ジョブローテーションの“脈絡”は自分でつくる──日本郵船でのキャリアの描き方 | キャリコネニュース - Page 2
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ジョブローテーションの“脈絡”は自分でつくる──日本郵船でのキャリアの描き方

▲いろんな人といろんな場所で働きたいという松浦

▲いろんな人といろんな場所で働きたいという松浦

「いろんな人といろんな仕事をしたい」と働き始める前から思っていた道を実際に歩んでいる松浦 祐一。日本郵船、通称NYKではジョブローテーション制度があり、出向を含む複数の部署を経験してきました。小さな成功は大きな成功につながると考える彼が、自身の経験と、キャリアプランへの向き合い方について語ります。【talentbookで読む】

ジョブローテーションについてどう思っているか

ずっと一つの場所で一つの仕事、ではない働き方をしたいなと思い郵船に入り、実際に入社後最初に神戸支店で研修、その後中南米アフリカグループ(コンテナ船)に配属、次に名古屋支店(NYK Container Line)に移ってコンテナの営業を3年間、3ローテ目で郵船ロジスティクスにて3年間営業を経験。

その後4ローテ目はそのまま郵船ロジスティクスでシンガポールに行き、南アジア・オセアニア地域の統括会社にて会社管理1年、開発営業3年の合わせて4年を経験しました。

2020年現在、5ローテ目の自動車船グループで3年経ちました。この4月に担当航路が中南米カリブから欧州になります。

ジョブローテーションには一長一短があります。一般的に、長所として挙げられているのは、ゼネラリスト型の人材育成ができるという点。例えばグループ会社の人に「郵船の社員は異動に慣れている」と言われることも。異動して来たと思ったらあっという間に仕事を覚えて、勝手に始めてるからその対応力にびっくりするそうです。

また、社内の知り合いの知り合いまで入れると多分全員つながるという、学生が聞いたら窮屈だなと思うかもしれない環境は強みだと考えています。

というのも、まだ仕事を一緒にしたことのない人の強みとか性格とか、なんとなくわかった上で接することができたり、逆に自分のことも知っていてもらっていたり。さらに、自分の部署に他の部署を経験した人がたくさんいて、経理のことをわかる人、他の船種がわかる人、などすぐに話ができるからです。

名古屋のときの上司には「種植えと水を与えることと収穫、これを連続的にやり続けろ」と言われました。

つまり、新規営業でも、収穫が途絶えないように連続してすべてのステージをこなし続けることが大事だと言われて、なるほどと思いエンジンを吹き続けた経験があります。そういうことをしていくことが、郵船のジョブローテーションで最大限に成果を出す為に必要な姿勢だと思います。

セカンドローテの経験と“大きな収穫”

いろんな人にあってきた証の名刺入れの一部

いろんな人にあってきた証の名刺入れの一部

種植えの話と出会ったのはセカンドローテで名古屋に配属されて営業になった時でした。当初は当然何もわからなかったのですが、上司はコンテナのプロですごく厳しく鍛えてくれました。

そして配属から1年半後に転機を迎えました。その時の支店は既存案件を守っていく姿勢が強いと感じていたこともあり、支店長に新規開拓の必要性を訴えて、それが認められ、そこから猛烈に新規開拓を始める事になりました。

会社四季報など色々な情報源を頼りにアポを取り続けるも、名古屋の文化もお客さんも知らなくて困りました。ですが、足掻いていたら周りの人からアドバイスをたくさん頂けるようになり、一方、実は単なる経験則で語っていたり、過去の出来事がアップデートされてなかったりすることに気づき、それを自分でガンガン崩していきました。

その中で以前NYKが取り扱えなかったお客様もちょっとでもいいから商売が取れ始めるというのがすごく嬉しくて。そこで上司が言っていた種植えの話を、身をもって感じました。

特に印象深かったのは、NYKと信頼関係がなかなか構築できていなかったある大口のお客様の貨物を積めたときの話です。それまでNYKは満船になると積載スペースが確保できないと断った過去もあったため、いざお客様のところに行ってもすぐには成約に結びつきませんでした。

そこで、そのお客様は、ある海貨業者※1に信頼を置いていた為、その海貨業者とまず信頼関係を構築するため、小口の船積みの実績を積み上げていきました。

しかし、大口の契約は断られ続けていました。荷量が多い為、お客様は複数の船会社にシェア割りにして起用する複数購買をしており、社内でも積載スペース繰りが心配な為、複数購買での参入を指示されていました。私としてはいきなりでも是非1社購買につなげたいため、商流変更や複数の輸送手段を含めた海貨業者にもお客様にもメリットがあるような提案をし続けました。

