管理職賞を受賞したマネージャーが「キャリアプランはない」と言い切るわけ | キャリコネニュース
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管理職賞を受賞したマネージャーが「キャリアプランはない」と言い切るわけ

▲社内アワードでAPC Award2017 で「管理職賞」を受賞した荻野満

▲社内アワードでAPC Award2017 で「管理職賞」を受賞した荻野満

3つのチームを兼務しマネージャーとプロダクトオーナーを担う荻野 満。社内アワードで「管理職賞」を受賞した経験もある荻野ですが「具体的なキャリアプランはない」と言います。社内でも一目置かれる荻野が具体的なキャリアプランを持たずどのようにキャリアを積んできたのか、なぜ明確に持たないのかについて語ります。【talentbookで読む】

マネージャーとしてのプロフェッショナリズム

エーピーコミュニケーションズ(以下、APC)では、活躍した個人やチームを称える社内アワード「APCアワード」を半期に一度実施しています。2017年に、荻野は並いるマネージャーやサブマネージャーを抑え、その下の役職であるセクションリーダーでありながら「管理職賞」を受賞しました。

役職にとらわれることなく、お客様への提案や交渉、月に一度の1on1を実施するなど手厚いメンバーフォローを自発的に行ったことが評価され、この賞を受賞しました。

その後すぐにマネージャーへと昇進。今では3つのチームで、マネージャーやプロダクトオーナーを兼務しています。

そんな荻野がマネージャーとして大切にしていることは、メンバーのモチベーション管理とセルフマネジメントのふたつです。

荻野 「一番フォーカスしているのはメンバーのモチベーションです。一人ひとりがどういう価値観に沿って仕事をしているのか、キャリアアップなのかプライベート重視なのか、何が好きで嫌いか、どういう状況だとストレスを感じるか。

そういったことを把握した上で、それぞれの価値観に沿いながら、仕事の目標やキャリアプランを一緒に考えています。後は、人をよく観察していますね。

時計が変わったとか、新しいシャツを着ているとか、本人が出さないようにしているイライラにも結構気付きます(笑)。良くも悪くも、いつもと違うなと気付いたら積極的にコミュニケーションを取るようにしていて、1on1も必ず月1で実施しています」

一般的なマネージャーの役割は、業務を進める上でメンバー一人ひとりのパフォーマンスを最大限に引き出すことです。

しかし、荻野が考えるマネージャーの役割とは、常に高いパフォーマンスを求めるのではなく、パフォーマンスの平均値をいかに上げるかということ。

荻野 「彼女や彼氏とケンカしてイライラするなんて、誰にでもあるじゃないですか。そういう場合は無理に仕事のモチベーションを上げさせようとせずに、相手のイライラを受け入れて早く帰るように提案します。

一時的にパフォーマンスが下がるのは誰にでもあること。重要なのは無理をさせないことです」

キャリアプランはない、あるのは「自由に人生を送る」というライフビジョン

▲自作のタスク管理ツールは、タスクだけではなく工数や優先順位も自動で表示される優れもの

▲自作のタスク管理ツールは、タスクだけではなく工数や優先順位も自動で表示される優れもの

荻野 「もうひとつはタスク管理を徹底することですね。このセルフマネジメントは、自分の忘れっぽい性格の対策として始めたんです(笑)。この忘れっぽさでいろいろと痛い目にあってきたので、5年くらい前から始めました」

管理ツールはスプレッドシートでつくられており、タスクを登録すると工数設定や優先順位の並べ替えが自動で行われます。これらはグラフ表示もされ、一日の業務量も一目瞭然です。

荻野 「リーダーやマネージャーになっていく中で、自分自身の稼働に余裕を持たせておかないとダメだなって思ったんです。チームに何かあったときに自分の稼働がパンパンだと、対応が遅くなってしまうじゃないですか。だから、精緻にタスク管理をしているんです。

