大島 聖恵「デザイナーとして何者かになりたい。だから私しかできないものをつくる」
ライブストリーミング配信プラットフォームを世にもたらしたSHOWROOMが第二創業期を迎え、エンタメテック企業へと生まれ変わろうとしています。その根幹となる新規サービスの開発とデザイン戦略を担当する大島 聖恵。自らを“きよえ氏”とブランディングする彼女が見つめる自分自身、そして未来の展望を語ります。【talentbookで読む】
弱点から逃げない。冷静な目線と真摯な行動が成長を加速する
人は、ただ“なんとなく”好きな商品やサービスを選ぶ生き物。
なんとなくかっこよかったから。
なんとなく使いやすそうだから。
なんとなく他より良さげだから。
その理由を突き詰めて思考し、言語化するまでのプロセスを踏む人は、決して多くありません。
なぜなら、その作業は得てして非常に難しく、しんどいから──。
大島 「デザイナーとして成功したくて、“何者か ”になりたくて、そのために必要な能力や経験を身につけようと思い続けてきました。
たとえば『世界観をつくること』。同じデザイナーという職種でも多彩な人たちが十人十色のカラーを持っています。なかでも私は、ストーリーテリングやブランド設計などサービスや商品の世界観を考え、形づくる部分を武器にしていきたい」
大島 聖恵は、SHOWROOMにおいて新規事業となるサービスの開発を担当するデザイナー。
新たにつくるアプリケーションのロゴや色合いなどのデザイン戦略、操作画面の設計に携わっています。
実は「しゃべるのはめちゃくちゃ好きだし、誰かに何かを伝えるのもめちゃくちゃ好き」と言う大島。まさしく、サービスの世界観という抽象的なものを、デザインという手段を使って具体化するという仕事は適任のように見えました。
大島 「でも、自分自身の強みや弱みをまっすぐに見つめたとき、自分はロジカルシンキングがまだまだ弱いと気づいたんです。物事をロジカルに考え、ロジカルにアウトプットできるようになれば、自分の軸をもっと強くできる、話すのも伝えるのももっとうまくできるようになるはず、と」
そこで、さまざまな本を読んで知識を取り込んだり、考えるときも話すときも5W1Hをきっちりと意識したり。
自らの弱点を真摯に受け止め、改善するために努力する。
シンプルすぎる取り組みですが、実践できる人はなかなかいません。
まして、実践の結果、きちんと改善できる人となったらなおさら少ないでしょう。
大島 「新規事業の開発は、議論と試行錯誤なしに絶対に進まない仕事。話し合いが紛糾したときほどロジカルに整理し、まとめあげていくように意識しています。最近ようやくできるようになってきたかな……という手ごたえを感じ始めています」
自らを客観的に見つめ、スコープに合わせて適正なアクションができる。
それが、大島 聖恵というデザイナーなのです。
生まれたときからデザイナー志望 挫折を経てなおその道へ
大島にとってデザイナーは、“なるべくしてなった職業”でした。
大島 「生まれたときからデザイナーになりたいと思っていました、マジで。
もちろん明確にその言葉を知っていたわけではないけど、小さいころはとにかく絵を描くのが好きで『漫画家になりたい』『イラストを描く仕事をしたい』とずっと言ってた」
高校も、デザインを専門的に学べる学校へ。
デザイナーへの道を一直線に進むかのように思われました。
大島 「卒業前に、社会科見学として制作会社を訪ねてリアルな仕事の様子を知る機会がありました。でも、そこで働いていたデザイナーが、あまりにも楽しくなさそうだった……。仕事としての『現実』を目の当たりにした想いでした。
それで、仕事にするのはやめようと思ったんです。好きなことが好きじゃなくなってしまうから。だったら、デザインや絵を描くことを趣味でできるくらい稼げる仕事を他に見つけようと考えて、専門学校ではネットワークセキュリティを学ぶことにしました」
もともとは「デザインを仕事にする!」と宣言して高校を決めていただけに、大島にとってこの決断は大きな挫折でした。
専門学校に進学し、ネットワークエンジニアリングを学ぶ日々。
自ら決断したこととはいえ、くすぶる想いを抱えていた大島にもう一度挑戦の扉を開かせたのは、東京で開催されたハッカソンへの参加でした。
大島 「率直に、やっぱりデザインは楽しかった。それに、専門学校で身につけた ITの知識を生かせそうだという実感もあった。すぐに上京を決め、インターンとして働き始めました」
デザイナーは専門職。インターンとしてスキルを磨きながら就職活動も並行したものの、なかなか採用にはつながりませんでした。
それでも、好きなことを仕事にできる幸せがあった、と大島は振り返ります。
大島 「ファーストキャリアはファッション ECサービスの運営を行う会社。そこでバナーや UIデザインを担当していました。その後、スタートアップに移り、ママやプレママ向けの情報サイトの運営。私はバナーやインフォグラフィックの制作からブランディングに至るまで、デザインという切り口から幅広くサービス運営にかかわりました」
