モノづくりを支えるのは“人づくり”──瑞宝章受章者が語るボッシュの底力 | キャリコネニュース
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モノづくりを支えるのは“人づくり”──瑞宝章受章者が語るボッシュの底力

2023年秋の叙勲で瑞宝単光章を受章した、モノづくり人材育成室の中磨(なかま) 成己。国家技能検定の事務局を担当し、長年にわたり地域社会に貢献してきた功績が認められました。「三現主義」を大切にモノづくりと向き合ってきた中磨と、共に働く石下 晋平、石田 浩資が、日本のボッシュにおけるモノづくりの強さの本質を語ります。【talentbookで読む】

技能検定に携わり30年。社会への貢献が認められて瑞宝単光章を受章

公務や公共的な業務に長年従事し、功労を積み重ねた人を表彰する「瑞宝章」。2023年秋の叙勲で、ボッシュのモノづくり人材育成室に所属する中磨が瑞宝単光章を受章しました。

受章の背景には、中磨がこれまで国家検定制度である技能検定(※)に長年携わってきたことが挙げられます。技能が高ければ認定されるのではなく、キャリアを通した社会とのつながりが着目されます。

モノづくりの経験を活かした指導員から始まり、2001年以降は検定委員を務めた中磨。現在は技能検定の事務局として、年2回の試験に向けて社外の方を含む受検者の募集や取りまとめ、検定委員や指導員と連携しての勉強会の企画・実施などを担当しています。

※ 働く上で身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する国家検定制度。全部で131職種の試験がある

ボッシュで瑞宝章を受章したのは、中磨が3人目。「次は自分の番かなと思っていました」と笑顔で話します。

中磨:以前受章した2人も技能検定に携わっていたので、「いずれは私も受章できるかもしれない」と予想はしていました。いざ受章してみると、「私も随分長いことやってきたんだな」と感じます。技能検定には、30年近く関わっていますから。

受章を知った同僚やOBから「おめでとうございます」と言ってもらいましたが、とくに実感はありません。仕事の一環としてやっていることですから、これからも今までと同じように取り組みます。

中磨自身は淡々と語っていましたが、モノづくり推進室リーダーの石田や上司の石下は、「受章はモノづくり人材育成室にとっても誇らしいこと」と話します。

石田:中磨さんは真面目に仕事に向き合っていて、とても頼もしい存在。一緒に仕事をする仲間として本当にうれしく思います。みんなの励みになりますし、ボッシュから受章者が出ることで会社の魅力が認知されて、中磨さんに続く優秀な人材が育つことにもつながると思います。

石下:ごく限られた人数しか受章できない章ですから、自分たちの活動が形として認められたというのは、とても誇らしいことです。

今回の受章は、中磨さんの地域社会への貢献が評価されています。技能検定は他社の受検生の受け入れもしていて、検定に向けた練習会なども実施しています。ボッシュだけではなく、社会に貢献していると認められたことが素晴らしいですよね。

「三現主義」と「有言実行」をモットーに、モノづくりの道を歩む

中磨が入社したのは1979年。最初の配属先は会社内の設備の保全を担当する部署。当時の先輩たちがさまざまな検定を取得していたことで、技能検定について知ったと言います。

中磨:技能検定には3級から特級まであり、受検のためにはそれぞれ必要な実務経験年数が定められています。私もその年数を満たしてからは、たくさんの技能検定を取得しました。

長年モノづくりに携わり、60歳で定年後も再雇用制度により活躍を続けている中磨。仕事をする上で大切にしてきた2つのポリシーがあります。

中磨:一つは「三現主義」です。三現とは、「現場・現物・現実」のこと。これは保全業務をしていたころから変わらず大切にしています。何か起きた時は現場に行って現物を見て、どこにどう不具合が起きているのかを確認して指示を出す。まさに「百聞は一見にしかず」で、自分の目で見ることが重要です。

もう一つは「有言実行」。思ったことはできる限り実行することを心がけています。達成できなくてもいい。何事も行動に起こすことが大切だと考えています。

この中磨のポリシーは、普段の仕事ぶりに現れていると石下と石田は話します。

石下:フットワークが軽いんです。困ったことがあって中磨さんに相談すると、「じゃあ見に行ってみよう」とすぐに動いてくれます。

石田:たとえば製造現場を借りて新しい研修を始めるとなれば、その現場に足を運び、何があって何が足りないのかを自分の目で見て、その部署の担当者に確認したりしています。そういった行動は、まさに三現主義で有言実行ですよね。

また、長いキャリアを持ちながらも親しみやすい人柄の中磨は、モノづくり人材育成室にとって欠かせない存在です。

石下:本当にいろいろなことを知っていてネットワークも広いんです。さらに、重い空気になりそうなときには、パッと明るいことを言って和ませてくれる。私たちの大先輩ですが、気軽に話ができて相談しやすいので、頼りにしています。