そして、精度を上げるために管理ツールをつくり、すべてのタスクを管理するようになりました。なので、新たな仕事の依頼があったときは、そのバッファが確保できるかをこのツールで確認して受けるか否かを判断します」

このようにマネージャーとしてのスタイルを確立している荻野ですが、「給料はあげたかったけど、マネージャーを目指してきたわけではない」と話します。

荻野 「エンジニアになったのも、マネージャーになったのも、わりと流されてたどり着いたという感じで。もっと言うと今後のキャリアビジョンもあまり具体的に持ってないんですよね(苦笑)。

ただ、私の中に『自由に人生を送りたい』っていうライフビジョンがあるので、そのためにどうすればいいかだけを考えてきました」

自分の裁量で仕事も場所も時間もコントロールできる働き方を追求する荻野。

荻野 「仕事をする上で『何をするか』にはあまりフォーカスしていません。自由に働きたい、それだけです。そのためには、自分の市場価値を上げていくことと、その仕事で楽しめるかどうかが重要なんです。

市場価値を上げるという意味で、チームビルディングやメンバー管理、案件の収支管理などの多方面での実績を積むためにマネージメントにもチャレンジしています。

英語の勉強も続けていますし、毎晩その日一日を振り返るためにKPT(「Keep・Problem・Try」から構成される、アジャイル開発の振り返り手法)もやっています。自作の入力フォームがあって、そこに今日の調子とKeep・Problem・Tryを1行ずつ入力して、月イチで見返しています」

多角的な視点を持つことで仕事はもっと楽しめると荻野は言います。

荻野 「私はものづくり(エンジニアリング)をしたくてエンジニアになったんですが、なかなかその機会に恵まれませんでした。ただ、リーダーや管理職になるという機会はあって。

そうなって『管理職って楽しいのかな?』と考えたときに、何かをつくるという意味ではチームつくりも、ものづくりだしチームで何かをつくるっていうのも、おもしろいんじゃないかって思えたんです。エンジニアリングたけに固執していたら、今の私はいなかったかもしれませんね」

インフラ?開発?違いもわからず飛び込んだIT業界

▲スケボーと同じくらい好きだった音楽。カナダ留学ではさらにハマり、クラブでDJをやっていたことも

▲スケボーと同じくらい好きだった音楽。カナダ留学ではさらにハマり、クラブでDJをやっていたことも

荻野は、ぼんやりながらも高校生のときから「自由に人生を送りたい」というライフビジョンを持っていたと言います。

荻野 「高校生のときスケボーにはまっていて、よく横須賀に行っていました。そこには外国人もたくさんいて。でも私は英語が話せず交流できなかったんです。

彼らと会話できるようになりたい!そう思い立ってお金を貯め始め、高校卒業と同時にカナダに行き、1年半の語学留学をしました。特別『何かになりたい』という想いがなかったので、大学には行きませんでした。行く意味はないと思って」

現地で勉強に励むかたわら、語学学校に来ていたいろいろな国の生徒と友達になり、そこでの生活を満喫しました。

こうして荻野は、大学進学という既定路線に乗らず目の前にある興味引かれる世界に飛びこむ経験をしたことが、自分で自分の人生をコントロールする「自由な生き方」の第一歩になったと分析します。

荻野 「帰国後は英語を使って海外での買い付けをしたくて、輸入雑貨店でアルバイトを始めました。3年続けましたが希望がかなわず断念。親からは『25までに方向性を定めた方がいいよ』と言われました。

そんな中いろいろ考え、『パソコンが使えるようになれば、この先強いんじゃないか』という結果に至り、IT系へ進むことにしました。でも当時は、ITの知識などまったくなく、パソコンは音楽をつくるときに使うくらいのレベルでした」

