コミュニケーションデザインで想いをつなげ、Hondaブランドの価値を高める
モビリティに単なる乗り物を超えた体験価値が求められる今、「デザイン」が果たす役割はますます重要になっています。とくに新たな職種として着目されるのがコミュニケーションデザイナーです。社内外の想いをつなげ、Hondaブランドの価値を高めようとするふたりのデザイナーに仕事のやりがいを聞きました。【talentbookで読む】
コミュニケーションデザインが求められる現場
大富部:われわれはこれしかやりません、というルールがあまりなく、社会とHondaと人をつなぐ可能性があるものであれば、フレキシブルに対応しています。
こう語るのは、デザイン開発推進室コミュニケーションデザインスタジオの大富部。同部署は、主にデザイン視点によるHondaのコミュニケーションデザインを担っています。大富部自身もアウターブランディングからインナーブランディングまで、多様なプロジェクトに参加してきました。
大富部:とくに近年の仕事で印象に残っているのは、江崎グリコ株式会社様(以下グリコ様)とコラボレーションした「2代目グリコワゴン」ですね。グリコワゴンは、子どもたちのすこやかな成長を願い、日本全国の学校や被災地を巡り、子どもたちに笑顔を届けるグリコ様の社会貢献活動です。2代目グリコワゴン製作についてHondaの社会貢献推進室に相談が来て、デザインセンターもお手伝いさせていただくことになりました。
新しいグリコワゴンは、外観だけでなく“体験”のデザインにこだわったと言います。
大富部:子どもたちに笑顔を届けるにはどういう形にすべきか、どういう仕掛けがあれば、子どもたちが喜んでくれるかを、コンセプトからグリコ様と一緒になって探索したのが印象に残っています。
コミュニケーションデザインの知見が生かされるのは、こうしたモノ・コトづくりの分野だけではありません。Hondaでは、ロゴやグラフィックなどのヴィジュアルアイデンティティ(VI)も自社で内製していて、ステークホルダーを意識したデザインを行っています。
大石:私の所属するクリエイティブソリューションセンターでは、経営理念体系を含むブランド戦略や、発信戦略の立案を担っています。とくに私が担当しているのは、コーポレートブランディングをはじめ、製品へ展開するロゴやビジュアルの作成。ほかに統合報告書やESGデータブックといったIR資料のデザイン監修なども行っています。
とくにクリエイティブソリューションセンターでは、昨年からHondaが作る多様なコミュニケーションツールのデザインを統一する取り組みを加速させていて、取り扱う案件も多くなっています。
大石:仕事にスピード感があり、昨日まで作っていたものが明日には世の中に公開されているなんてこともあります。その一方、数年先の発表を見据えて綿密に取り組んでいるプロジェクトも。忙しくも充実した日々を過ごしていますね。
社外で得た知見をHondaで生かす
所属は異なるものの、共にデザインスキルを生かしてHondaで働くふたりは、奇しくも同じ高校の出身。美術大学の付属高校で、10代のうちからデザインの道を志していたと言います。
大富部:大学では洋画を専攻していたのですが、実際に手を動かす美術職ではなく、自分が好きなものに携われる環境で、学んだことを生かしていきたいと考え、卒業後は二輪関係の商社に入社しました。車やバイクは家族の影響で興味があり、乗っていました。
商品パッケージのデザインだけでなく商品企画、広報など幅広い業務経験を積んだ大富部は、その後台湾を拠点とする日系のPR会社に転職します。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、帰国を検討しました。
大富部:そんなタイミングでHondaのコミュニケーションデザイナー募集を見つけたんです。業務内容もこれまで経験してきたことに近く、せっかくなら、好きな分野で仕事をしたいと思って応募しました。けれど正直、Hondaは自動車好きからしたら憧れの存在。まさか採用してもらえるとは思っていませんでしたね。
一方の大石も、大学卒業後、化粧品メーカーや光学機器メーカーで、デザインスキルを生かした多様な業務を経験してきました。
大石:Hondaとはまったく違う業態ではあるのですが、デザインを通じてブランドを育てるような仕事をしたいというのがキャリアの軸にあったんです。モノづくりから、ロゴなどのグラフィック周りまで広い視点でデザインを行ってきました。
順調なキャリアを歩んでいた大石でしたが、自家用車の購入を検討するためにディーラーを訪れたことをきっかけに、Hondaに強い関心を持つようになりました。
