チーム榎本プロジェクト──新卒2年目マネージャーの奮闘記
エスプール新卒2年目で営業チームの立ち上げ、マネジメントを任された榎本貴仁。メンバーを採用することからはじまり、チームを組成し、日々試行錯誤を繰り返すもなかなか成果がでない。そんな時、営業のプロから受けたアドバイスが榎本の考え方を一転させる。逆転発想の営業手法を確立した榎本が、快進撃を振り返った。【talentbookで読む】
既存事業に変革を!打開策は新卒2年目がマネジメントする若手営業チーム
エスプールのプロフェッショナル人材バンク事業部には、経営のプロとして経験を積んだエグゼクティブから、現場での実績が豊富なミドル層まで7,000名以上のプロフェッショナルが在籍する。
エスプールは、それらの人材と企業をマッチングさせることで、企業のあらゆる課題の解決を支援している。
マッチングと言っても、一般的な“人材紹介”ではない。様々な“経験・ノウハウ・人脈”を持つプロフェッショナル人材を、雇用することなく、必要な期間、必要なタイミングで活用できるのがサービスの特徴だ。
これまでの相談実績は2,000件を超える。働き方も多様化しており、能力を活かして個人で働く人が増えつつある今、成長が期待される事業だ。
サービスはプロフェッショナル人材と企業の「マッチング」。商材はいわゆるモノではない。
営業には、企業の課題を発掘するヒアリング能力やコンサルティング能力が求められ、課題を発掘できたとしても適任のプロ人材がいなければ、サービスは売れない。
また、プロフェッショナル人材の働き方は広がりを見せるが、マッチングサービス自体の認知度はまだまだ低く、絶えず引き合いがあるわけではなかった。
事業に関わるメンバーは、様々な施策をおこなうものの、なかなか拡大への糸口が見つからず、日々悪戦苦闘を強いられていた。
ある日の会議。社長の浦上壮平からひとつの提案が出る。
――今までのやり方が悪いとは言わない。しかし、変化がない。新しい発想を持った若手営業チームをつくり、動かしてみてはどうか?
そこには、ちょうど半年前に事業メンバーに加わった新卒2年目の榎本がいた。
――僕、やります。
すかさず、そう答えた榎本。
2018年、1月。この日から新卒2年目をリーダーとした「チーム榎本プロジェクト」がスタートした。
採用からマネジメントまで 試行錯誤しながらメンバーを統率
榎本は新卒2年目、24歳の若手社員。もちろんマネジメントは初の経験である。ましてやチームの組成、人を採用するところからのスタート。自らの考えでチームがつくれるワクワク感を感じる一方、プレッシャーも感じていた。
榎本 「ターゲットとなる採用メンバーは、自分と同年代の若手社会人。新しい風を吹かせるには、まったく新しい発想を持つメンバーが必要でした。
採用面談では、事業の成り立ちから参画してもらうプロジェクトの目的、チームがつくられた経緯、そして何よりも私自身の思いを、強く訴えたんです」
計30名の採用面談をおこない、チームを活気づける、やる気に満ち溢れたメンバー3名の採用に成功。ここから本格的にプロジェクトが動き出す。メンバーに対して、はじめに与えたミッションは、電話でのアポイント営業だった。
榎本 「サービスの認知度が低い現状、まずはお客様と接点を持つことが必須と考えました。どのように話せば興味を持ってもらえるか、メンバーと積極的に対話をし、トークスクリプトをつくり上げていったんです。
自分にはない新しい観点もメンバーに出してもらいながら、試行錯誤の毎日でしたね」
リーダーとして、榎本はメンバーの管理にも力を入れる。毎日の朝礼で、各メンバーが日々追うべき数字を明確化。また週礼では、各メンバーから週の結果と改善策を発表させることで、主体的に数字を追いかける意識を持たせた。
サービスの特性上、幅広い業界の知識が必要となるため、業界情報共有会を開催したり、営業ロープレを定期的におこない、メンバーのスキルアップを図った。
時には、メンバーそれぞれが思い描くキャリアや趣味の話など、コミュニケーションをとりながら、モチベーションの維持も心がけるように努めた。
成果が見えず士気も下降…… そこから生まれた「逆転発想」とは?
