農学から金融への畑違いの挑戦。業務改善に取り組む中で見つけた、私がここにいる理由
かんぽ生命の運用審査部で、一般職として働く井上 文乃。2019年の入社以来、投融資先を審査するチームの一員として活躍し、業務の効率化にも取り組んできました。大学で学んだ農学とは畑違いの金融の分野で挑戦する中で見つけた、自分の存在意義について話してもらいます。【talentbookで読む】
投資判断に必要な資料・データ作成だけでなく、VBAで業務効率化にも貢献
井上が所属する運用審査部は、投融資先に対する社内格付の付与や、投融資案件の審査、資金運用を委託するファンドの運用者評価などを行う部署。在籍する25名のうち、一般職は井上を含め2名のみで、主に資料やデータ作成にかかる事務を行っています。
井上 「運用審査部では、業務内容によって担当ラインが分かれており、私は、産業審査担当、金融審査担当、ストラクチャードプロダクツ審査担当の3ラインの事務を担当しています。産業ラインは主に事業会社の動向、金融ラインは銀行などの金融機関の動向、ストラクチャードプロダクツラインは、太陽光発電プロジェクトや石油・商社といった企業の事業活動の変化をそれぞれモニタリングしています」
井上ら運用審査部が作成した資料やデータをもとに信用力判断を行い、他部署がかんぽ生命として投資を行うかを判断します。多額のお金の動きに関わるだけに、責任ややりがいが大きな仕事。「データや資料を渡した担当部署から、『ここに投資しました』という連絡があると、自分の作成した資料が少しは役立ったのかなと思いますね」と笑顔を見せます。
審査業務とは別に、井上はVBA(※)などを使用した業務改善にも積極的に取り組んできました。
※VBA…Visual Basic Applications の略で、主にExcellやAccess等のMicrosoft Office製品に搭載されているプログラミング言語。活用することで定型的な業務の自動化が可能となる。
井上 「VBAを使ったこれまでの代表的な業務改善例はふたつあります。ひとつは四半期に一度、複数のExcelファイルを参照しながらまとめていたパワーポイントの資料をクリックひとつで作成できるようにしたことです。もうひとつは、毎日の資料作成に係る作業の改善・簡略化です」
中でも、後者の効果はとりわけ高かったといいます。
井上 「投資している企業の株価や財務状況等を情報端末から取得して資料を作るんですが、それだけで膨大な情報量になっていて、整理する必要があると感じていました。そこで、たとえば“株価の上昇率が高い企業”、“株価の下落率が高い企業”という具合に、わかりやすく簡潔に表にまとめられるようVBAで自動化したんです。
これらの改善策を実施したことで、以前は10分前後かかっていた資料作成が、ものの10秒もあれば作成できるように。周りのメンバーからも『毎日の作業がすごく楽になった!』と喜んでもらえて、役に立っていることを実感できました」
組織の中で役立つ存在になることが、やがてお客さまへの貢献につながる
井上が業務効率化に取り組んできたことの背景には、DXの推進という全社的な取り組みの一環として、RPA(※)の本格導入が開始されたことがありました。
※RPA…Robotic Process Automationの略で、ロボットによる業務自動化の取り組み。パソコン上の作業手順を記憶させることで定型的な業務を自動化することが可能となる。
井上 「私が入社した2019年にRPAを導入する、という全社的な動きがありました。ただ、作業を進める中で『RPAの導入が有効の場合もあるが、よりハードルが低く事例も多いVBAでも処理できるのでは』という意見があり、部署内ではVBA導入を進めることになったんです。とはいえ、VBAを使える人はほとんどいない。そんな状況を見かねた先輩が、VBAの勉強会を開催してくれたんです」
もともと学生時代にExcelの基本的な使い方はマスターしていたという井上。それでも、VBA習得には一から取り組む必要があったといいます。
井上 「全6回の講座で、VBAの概念やどんなことに使えるのか、といった基礎から実践的な使い方まで、先輩からていねいに教えてもらいました。貴重な時間を割いて教えてもらっていたので、無駄にしてはいけないという思いから何度も復習しながら実践力を身につけていきました」
真剣に取り組んだ結果、井上はVBAをマスター。その後、すぐに実践して業務課題を発見し、効率化につなげることができました。
