本質を見つめ、常識も変化も恐れないーー 元・エンジニアが描く理想のCS | キャリコネニュース
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本質を見つめ、常識も変化も恐れないーー 元・エンジニアが描く理想のCS

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設立以来、顕著な成長を遂げてきたアンカー・ジャパン。事業拡大に伴い、日々顧客とのコミュニケーションも増加しています。その窓口となるのがカスタマーサポート。元エンジニアという異色の経歴を持つ伊藤 世由(いとう・ときより)は自身の経験に基づき、新たなカスタマーサポートのスタイル構築に挑んでいます。【talentbookで読む】

急速に”ソフトウェアの時代”にシフト 将来が不安になり新卒で入った会社を退職

幼い頃から、自宅に80年代のマッキントッシュなどのデバイスに囲まれて育った伊藤は、父親から受け継いだエンジニア気質に導かれ、自らも電子工学研究の道に進みます。

伊藤 「半導体や回路設計など、エンジニアリングが大好きでした。ワクワクするんです、自分で考えてモノをつくることが。大学院で電子工学を研究し、卒業後はファブレスで半導体集積回路をつくるベンチャー企業に就職しました。職種はエンジニアでしたが、とにかく何でも自分で挑戦できる会社でしたね」

開発設計が担当ではあったものの、会社自体のビジネスモデルとして、エンジニアが営業、マーケティング、顧客訪問にも携わることができました。当時は液晶テレビが急速に普及をはじめていた頃で「最先端のトレンドに携われている手ごたえがあった」と伊藤は振り返ります。

伊藤 「仕事を通じて、エンジニアリングの本質は “お客様の課題を解決すること”だと気づいたんです。自分の手でそれを実現できるのが、エンジニアという仕事の醍醐味だと思います」

やりがいを持って働いていた伊藤でしたが、徐々にさらに高い視座を持つようになっていきました。

「モノをつくってソリューションを提供するだけでなく、市場をドライブさせるような挑戦をしたい」

「組織が良くなれば企業の成長につながり、結果的にもっと市場に価値を送り出せるのではないか」

エンジニアの仕事は楽しい。でも、できることは限りがある。そんな葛藤を抱える伊藤に、トレンドの変化という現実が突きつけられます。

伊藤 「2000年代も後半になると、クラウドサービスやスマートフォンが登場しはじめました。半導体=ハードウェアから、形を持たないソフトウェアへと、世の中が急速にシフトしつつあったんです。『このままでは、自分はこれから来る波に乗り遅れるんじゃないか』と感じるようになりました」

半導体のニーズがなくなったわけではないし、市場も成長を続けている。だけど、何かが違う。何かが、決定的に変わりつつある……。焦点を結びきらない危機感。明確な答えが見えない不安。新しさを希求する焦燥と、自分は遅れているのではないかという劣等感。

そして伊藤は「このままではいけない」と決意し、退職しました。しかし次の就職先も、具体的なプランも持たぬまま「人生が見えなくなって立ち止まってしまった」のです。

エンジニアとカスタマーサポートに共通する「顧客の課題を解決するワクワク感」

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会社を離れた伊藤は、起業や執筆活動に興味を持ちつつも、いわゆる “ニート”のような時間を送っていましたが、生活資金の底が見えはじめたことをきっかけに、あくまでも副業として会社員に戻ります。

再就職先は、2011年7月に控えていた地上デジタル放送完全移行に関わるカスタマーサポートセンター。後に数千名規模のオペレーターが集う巨大組織の立ち上げに向け、テクニカルサポートというポジションで携わることになりました。

伊藤 「そのカスタマーサポートセンターには、普通のお客様から技術者まであらゆる方面から問い合わせが寄せられます。一般の方にチャンネル設定の説明をしたり、アンテナ設置業者の方には電波受信や機器設定の説明をしたり。幅広い対応を担う立場でした」

エンジニアとは両極端にあるかのようなカスタマーサポートの仕事。ところが、伊藤はこのふたつが共通項で結びついていく不思議な感覚を覚えました。

伊藤 「カスタマーサポートには、情報のインプット・整理・解決策の提案という3ステップがあります。エンジニアはモノをつくる。カスタマーサポートは説明する。手段が異なるだけで本質は同じじゃないか、と思いはじめ、自分のなかでそのふたつがぴったりと重なってしまったんです」

伊藤の胸には “お客様の課題を解決するワクワク感”が再びよみがえってきました。同時に「市場をドライブさせたい」「組織を高める仕事をしたい」という挑戦への情熱も――。

伊藤 「一旦すべてリセットしてちゃんと働こう、と思いました。企業の組織に属してもう一度やり直そうと決め、外資の家電メーカーに再就職したんです」

エンジニアの知識とカスタマーサポートの経験を買われ、伊藤は同社の日本市場におけるカスタマーサービス改善というミッションを担うことに。

伊藤 「有機ELテレビを代表とする最先端の黒物家電から、冷蔵庫や洗濯機の白物まで、製品の品質問題解決全般に従事しました。持ち込み、出張問わず修理サービスも管理しましたし、本社のエンジニアと連携しながら改善に奔走しました」