もうダメかなと思っていたところ、他船社含め、その航路が一気にスペースタイトになり、千載一遇のチャンスなので、再度提案したところ、1社購買で受注することができました。それまでの名古屋での経験や人脈が全部つながった瞬間で、感無量でした。僕にとってかなり大きな成功体験です。

※1:海貨業者…船社と荷主の仲介業等を営む業者。

適性を意識し伸ばしたサードローテ

▲郵船ロジスティクスで御世話になった方々との同窓会

▲郵船ロジスティクスで御世話になった方々との同窓会

セカンドローテ時に、お客様の物流に関するニーズが多様であると感じていたこともあり、NYKグループの中で非常に営業力があるといわれていた郵船ロジスティクス(当時は郵船航空)への異動を希望し、希望が通りました。

配属先は航空輸送の部署で、航空輸送も倉庫も配送やら通関やらと知らないことだらけ、また航空輸送は海上輸送と比べて昨日積んだ貨物について翌日連絡がくるなど、物事の展開するスピードがとても速かったです。

また複数の会社が統合するタイミングだったこともあり、人材交流という目的で、NYKグループ全体の若手中堅社員が一気に10人くらい出向するうちのひとりとしていきました。

その時の担当役員や部長に近況報告をすることもありました。そういう環境だったので、良くも悪くも注目を浴びていて、自分を出していかないと負ける、みたいなところがありましたが、逆に自分は楽しめたんです。

自分を出していくという中で、とにかく成果を出すしかないと思い、色々足掻き、航空輸送だけではない陸海空の大きなプロジェクトの立ち上げを成功できましたし、ある程度の成果は出せたと思います。名古屋のときよりも裁量が大きく、フィールドがより広がって、自分の適性を伸ばしていくことができたと思います。

また適性を伸ばすために、相対的に自分が優っていること、劣っていることを自分の中で出来る限り整理するように意識してきました。仕事を選ぶという事を言いたいわけではなく、得意な人に任せると言っても、利用するだけするのではなくて、その人ができないことを助けるなど、ギブアンドテイクを出来る限りすることが大事かと。

それに、単に今いるポジションにとらわれて、営業なら営業だけ、主計なら主計だけの仕事をして、「ジョブローテーションした時に他の部署のことを知ればいいや」という姿勢では、自分で知ることのできる自分の能力が限定されてしまうと思います。自分の置かれているポジションでベストを尽くしつつも、自分の関わる他の部署に話を聞きに行くなどして、自分の適性のある仕事に、より自分を寄せていくという努力が大切ですね。

ジョブローテーションの脈絡

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今は、自分がしていたような営業の仕事をグループ会社の方々が担う割合が増えている事もあり、同じような成功体験を重ねられる機会が減っているのではと懸念しています。

大きな成功体験がいきなりあるわけではなくて、様々な成功体験があってこそ大きな事をやっていけるようになると思います。物事のつなげ方を知っていけますし大きなことをいきなりやろうとしても周りの信頼がないうちにはできないと考えているからです。

会社にこもっていないで、情報収集を自分で出向いてやって、どんな小さなことでもビジネスのタネがあると思ったらやっていく、それをつなげるというのが営業だと思います。そういうことをできるポジションは昔からの営業ポジションだけではなくて、新規事業をやっている部署とかいろいろあるはずです。

ジョブローテーションとの向き合い方は若手も中堅も関係なく、若いうちにできないことが中堅になってからできるはずもないのだから、失敗のできる若いうちからどんどんジョブローテーションが求めるものを達成していくべきだと思います。

そのためにも若手に勧めたいのは、自分が思ったことを思いつきで終わらせるのではなく、まずは書き出すことです。自分の部署のためだけに書く提案書は弱いな、とかアイデアが採用されるには違う視点も必要だなとか、いろいろな振り返りができるから、是非みんなにやってほしいと思います。成長の機会を逃さないためにも、どんどん書き出して周囲にぶつけていってほしいですね。

誰も自分の人生なのに脈絡なく振り回されたくないはずです。もし思ってもいなかったところに異動しても、自分という人間が変わるわけではないので、自分の昔の経験を生かして「今までやってきたものがあるからここにきた」という位置づけがあるはずだと考えて、自分で脈絡をつくっていくべきだと私は考えています。

日本郵船株式会社

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