宮崎のあたたかな人々とともに未経験から地方クリエイターを育てる10バトンの挑戦
10バトン初の地方展開となる宮崎オフィスで、設立時からリーダーを務める大下 真史。彼が初めて訪れた地で続けたことは、ひたすら地域の人々と話すことでした。このストーリーは、ポジティブな意識と行動力を以て地域の雇用創出問題に向き合う、挑戦の軌跡です。【talentbookで読む】
お互いのニーズが一致した宮崎県で、地方のクリエイティブに新たな息吹を
10バトンは、IT領域の幅広いスキル教育を通じ、キャリアの選択肢を増やし、取引先へのソリューション提供を実現するため、さまざまな挑戦を続けています。
そのひとつが、2019年にスタートした「NEW CREATORS HIVE(以下NCH)」です。NCHでは、20代の未経験者を中心に、CG技術をはじめとしたクリエイティブスキルを培います。派遣業務とスキル研修を両軸で進めることで、どんな時代でも、活躍できるクリエイターの育成を目指します。
そんなNCHの構想と重なる形で、10バトン地方展開の話は進み始めました。東京本社で重ねたCG研修の実績をもとに、地方拠点でも若手育成モデルを展開するというものです。初の地方拠点として選んだのは、取引先との縁に導かれてたどりついた宮崎県でした。
宮崎県は地域の人々と企業のつながりが強く、行政による事業支援も手厚い地域です。「小さな力を形に」をビジョンに掲げる10バトンに対する宮崎県企業から後押しもあり、宮崎オフィス設立の準備は着々と進行しました。その手綱を任されたのは当時10バトンの採用を担当していた大下 真史です。
大下 「『まず行ってみよう』と、代表の徳田とともに宮崎へ向かいました。役所の方、現地の企業の方と意見を交わし夕飯を囲みました。『あったかい人たちだな』と、第一印象で宮崎のことが好きになりました。
あたたかく迎えてくださった宮崎県に対し、徳田も『これはやるしかない』と感じたのでしょう。たった 3日間の出張で、オフィスも家も決まりました(笑)」
宮崎県にも職業訓練校はありますが、CG・映像クリエイターに特化した人材育成のしくみはほとんどありません。そのような状況から県外の就職先を選ぶ若者が多い現状に、役所の方や企業は課題を感じていました。未経験からクリエイティブなスキルと、企業の求める“現場力”を育成する10バトンの目指す方向性は、宮崎県のこうした課題解決にもつながると徳田と大下は肌で感じていたのです。
大下 「宮崎で始まる地方での若手育成は、 10バトン初の挑戦です。そもそもチームの立ち上げ経験もなければ、これまで縁もゆかりもない地域です。ここから大変だぞ、という覚悟と、未知のチャレンジに対するワクワクが入り混じりながら宮崎へ引っ越しました」
宮崎県や企業の協力に支えられ、2019年10月、10バトン宮崎オフィスが生まれました。
人と話すことで課題解決に向き合った怒涛の半年間
大下は宮崎オフィスでの業務が始まって以降、兎にも角にも人と会うことに専念しました。
大下 「移住してから約 5カ月、延べ 250人ほどの方々とごあいさつしました。初めに準備した名刺は、あっという間になくなりました。
『どういう人なんだろう』と興味を持ち、会話することが大切ですね。『どうして宮崎に来たの?』と問われても、最初から仕事の話を持ちかけることは避けました。毎晩誰かとお酒を交わしながら、宮崎のさまざまな話を聞き出します。
相手のことを理解した上で、 10バトンが目指していること、 NCHの事業内容について説明し、想いを伝えました。若者のキャリアの選択肢を増やす 10バトンの取り組みは、多くの方から共感していただきました。もっと宮崎のクリエイティブをおもしろくしてほしいと、期待していただく声は本当に嬉しかったですし、その期待に応えたいという気持ちが強くなっていきました」
2020年3月、新型コロナウイルスの拡大による影響が宮崎県にも広がりましたが、大下は、この状況も地域の方々とのコミュニケーション創出のチャンスと考えました。
大下 「この混乱に対して『クリエイターとして何ができるか』を考えた結果、休校が続く子どもたちに向け、塗り絵を無償提供することにしたんです。アイデアを 10バトン社内で相談し、有志メンバーにイラストを提供してもらうことで企画は実現しました。
この取り組みはメディアでも取り上げていただくことができ、クリエイティブの力で宮崎県を盛り上げていきたいと考えているわれわれ 10バトンの想いが少しでも多くの方に認知してもらえる機会になりました」
地域密着型の取り組みや対話を日々続けることで、宮崎県から生まれる仕事が着々と増えています。宮崎オフィスでは、2020年4月現在、大下以外に3名のメンバーが在籍し、県内企業のPR映像、市役所の採用映像、ときには農産物のブランディングを任されるなど幅広いクリエイティブに携わっています。