プロフェッショナル人材を必要とする企業は「成長過程にある企業」だと考えた榎本は、ターゲットをIT企業に絞る。
業界構造の理解に努め、ニーズの調査をおこない、IT業界に刺さるであろうトークスクリプトを作成。メンバーに共有し、一斉にテレアポを開始した。
榎本 「なかなかアポイントにはつながりませんでした。『面白いサービスだね』で終わってしまうんです」
このままではまずいと感じた榎本は、現状を打開するために、自らが提供するサービスを活用する。マーケティングやセールスマネージャーとしての経験や実績が豊富なプロフェッショナル人材をアドバイザーとして取り込み、戦略やトークスクリプトの見直しをおこなったのだ。
見直しをおこなう中で、プロフェッショナルからあるアドバイスを受ける。
榎本 「『 IT業界の想定はズレていないし、サービスの説明も悪くない。ただ、エスプールのサービスで具体的に何が期待できるのかがイメージできない』そう指摘されてしまったのです」
この指摘に対し、榎本は「お客様が抱える課題を教えてもらえば、プロフェッショナルを選定して、実際にディスカッションし、活用イメージをもってもらえるはず……」と持論を展開する。しかし……。
榎本 「『それは次のステップじゃない?』そう追い打ちをかけられました。まずは、わずかな時間で興味を持たせ、詳しく話を聞いてみたいというモチベーションにさせなくてはいけない。
そのためには、実際に『どんなプロフェッショナルがいて、どんなスキルを持っているから、お客様にとって価値がある』ということを伝えないといけなかったんです」
既存の営業は「サービス説明→ヒアリング→プロフェッショナル人材の選定→提案」の流れだった。しかし、お客様が本当に欲しいのは「プロフェッショナル人材」の情報。
榎本は既存の営業ステップを逆転させ、「プロフェッショナル人材を売り込む」手法を考案し、実践する。「こんなことができるプロフェッショナル人材」をあらかじめ複数名用意し、先にこちらから提案するのだ。
榎本 「この手法は、入社したばかりのメンバーにも適していました。お客様に対して『誰が何をできるのか』を先に伝えてしまう。
これはヒアリングで課題を紐解くよりも、断然ハードルが低かったんです。この手法がうまくはまり、アポイント数は増加。もちろん訪問後の受注も増加しました」
それは榎本がリーダーになってから、ちょうど半年が経過した頃だった。
「新卒2年目でもできる」を証明 成果はチームの成績にとどまらず
お客様へのアプローチ手法を変えて以来、チームの成果は順調に伸びている。2019年現在は、IT業界にとどまらずほかの業界にも同様の手法を適用するため、ニーズの発掘に取り組んでいる。
榎本 「一度コンタクトをとったお客様を、より受注につなげるため、メールマーケ施策にも取り組みはじめました。
新メンバーも数値目標を掲げ、目標達成に向けて主体的に行動できるようになってきたところです。目標のアポイント数を、当初の 3倍に設定するメンバーもいます」
榎本は自身の取り組みを振り返る。
榎本 「『まだ 2年目だからできない』『経験が足りない』とは言われたくありませんでした。仮説、実践、改善を繰り返せば、必ず答えが出ると信じていました。
また、素晴らしい実績を持つ人はたくさんいて、その方々の知恵を借りれば、自分の経験不足は補えると考えていました。実際にそうすることで、スピーディーに成果につなげることができました」
また榎本は、『自分たちに適したやり方』を見つけることも重要だと考えている。
榎本 「同じ商材でも、売れる企業と売れない企業がある。その違いは、いかに “自分たちに適したやり方 ”でお客様に価値を届けられているかどうかだと思います。
やり方を見つけるには、時には既存の手法に異議を唱え、変えて、とにかく試すことが必要です。そしてメンバーと積極的にコミュニケーションを図り、皆の特性を正確に把握することが大切だと感じました」
今回のプロジェクトはまだ道なかば。しかし一定の成果を残し、「新卒2年目でもできる」ことを証明した榎本。営業の成果だけではなく、「若手に0から任せる」といった方針が、事業を大きく推進させる事例にもなった。
榎本の次なる目標は、エスプールで新規事業を立ち上げること。「また0から立ち上げて見せます!」自信満々に榎本は言う。