井上 「参照する資料を探す時間が大幅に短縮されたことに加え、入力を自動化したことで入力ミスも格段に減少しました。また、VBAは広く使用されているので、わからないことがあっても少し調べればすぐに解決策がわかります。あらゆる面で業務に大きなメリットが生まれたと感じています」
「誰かの役に立ちたい」という想いを持って入社したという井上。今は「組織の中で自分ができることは何か」と絶えず自分に問いかけているといいます。
井上 「諸先輩方から本当にていねいに業務を教えてもらったことで、入社時に抱いていた『誰かの役に立ちたい』という想いはいっそう強くなりました。職場に恩返しすることが、ひいてはお客さまに貢献することにつながると思って日々の仕事と向き合っています」
何がどこで活きるかわからない。自分だからできることで職場に還元したい
現在、恵まれた環境のもとで、充実した日々を送っているという井上。学生時代の経験から、就職活動中は、仕事もプライベートも充実させたいという思いで就職先を探していたと話します。
井上 「大学で専攻していたのは農学。生物系の研究室で、卒業間近まで大学に通って研究にいそしみ、なかなか自分の時間を持つことが難しい多忙な日々を送っていました。そんな学生時代を過ごす中、社会に出たら仕事とプライベートを調和させることを大切にしていきたいという想いが強くなっていったんです」
とりわけ生命保険会社の充実した福利厚生に関心を持ち、中でも、かんぽ生命の面接で感じた、親しみやすい雰囲気に惹かれたという井上。最初は不安もありましたが、畑違いの職場で働くことを今は前向きに捉えられていると話します。
井上 「最初は本当にやっていけるか不安な面もありましたし、実際、配属されたばかりのころは、経済の知識がないために、職場での話についていけないこともありました。
でも今は、必ずしも自分が大学で学んだことを仕事にする必要はないと考えています。私の場合は、大学で研究データをまとめるのに使っていたExcelの知識やスキルに助けられましたが、誰にでも同じことが起こりうると思っていて。何がどこで活きるかわからない、そのことに気づけたのはこの職場にいるからこそ。私のように大学で経済の勉強をしていない方でも、思い切ってチャレンジしてほしいですね」
横断的に社員と関わる事務の立場を活かし、頼られる存在になりたい
2022年で入社4年目を迎える井上。あらためてこれまでを振り返ったとき、諸先輩方への感謝の気持ちがいつも思い出されます。徹底して親身になって指導してくれる職場の諸先輩方からは一度も「怒られた」と感じたことがないという井上。
井上 「何か間違えがあったとしても、怒るのではなく、何が原因なのか、次は何に気を付けるといいのかを一緒に考えてくれました。そのうえでこちらから自発的に行動することで感謝してもらえて。そういうことがあったので、『その人のために返したい』『役に立ちたい』という想いが強くあります」
そう話す井上の今の目標は、横断的にさまざまなラインの社員と関わる事務の立場を活かして、これまで教えてもらったことを職場に還元していくこと。
井上 「運用審査部では個人で仕事を進める場面も多いです。そんな中、私は複数のラインの事務作業に携わっているので、それぞれのメンバーと関わる場面が多いんです。たとえば『ここまでデータを計算して値を出すのをお願いしたい』『こういうデータベースはありませんか?』という具合に、さまざまなところから声がかかります。身近な人に寄り添って仕事がしたいという想いがあるので、一つひとつ、大切に取り組んでいます」
そのためにも、助けがほしいときに迷わず「井上さん、お願いします」と頼ってもらえるような存在になりたいという井上。自身の経験を活かし、運用審査部にとどまらず運用部門全体の社員のスキルアップにも貢献しています。「今後も頼ってもらった分をきちんとお返ししていけるよう、さらなる学びを重ねていきたい」と話します。
井上 「先輩が開催したVBAの勉強会を、今度は私が主催して運用部門全体に規模を拡大して実施したんです。運用審査部以外にもVBA活用の輪が広がれば嬉しいなと思います。今後は運用に関する知識や理解をさらに深め、自分の仕事が投資にいたるまでの全体の流れの中でどのような部分を占めていて、どう影響していくのか、よりクリアにしていきたいと思っています。そうすることで、新たな業務課題が見つかれば、組織に貢献できることも増えていくのではないでしょうか」
畑違いながら、いや畑違いだからこそ、自分にできること、自分だからできることを模索し実践している井上。彼女のような存在が、新しい企業価値を生み出していくことになるのでしょう。