなことで食べていくなんて甘い考えだ、っていうのを聞きますが、これからは好きなことじゃないと食べていけない、それぞれが好きなことの専門性を高めていく時代だ、と僕は思っているし、そういう人たちが力を発揮できる会社にするというのが今後の大きなテーマでもあります」
ビジネス環境の変化へ対応するため、多様な人材、多様な働き方が今後の鍵になると判断。介護支援や育休制度といった就業規則を改定したあとは、これまでの年功序列型からパフォーマンスや役割が給与に反映されるミッショングレード制に変更したり、給与テーブルや評価分布を全社員に可視化することで透明性と納得感を追求しました。
また、場所や時間に縛られずそれぞれにとって最適な環境でストレスなく働くことが大きな成果へとつながる、という考えは社員と会社の信頼を深め、好循環を生むことになります。
檀原 「CDやDVDといったパッケージが売れていた時代は、全社一丸となって同じ方向を目指す同質性が武器になっていたと思うんですけど、デジタル化とグローバル化によってコンテンツの形やコンテンツをお客様に届ける方法が多様化し、自分たちも多様化していかないと対応しきれないなという危機感が5年前くらいからありました。
会社を抜本的に改革していくコーポレートトランスフォーメーションはまだまだ道半ばで、一筋縄ではいかないということは痛感しています。でも、だからこそ燃えるんです。
ひとつひとつの作品をお客様に届け、いかに最大化するかを考え抜いた7年があった上で、会社全体を俯瞰して、分析、提案、改善を繰り返してきたこの5年。知識と経験を積み重ねて、課題解決できる領域が広がったと思うので、それを今後に活かしていきたいです」
自身の成長を実感している彼は今、中堅社員が集まって作り上げた長期計画“VISION2030”の実現に向けても、意欲を高めています。それぞれが個性を活かし、楽しんで仕事に向き合い、豊かな人生を過ごせる会社作りを目指して。檀原の挑戦は、まだまだ続きます。
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