寄ってたかって、育てる。人事専門の会社が迎えた新卒第一期生の物語
三菱地所グループの人事業務をトータルサポートする株式会社メック・ヒューマンリソース。多彩なバックグラウンドを持つ人事のプロが集まります。2019年春、設立以来初めての新卒社員が入社。受け入れる側にとっても入社する側にとっても初めてだらけ。会社の歴史上初の新卒社員を迎えた1年を両者の視点から語ります。【talentbookで読む】
選考で出会う社員の雰囲気があたたかくて、思わず自分のことを素直に話せた
新卒社員第一期生4名のうちのひとりが、手塚 みさきです。
もともと人事業務に興味があった手塚は、就職活動で20社ほど説明会や面接を受け、さまざまな企業の人事担当者と会う中で、より人事の仕事に憧れを感じるようになります。中でもメック・ヒューマンリソースに引かれたのは、その和やかな雰囲気でした。
手塚 「説明会や面接の雰囲気が他社とすごく違ったんです。他社はきっちりとした堅い印象で、その場にいるだけで緊張してしまう感じ。
でもメック・ヒューマンリソースはすごくあたたかくて、無駄な緊張をせずに自分のことを話せました。入社しても、自分のやりたいことや能力を発揮できそうだなと思ったんですね」
それからの手塚はメック・ヒューマンリソースへと一直線。そして希望通りに内定を手に入れます。
手塚 「一方で、社会人というイメージはあまり湧いていませんでした。新卒第一期生で前例もないので、何が待ち受けているのかまったくわからず、漠然とした不安は感じていました」
しかし入社後、それは杞憂に過ぎなかったことに気付きます。4月からの3カ月にわたる新人研修やOJTプログラムなど、しっかりとした育成の場が用意されていたのです。
社会人の基礎、職場体験、そしてグループ会社職場見学と丁寧な育成ステップ
手塚を受け入れたのは、MEC人事グループの給与厚生チームです。
OJTトレーナーを任されたのは同チームの中途入社の石木 秀明。石木は学生時代から人事部門で働くことを希望。新卒で製造業の人事部門に配属されますが、「製造業なのだから、一度は現場を体験してこい」という社の方針で、2年目に工場の総務部門に異動します。
石木 「そこでは給与計算以外に、採用活動や研修など工場内のことならなんでもやるという具合でした。もちろん自分の成長につながる経験はたくさん得られましたが、どうしても広く浅くとなってしまう。やはり専門性を高めたいと思って転職したんです」
メック・ヒューマンリソース2019年度の新卒社員は総勢4名。4月は三菱地所グループ理解の他、社会人の基礎を学び、5月は社内の各部署で職場体験を実施。6月には三菱地所グループ各社へ職場見学に回るという3カ月の研修プログラムが用意されていました。石木は5月の職場体験プログラムの担当。手塚と初めて対面して話をしたのもこの頃でした。
石木 「手塚さんの第一印象は、まったく物怖じをせずに自分の意見がきちんといえる、しっかりした子。逆にしっかりしすぎていて何が苦手なのだろうかと思うほど。それがすごく印象に残っています」
その手塚の配属が知らされたのは、配属の約1カ月前。石木はさっそく「どういう方針で育てるか」を資料としてまとめ始めました。
本人の特性を見極め、順調に育つための道を考え抜くOJT
石木がまとめた資料には「何をやってほしいか」「いつまでに何をやれているか」「そこからどのような知識を得てほしいか」そして「結果的にゴールとしてどんな姿を目指してほしいか」。そんなことが丁寧にまとめられていました。中長期計画とさらにその先と、具体的なスケジュールもありました。すべてが手塚ひとりのためにカスタマイズされたものです。
手塚 「まだ業務のイメージが湧かない状態で資料を見たため、こんなにやることがあるのか自分はそこまで成長できるのかというのが率直な感想でした。
でも石木さんの資料には、業務内容の詳細をはじめ、この1年間で習得していく予定のスキル・知識の他、具体的なスケジュールを立てた目標もありました。
自分のためにここまで資料を用意してくださって、安心していろんなことを学べそうだなという期待のような安心感も同時に覚えましたね」
手塚が実務に入ってもっとも大変だったのは電話対応でした。「電話の出方もままならない、問い合わせの内容もよくわからない」状態でしたが、手塚が決めていたのは「1日10本は対応する。決めたからにはやり方が悪かろうが絶対に10本とるまで諦めない!」ということ。実はまだ配属前でしたが、石木からこんなことを言われていたのです。