大下 「メンバーには『自分が磨いたスキルで、ふるさとに貢献できている』と感じてもらえているようです。それぞれのプロジェクトがどのような形で地域に実りをもたらすのか伝えることで、この仕事の意義を感じてもらえるよう心がけています」
今できることを全力で──成果をあげるためにブレない目標を
約半年間で採用と営業双方の業務を推し進め、宮崎オフィスのベースは少しづづではありますが形ができつつあります。右も左もわからない状態から、失敗をしても果敢にチャレンジを続けた大下。その歩みの原動力は、やはり宮崎の人々との出会いとコミュニケーションから生まれていました。
大下 「ゼロからはじめる大変さは、経験してみなければわかりません。何が大変なのかもわからないところからのスタートですから。それでもなんとか前へ進むためには、人と会うしか方法がありませんでした。宮崎のことをもっと知りたい、 10バトンのことをもっと知ってほしい。その気持ちだけでした。でもその行動があったからこそ、出会いや対話につながったんです」
10バトン入社から3年間は派遣スタッフとして業務に向き合っていた大下は、当時から成果を出すにはどうするべきか、自分自身の成長と10バトンという会社の成長のためには何をすべきかを考えていました。
大下 「まずは自分が任された目の前にあるやるべきことをやりきること。それを続けることができれば自身のスキルを高めることはできます。そしてそのスキルを次にどう生かすのか。
僕はもともとデザインに興味があって 10バトンに入社しましたが、派遣業務から本社に戻って採用業務を任され、 NCHの立ち上げにも関わってきました。ぱっと見の業務内容からはデザインの要素が感じられないとは思いますが、すべての業務でデザイン制作や事業自体をデザインするという形でキャリアを積むことができています。
自分がそのとき置かれた環境でできる仕事を全力でやることが 10バトンの価値になると信じ、行動してきたから実現できていると思います。 10バトンをもっと大きくしたい。その目標は、宮崎オフィスに来てからも変わりません」
そのマインドの強さがあったからこそ、大下が率いる宮崎オフィスは地域の中にたしかな根を張り、現在も成長し続けています。そして、宮崎オフィスの成長とともに、挑戦を選んだ大下自身にも変化がありました。
大下 「宮崎に来るまでは目にすることもなかった経営関連の本を手に取り、ビジネスの勉強をするようになりました。周囲の方々と話せば話すほど、学ぶ意欲が高まります。やることがたくさんあって大変な部分ももちろんありますが、無理をしているのではなく、この状況を楽しんでいます。
楽しみながら自分がリードして表に出ていくことで、それをみた人が『大下っておもしろいやつが宮崎にいるよ』と言ってくれて 10バトンを知ってもらえるきっかけを少しでもつくれればいいな、と思っています。それが宮崎オフィスのメンバーにも良い刺激になると思うので」
大下の行動力とポジティブな意識は、決して生まれながらの才能ではなく、目の前の状況に真摯に向き合い、新しい何かを生み出したいという強い気持ちから育まれたものでした。大下の挑戦はこれからもメンバーの背を押し、10バトンの成長をさらに加速させます。
地域の雇用創出に直結する10バトンの事業拡大を目指して
大下 「これからは、宮崎の潜在的な課題をより多く発見し、案件を増やしていきたいです。宮崎オフィスの成長を通じて、 10バトン本社の事業拡大に貢献したいです」
10バトンの一員として、そして宮崎オフィスのリーダーとして、大下は多角的な目標を掲げます。その中のひとつである宮崎県の若者の雇用創出の展望は、ひとつのビジョンとして大下の中で育ち始めていました。
大下 「個人的な最大の目標はフェスの開催なんです。宮崎のさまざまな企業と連携し、若者が音楽フェスのように楽しみつつ、就業先についても考えられる機会を創出できたらいいな、と考えています。
東京、宮崎と場所を問わず、自分が目指すキャリアのためのスキルを 10バトンで身につけ、活躍する。そんな選択肢を若い人たちのスタンダードにすることで、より 10バトンの影響力を大きくしていきたいです」
宮崎オフィスから始まる、クリエイターを目指す若者の雇用創出と地方展開。この骨子をもとに、10バトンは各県で事業を展開していきます。そして、こうした挑戦の成功を支えるのは、おそらくどの地域であっても、日々のコミュニケーションや地域の人々との信頼関係なのでしょう。
大下 「もしこのストーリーを読んで宮崎に興味を抱いた方や、宮崎に住んでいる方がいるのでしたら、ぜひ一緒に乾杯しましょう。声をかけてくれたら、僕はとても嬉しいです」