約4年半在籍し、リーダーまで務めた大島。
デザイナーとしての自分を真摯に見つめ、一段高いステージに進むために転職を決意します。
自分の強みも弱みも、どちらも高められる会社──それが、SHOWROOMでした。
難しいから挑む価値がある きよえ氏がSHOWROOMで目指す姿
きよえ氏。
大島は自らをそう名乗り、周囲も彼女を「きよえ氏」と呼びます。
大島 「これが私のブランディング。『デザイナーに仕事を依頼する』んじゃなくて、『きよえ氏に仕事を依頼する』になるのが目標です。
ずっと『何者かになりたい』という想いがあって、ある種その答えでもあると思っているんです。他の誰でもない自分が認められて、価値を生み出す存在になりたい。そのためにはもっと強みを伸ばし、弱みを克服しないといけない。転職するときも、一番コンプレックスだったロジカルというキーワードで会社を探しました」
入社前、大島の目には「SHOWROOM=ロジカルで営業が強い会社」とイメージしていました。
大島 「正直、デザインはあまりイケてない(笑)。そういう方面でサービスを打ち出しているわけでもない。でも、業績もユーザー数もすごく伸びているってことは、戦略や営業の力が強いんだろうと思っていたんです」
SHOWROOMでなら、物事をロジカルにとらえる思考力を高めながら、自分の持っているデザインスキルで事業に貢献できるのではないか。
言うなれば、ぴったりとはまるパズルのピースのような親和性を感じた。
それが、入社の決め手となりました。
想いの通り、着実にロジカルシンキングを自らのスキルに定着させてきた大島。SHOWROOM代表取締役社長の前田 裕二も「公開1on1」では「これだけ短期間で弱点を克服できるんなら、どんどんオールラウンダーになっちゃえばいい」と話します。
大島 「一般に、クリエイターは右脳で感覚的と思われることが多い職業です。でも、ビジネスである以上、ベースには左脳でのロジカルシンキングが欠かせません。『ロジカルな左脳の力で人を引きつけられるようになれば、あとは感覚が先行しても説得力に転嫁できるゾーンに入る』という前田の言葉が、すごく印象に残っています」
ロジカルシンキングで人の心をとらえ、信頼を共感を増やす。
そしたら、いつのまにか“何者か”になっている。
それが、“きよえ氏”のセンスと感覚で勝負するフェーズ。
一介のデザイナーではないその先の姿を思い描き、自らの頭と足で実現させていけるのか。
大島が進もうとしているのは、一介のデザイナーの領域を越えた並々ならぬ挑戦の道。
自ら望んで選んだその道を、SHOWROOMという舞台で大島は一歩ずつ、でも着実に前進しているのです。
思い描く世界を見るために、成果にこだわるデザイナーでありたい
今、大島が開発に携わっている新規事業は、プロのクリエイターをターゲットとしたメディアの創出です。
大島 「テレビ離れが進む今、プロが活躍できる舞台が減ってきてる。プロでなくてもコンテンツ配信できるプラットフォームをつくりあげた SHOWROOMだからこそ、次はプロがコンテンツ制作を行うメディアをつくりました」
SHOWROOMらしく斬新なUXを提供するコンセプトが込められた新規事業はスマートフォン視聴を想定した縦型で深く心に残る短尺動画メディア。
時間の短い動画のなかに、プロのクリエイティビティをかけ合わせることで、人々の感動を生み出す挑戦をして差別化するなど、新たな市場創出への期待はふくらみます。
大島自身、今はサービスの開発を進めるとともに、次なる課題へと目を向け始めています。
大島 「ロジカルシンキング以外にもクリアしていきたい課題があって、それが人間関係の構築とリアルでのコミュニケーション力を高めること。具体的な目標としては、人材採用を含めた組織構築ですね。
日々つくづく感じますが、自分ひとりで完結できる仕事はほぼありません。デザインチーム内のメンバーはもちろん、経営陣やエンジニアなどさまざまな職種の人たちとの協業が不可欠。だからこそ、リアルなコミュニケーションを通してもきちんと思い描く世界観を構築し、伝えられるデザイナーでありたい」
内からあふれる想いは、前田が考える人材育成の考えにも呼応しています。
大島 「前田は『期待が人を育てる』と言っています。『僕はこれから “きよえ氏はベンチャー企業のなかでトップデザイナーだ ”と言い続ける。そしたら、きよえ氏はどうしても成果を出してそうならざるを得なくなるわけ』と。
設定された期待に追いつくために自分自身を成長させるというのは、明確な目標設定になりますよね。だからこそ、私はとにかく成果を出すことにこだわりたいと思います。より良い組織をつくりあげていきたいし、新たなサービスは IOSや androidにフィーチャーされるような価値あるものに育てあげたい」
目指す高みは、まだまだ先にある。
その場所へたどりつくまで走り続ける大島の姿は、誰の目にもすでに“何者か”になっているようです。