モノづくりの根幹は“人づくり”。人材育成を通して会社に貢献する

中磨たちが所属しているボッシュのモノづくり人材育成室は、「核となる技能を実践できる人材を育成すること」をミッションに立ち上げられた部署。育成をする過程で、大きく3つの機能を持っています。

石下:まずは新入社員から製造現場の監督者に至るまでの階層別教育を行うこと。次に、固有技能の伝承。そして、自己啓発のサポート。この3つに関わる研修で、年間400~500人ほどが受講しています。私たち自身が講師をすることもありますが、主に事務局として研修のコーディネートをする役割です。

石田:私が担当しているものを例に挙げると、安全に関する研修があります。安全に作業するために必要な資格取得に向けた研修や、TWI監督者訓練という生産現場の監督者に必要とされる仕事の教え方や部下の育成力を向上させる訓練などがあります。

その中で、技能検定以外にも新入社員研修を担当している中磨。若手社員の育成という重要な役割を担っています。

中磨:入社してすぐに事務系の部署に配属される社員もいますが、ボッシュはモノづくりをしているメーカー。モノづくりの大変さや重要性を学んでもらうため、新入社員は配属前に現場を体験する研修を実施しています。

実際に金属を削って加工してみたり、誰もが同じように組み立てるためにはどんな作業指示書を作成すればいいのかを考えたり、自分で経験してみることが大事です。

新入社員以外にも、ステップアップのための研修が用意されているボッシュ。たとえば入社2~4年目の社員には、工具の使い方をはじめとして、自主点検や電気系・機械系作業に対しての基礎教育と実技訓練を25科目(27日間)の研修があります。

このように、技能を実践できる人材を育成するため、必要な研修を必要なタイミングで受けられる体制を整えていることが、ボッシュのモノづくりの強さだと石下は話します。

石下:モノづくりの根幹は“人づくり”。モノづくりができる人を育てることこそが、会社の底力です。

人材育成は、会社への貢献度が数字で表しにくい分野です。でも、私たちは“人づくり”で会社に貢献していると自負していますし、“人づくり”こそボッシュの強さだと信じて仕事をしています。

時代に合わせて伝承する技能や教育も変化する。経験を積める環境づくりをめざして

“人づくり”がモノづくりの根幹であると信じて日々仕事に取り組む3人。時代に応じてモノづくりの方法や工程が変化していく中、技能を揺るぎなく伝承しながら、人を育てる方法は変化させていくことが必要だと語ります。

石田:これまでは一人ひとりの技能向上を主軸にしていましたが、これからは育成する側の人材、技能を伝承できる人材を育てていくことが私たちの大きな役割になっていくはずです。

モノづくりには“カンコツ作業”といって、熟練の職人ならではの勘とコツが必要な部分があります。身につけるためには「現場・現物・現実」で根気強く訓練することが必要ですが、その技能の伝承も私たちの役割です。

石下:それに加えて、求められる技能が変わってきていますから、伝承する技能や行うべき教育を取捨選択していく必要があります。

たとえば、工場では加工して組み立てて出荷するという流れがありますが、加工の工程が減ってきています。簡単な加工であれば海外で行い、組み立てを日本で行うというケースが増えているのです。そのため、加工の中でも複雑な技術が必要なものをどう教育して伝承するかを考えなければいけません。

もちろんデジタル技術による変化もありますから、いま現場に何が必要とされているかを見極めていくことが大切です。

技能検定に関わる中で、他社も含めた多くの若手社員と接してきた中磨は、研修や勉強会に参加しやすい風土も大切だと言います。

中磨:目の前の仕事がある中で、研修の時間を捻出したり、参加したいと手を挙げたりすることが難しい状況もあると思います。そんな時に、上司が「研修に行っておいで」と背中を押してあげられるといいですよね。そういう意味では、石田さんが言ったように教える側を育てることが大事です。

長年モノづくりと技能の伝承に携わってきた立場から、若手社員やこれから入社する人たちに伝えたい想いもあります。

石田:私はいつも、4つの「こうどう」が大事だと話しています。

1つめは、中磨さんのモットーでもある「行動」。2つめは私の造語で、「公動」。まずは上司や先輩から指示を受けたことをできるように努力しなさいという意味です。3つめは「興動」。辞書に書いてある意味とは少し違って、何でも興味を持って動くことです。最後は、自分で考えながら動く「考動」。

4つの「こうどう」を実践しながら、自分がスペシャリストをめざせるものを何か一つ見つけてほしい。それが次のステップへのきっかけになり、自信につながるはずです。

中磨:そうですね、やはり行動あるのみ。経験しないと見えないものもありますから、何事も自ら進んでチャレンジしてほしいです。行動することで社内外に仲間や知り合いも増えていきます。そのつながりも大事にしてもらいたいと思います。

※ 記載内容は2023年12月時点のものです

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