最初は派遣社員としてインターネットプロバイダーのセールスやコールセンターなどを経験し、25歳のときに正社員のインフラエンジニアとして採用。

荻野 「実はこのとき、インフラとか開発とかの違いを知らずに応募してたんですよ。ものづくりがしたかったんで、本当だったらWeb開発とかを選ぶべきだったんでしょうね。こんな感じで、雑に生きてきました(苦笑)」

1社目ではお客様先に常駐してその会社のシステムの運用や、社内向けのヘルプデスクを担当。ITの知識は皆無で配属前の研修などもなかったため、問い合わせを受けてもその内容がわからない状態。荻野はかなりの苦労を経験しました。

荻野 「だから毎日めちゃくちゃ勉強しました。社内SEなので、WindowsからLinux、ファイアウォールなど幅広く対応しなければならず、教えてくれる人もいなかったので。でも、そのかいあってITの基礎知識と、多少のことがあってもなんとかするっていう精神を身に着けることができました」

強みを生かし、目の前のことに精一杯取り組むことで次の領域が見えてくる

▲市場価値向上を意識し、ネイティブの講師によるEnglish Lessonなども活用

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その3年後、2011にAPCに入社。入社日の前日は、なんと結婚式でした。

荻野 「結婚を機に環境を変えたいと思い転職を決意したんです。まずは給料を上げること、次にものづくりがしたかったので設計・構築や開発ができることを条件に探しました。APCはそれらを満たした上に、海外事業部もあったので入社を決めました」

最初の配属はお客様先に常駐し、お客様のシステムを24/365で運用・保守するチームでした。

荻野 「正直なところ、設計・構築や開発がやりたかったのでこの配属は不本意でした。ただ、配属が決まったばかりのころ、海外事業部の部長に『海外に行きたいので入れてください』と伝えたら、『今のチームで一番になったら誘ってあげる』と言われて。それならリーダーを目指そうとスイッチが入りました」

この頑張りにより、2年半後、荻野はリーダーに抜てき。

荻野「前任者からリーダーを引き継いだので、すぐに海外事業部や設計・構築などのチームへ異動することはかなわなくて。管理職として期待されていることも感じていたので、『まぁしょうがないかな』って思って目の前のことに集中することにしました。

ところがその後、設計構築の案件への異動が打診されたんです。管理職への道を進もうと思っていた矢先に、エンジニアリングへの道が開けたので若干戸惑いましたが、希望していた道だったので飛び込むことにしました」

設計構築を希望していたとはいえ未経験の分野で、非常に高い技術力が要求されるチーム。不安と期待が入り混じる中での参入でした。

荻野 「最初のころ、私は本当に技術力がなくてチームメンバーにかなり迷惑をかけてたんです。それをお客様にまで見せてしまうのはまずいと思って、お客様が抱える課題を解決するような活動をし始めました。

技術力の弱みを、課題解決で隠すという戦略です。これが功を奏してお客様からも評価いただき、APCアワードで管理職賞をいただきました」

このチームでは念願のエンジニアリングスキルも身に着け、マネジメントスタイルも確立。今では、このチームのマネージャーとしてリモートからメンバー育成やお客様交渉をするとともに、社内プロダクト開発チームのプロダクトオーナーと、請負開発チームの戦略立案をするマネージャーという3つの役割を兼務しています。

荻野 「流されてたどり着いたという感じで。目の前のことに集中する中で、次の領域が見えてくると思っているので、あまり先々まで具体的には考えないようにしています。

今の世の中は流れが速すぎてあっという間に状況が変わるので、『自由に人生を送る』という方向性を軸に、やりたいこと・やれること・おもしろいことをやるっていう感じです」

キャリアプランを持つことは大切です。APCでもそれを推奨し、そのためのサポートも手厚く行っています。

しかし、キャリアプランを描けないことで自信を失ってしまう人もいるかもしれません。

そんなときは荻野のように、自分の強みを生かし、目の前のことに精一杯取り組むという形でキャリアを積んでいくのも良いのではないでしょうか。

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