そして2017年9月、伊藤はアンカー・ジャパンに入社。どこにもない、誰も見たことのない新しいカスタマーサポートの構築を目指す挑戦へと踏み出します。

上司・部下は関係なく全員が権限・裁量を持つ「理想のカスタマーサポート」へ

実は、入社の誘いを受けるまでAnkerを知らなかったと言う伊藤。しかし、そのビジネスモデルや高い成長性、それに伴う課題と、自分の想いや価値観はとてもフィットしていると感じました。

伊藤 「覚悟を決めて、えいっと飛び込みました。当時、特に大きな課題だったのが各方面のコミュニケーション。本社と日本法人間だけでなく、チーム内のコミュニケーションにも改善の余地があるように思われました」

コミュニケーションに問題があるのは、適切な改善活動が行なえていないから。伊藤はさっそく実情の把握と改善に向けた取り組みに乗り出します。

たとえば、新たなシステムやツールで課題を改善できるなら、迷わず導入。必要とあらば自ら開発することもありました。伊藤がもっともこだわりを持って臨んだのは、組織構造の改革です。それは、カスタマーサポートに対する常識や既成概念を打ち破るチャレンジでした。

伊藤 「窓口を務めるオペレーターがたくさんいて、そのうえでマネージャーが統轄していくピラミッド構造の組織にしたくなかったんです。理想は、スタッフ一人ひとりが有機的に存在している状態。一般的なコールセンターのように、職位が上がるにつれて裁量や権限が増えていく仕組みを打破しようと考えました」

アンカー・ジャパンのカスタマーサポートでは、原則として担当スタッフも伊藤も同等の権限を持っています。さらには本社からも自立しているので、スタッフは自分で考えて判断し、自ら問題を解決。必要がなければ、顧客とスタッフ間のやり取りだけでサポートは終了します。

裁量と権限、それに伴う責任もすべてが現場のスタッフに与えられている環境。伊藤はそんな理想を追い求め、つくりあげようと考えています。

アンカー・ジャパンでは、問題を解決するために、次々と職位の高いスタッフへと話を先送りにしていくような事態は起こりえません。問い合わせをした顧客にとっては、スピーディに問題を解決できる。受け手であるスタッフにとっては、責任とやりがいを持って仕事に臨める。合理的でスマートで、互いにとって望ましいカスタマーサポートができあがりつつあるのです。

さらに伊藤はもうひとつ、従来の “正解”にも真っ向から挑むことにしました。

重要なのは最短での課題解決 カスタマーサポートで当たり前だった「傾聴」を禁止

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多くのカスタマーサポートでは、相手の話に対し真摯に耳を傾ける “傾聴”が推奨されています。しかし、アンカー・ジャパンのカスタマーサポートでは傾聴に終止する対応はしません。

伊藤 「私たちの使命の本質は、傾聴ではなく問題解決です。疑問も不満もなくお客様がAnkerの製品をご利用できる状態をキープするのが究極的な理想であって、そのために私たちは何をすべきなのか。少なくとも、すばらしい傾聴スキルを磨くことではありません」

カスタマーサポートに電話をしたとき、最初に対応するスタッフが十分な権限を持って的確な回答を返してくれる。それこそが、問題解決の最短ルートに他なりません。だから、権限移譲。だから、傾聴禁止。伊藤の信ずる姿勢はシンプルです。

伊藤 「企業としてのブランディングやロイヤリティ創出という観点では、傾聴をはじめコミュニケーションによるおもてなしや感動を追求するサービスが必要なのは事実でしょう。しかし、私たちの業務領域には要りません。ダイレクトに、可能な限りスピーディにお客様の問題を解決することがもっとも大切なのですから」

こうした発想が、他のどこにもない斬新なカスタマーサポートの根底にあるのです。

伊藤 「こんな手法を導入できるのは、AnkerのバリューであるRationalism(合理的に考えよう)が生きている結果だと思います。最低限の基本を守っていれば、それ以外は自由。企業成長に貢献するチャレンジには自由を与えられていて、Ankerにとって最適なカスタマーサポートを立ち上げる仕事にやりがいを感じます」

とはいえ、時代や市場の変化はどんどんスピードアップしています。「変化が速いから面白い」と語る伊藤の目は、形のない未来をとらえようと光っています。

伊藤 「独立した固体だったハードウェアは、インターネットによってつながるようになりました。それはさながら液体のように。でも今後はデバイスさえ必要としない “気体化”が進むのではないでしょうか。人が何もしなくても、IoTで物事が進んでいく時代。その結果、あらゆるサービスは今より一層のスピードアップを求められるはずです」

カスタマーサポートも然り。この言葉を裏付け、具体化した姿こそ、伊藤が追い求める組織づくりの答えなのかもしれません。

「カスタマーサポートは、本当に誇り高い仕事」と語る伊藤。エンジニア気質と顧客本位の姿勢、そして限りないチャレンジ精神を推進力として、アンカー・ジャパンのカスタマーサポートは時代の先を見据えた進化を遂げ続けていきます。

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