石木 「電話対応は他の人の仕事も覚えられるし、当たって砕けろではないけれど、従業員からの問い合わせへの対応というのは失敗しながら覚えていくものだという想いもあったので、思い切って積極的に電話をとってほしいと伝えました」
手塚の電話をとる勢いはすごかったと他部署のメンバーもいいます。自部署の電話だけでなく、他部署の電話まで積極的にとっていたのです。石木は「結果的にそれが自部署はもちろん、他部署のメンバーにも手塚さんの頑張りが伝わることになった」とみています。手塚自身も、その反響を実感していました。
手塚 「数をこなしているうちに、周りの方からこういう言い方にするといいよこんな風に取り次ぐといいよとアドバイスをいただけるようになりました。皆さんが気にかけてくれるようになって。電話を取ってくれてありがとうなんて言われたこともありました」
手塚は、自分自身を「負けず嫌い」だと分析しています。
手塚 「自分が決めたことに対してできないのは悔しいし、周りに申しわけなくなる気持ちも強いです。期待されているのを裏切りたくないという気持ちもあり応えるために頑張っています」
すぐそばで手塚をみてきた石木も、負けず嫌いな性格は業務の中でひしひしと感じていました。
石木 「自分でやると決めたことや依頼されたことは、最後まで自力でやり切ろうとしてくれる。与えられた仕事に対しての責任感がとても強いと感じています。
逆に仕事をひとりでやり切ろうとするあまり気負い込みすぎているなと感じるときも。本人にも伝えていますが、そこは現在の課題です。依存はよくないけれど、チームで動くのだから周囲を頼ることは大切。そのバランス感覚を見つけてほしいと思っています」
初めてだらけの新卒社員の受け入れは、全社一丸でやる
「寄ってたかって、育てる」──
これはメック・ヒューマンリソースの新卒受け入れ体制のスローガンです。新卒社員の入社前から全社で共有しています。手塚は電話対応の体験以外でもさまざまな場面でこの「寄ってたかって、育てる」を体感しているといいます。
手塚 「電話の取り方だけでなく、エクセルの使い方、業務に直接関係のないことも含め、たくさんの方が気にかけて声をかけてくださいます。その中で学ぶことはたくさんありますし、安心していろいろなことを聞ける環境がつくられているのだなと思います」
初めてOJTトレーナーを任された石木も日々感じていることがあります。
石木 「手塚さんが配属されたばかりのころ、よく他のメンバーからメールが飛んできました。
手塚さんにこんなことを伝えたいけど、石木さんを通した方がいい?直接伝えた方がいい?とか、手塚さんに電話応対の仕方をアドバイスしておいたよとか。周囲も手塚さんのことを気にかけてくれているのはすごく嬉しかったですね」
今、メック・ヒューマンリソースは部署内フリーアドレス制をとっています。配属後1カ月は、石木と手塚はいつも隣同士の席でしたが、それ以降は自由。それも色々な人とコミュニケーションがとれる機会につながっています。もちろん業務外での効用も。ランチなど気軽にいける他部署の仲間も増えていると手塚はいいます。
OJTトレーナーの任期は、2020年3月末までの9カ月間。2020年春から手塚は2年目としてひとり立ちです。
石木 「もう本人には耳にタコができるくらい伝えていますが、ぜひ自分で必要な知識をインプットできるようになってほしいです。
この9カ月間は僕が教えるという役割でしたが、この先は自ら勉強する習慣を身に付けてほしいですね。自分で知識の幅を広げて、自分自身を成長させられることが、将来の活躍にもつながると思うので」
手塚 「いまは日々の業務に目を向けがちで、新しいものを自分から学びにいくことはできていません。
2年目は自分の成長にも目を向けて、知識をインプットする習慣をつけていきたいです。インプットする習慣をつけるためにもまずは自分が何をしたいかを明確にしないといけないですね」
新卒一期生が入社してようやく1年が経ち、メック・ヒューマンリソースにとっては「寄ってたかって、育てる」の実働をようやく1年終えたところ。
三菱地所グループの人事業務を担い、プロとして人材育成も行うメック・ヒューマンリソースの新卒育成。今社内に新たな息吹が吹き込まれたところです。