大石:Honda e のデザインを見た時に、それまで思っていたクルマとはまったく違うものが現れたと思いました。コンセプトカーのようなデザイン・性能のクルマが実際に乗れるものとして目の前にあることに衝撃を覚えましたね。
Hondaは、単に電動化を進めるだけでなく、「乗り物」としての価値に加えて「空間」や「クルマで過ごす時間」など、より幅広い視点で新しい価値をユーザーと一緒に作っていこうとしていく意志を感じました。コミュニケーションデザインの観点がクルマ作りにますます必要になっていくのだろうと感じたんです。
実際にそのころのHondaは、ブランドデザインの専門家を採用し、ブランディング機能を拡張していこうとするタイミングでした。その気運が、大石の転職を後押ししたのです。
壮大な仕事に挑むからこその困難とやりがい
それぞれにとってHondaへの転職は大きなチャレンジでした。しかし、入社後は自分の経験を生かす確かな手応えを得ています。
大富部:入社して最初に取り組んだのは、オートサロン(※)のブースの世界観やレイアウトの提案でした。途中から参加したプロジェクトなので、すでに大枠は決まっていましたが、前職で培ってきた知見を生かし商品を良く見せるための工夫など意見を出させてもらい、より良い展示に貢献できたと思います。
※ チューニングカー ・ カスタムカー の祭典とも呼ばれる モーターショー
実力を示したことで、その後も社外イベントや、社内展示に関する業務をどんどんと任されるように。大石も会社の“自由度”が活躍の機会につながっていると話します。
大石:計画されたものを淡々とこなすというよりは、大きな裁量を与えてもらい自分で計画を考え実行していくのがHondaの仕事のやり方ですよね。入社して間もない身ながら、プロジェクトリーダーを任せてもらっています。
ただしスピードも求められますので、プレッシャーも感じますね。しかし、周囲の人に相談すれば、皆さん自分ごと化してサポートしてくれるのでとても助かっています。
一方で、Hondaだからこその難易度を感じることもあります。
大石:熱意を持っている人が多いからこそ、それぞれの想いを束ねてブランディングしていく困難さはあります。いろんな人がいて、いろんな夢があるけれど、ブランドとして掲げる目的はひとつです。難しさと同時にやりがいを感じるポイントですね。
大富部:プロジェクトを進行する意味でも、人の巻き込みは大事ですね。大きな仕事に挑むからこそ、一人ひとり仲間を増やして困難に立ち向かっていかなければなりません。ロールプレイングゲームみたいですね(笑)。
大石:確かに仕事の大きさが、Hondaならではの難しさとやりがいに影響しています。20年、30年先の未来を見据えて取り組むプロジェクトもあります。今取り組んでいるものが何年先でも“古く見られない”ようにする工夫や、逆に言えば長く愛されるものになるように計画していく必要があります。かなり長いスパンでブランドを見つめながらプロジェクトに取り組んでいるんです。
コミュニケーションデザイナーとして大切にする社内との向き合い
Hondaが新たな価値を社会へ提供していくにあたって、デザインの力が必要とされるシーンはますます増えていくでしょう。コミュニケーションデザイナーへの期待が高まるなか、ふたりは自らが果たすべき役割についてこう語ります。
大富部:Hondaはクルマやバイクだけではなく、ロボット、ジェット機など幅広い商品を開発しています。コミュニケーションデザイナーとして、お客様にHondaの商品やサービスの魅力を体験いただけるような機会を提供していきたいと思います。同時にコミュニケーションデザインの大切さを、社内の人にもより深く理解してもらえるよう発信していきたいですね。
大石:私もコミュニケーションデザイナーとして社内との向き合いを大切にしたいですね。コミュニケーションデザインは、お客様とのタッチポイントを意識して作られていくものです。しかし、その工程には社内の仲間の想いを汲み取った編集作業が必要だと思っています。
社員それぞれが持つ仕事に対するエネルギーや「こんなものを作りたい」という意思をできるだけ尊重しながら、向かう先をひとつに導いていかなければなりません。自分たちが伝えたいことを整理して、Hondaブランドの姿として魅力的な形でお客様に伝えていく、まさにそれこそが私が仕事を通じて実現したいことでもあります。
自分たちがデザインを通じて伝えるべきものはなんなのか──デザインの前提となる人の想いを大切にするふたりだからこそ、Hondaにおけるコミュニケーションデザイナーのあるべき姿を示していけるのかもしれません。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです
本田技研工業株式会社
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