PMOの経験を生かして進捗管理、品質管理を高度化
ハードウェアからソフトウェアまで、一貫して開発する富士ソフトのインダストリービジネス部。通信機器の開発プロジェクトを担当するのは入社4年目の古川 竜次だ。PMO(Project Management Office)の経験を生かしてプロジェクト管理の道をまい進する。【talentbookで読む】
若手の育成とプロジェクトの見える化で一石二鳥
古川は、入社3年目から小規模とはいえ開発プロジェクトのPMを任されている。その大抜てきの理由はなんなのだろうか?
古川 「当時、1、2年目の若手に部署全体のプロジェクト管理を補佐するPMO(Project Management Office)を経験させ、育成とプロジェクトの品質強化を実現するという取り組みを行っていました。私は1年目の後半からその取り組みに参画させていただきました」
PMOとは、開発プロジェクトの状況を数値化して分析し、進捗管理や品質管理を行うこと。PMに負荷が集中するという課題を解決し、複数のプロジェクトを横断的に分析することでトラブルの早期対策にもつなげることができる。
古川 「ただ数値を集計するだけではなく、その結果を分析して課題を深掘りしていくんです。自分よりはるかに経験も知識もあるPMの皆さんに、課題と対策を説明する場を定期的にもたせていただき、とても勉強になりました。
また、若手の力を信じて、任せてくださったことに感謝しています。その働きを評価していただいたのだと思いますが、2年目からはメイン担当として仕切らせていただき、社内の認定制度でPMOのスペシャリストに認定されました」
新人でありながらPMを直接補佐するPMOを経験し、大きな自信を得た古川。
そんな彼がものづくりの醍醐味を感じたのは、初めて業務を担当したときだった。
文系出身の技術者へ。ものづくりに感じたやりがい
文系出身の古川がネットの世界に興味を持ったきっかけは、中学生のころに流行ったブログだ。しかし、IT企業で働きたいと漠然とした想いを持ちながら、具体的に何をすればいいのか、どこを目指せばいいのかわからないまま就職活動をしていたと言う。
古川 「ある説明会に行ったときに、たまたま富士ソフトのチラシを手にしたんです。そこで、文系出身者でも体系的に研修を受け、技術者として活躍できるというのを知って。ここなら安心してチャレンジできそうだと思いました。」
そんな古川が富士ソフトに入社して最初に担当したのは、銀行などの受付にある番号発券機の開発だった。3人のプロジェクトで、新人の古川が担当するのは評価業務。先輩たちが開発した機器の機能や性能が十分に発揮できるか、一つひとつ何度も繰り返し確認し評価していった。
古川 「地道な作業ではありましたが、先輩の仕事を間近に見ながらその開発に貢献できているという達成感はありました。何より、自分が開発に携わった製品が街中で動いているのを見かける。これほど嬉しいことはないと思います。
初めての仕事で、ものづくりの醍醐味を味わうことができたのは幸運でした。この道を選んで良かったと思いましたね」
古川は、このような評価業務を続けながら、部署全体のプロジェクトを管理するPMOの仕事を兼務し、経験を積んでいったのだ。
短期プロジェクトをはしごして開発現場の経験を駆け足で積む
古川は番号発券機の開発プロジェクトを2年ほど担当した後、展示会用のデモ機やLinuxドライバの開発など、短期のプロジェクトを転々とする。どれもまったく知識のないところから勉強し、詳しい先輩に教えてもらいながら必死で開発に没頭した。
古川 「怒涛の日々でした。とくにLinuxドライバの開発では、納期直前になっても期待した動きが出せず、ヒリヒリするような現場を経験しましたね」
うまくいかない、その原因をつきとめたのは古川のBSでもある鈴木 直斗だった。富士ソフトではBS(Brother・Sister)制度をとっていて、すべての新入社員にいつでも相談できるBSがつく。
古川 「鈴木さんには、入社したときからBSとしてお世話になってきました。このプロジェクトで初めていっしょに開発を経験したのですが、このときは救世主のようでした。感謝しかないです」
そんな鈴木から見た古川はどのような新人だったのか。
鈴木 「ひと言でいえばまじめ。ソフトウェアからハードウェアまで一貫して扱う部署なので、扱う技術も必要な知識もとても幅広いんです。そんな中でPMOまで任されて、次から次へと現れる未知の領域に、まじめにこつこつ勉強して乗り越えていく。根気とチャレンジ精神のかたまりですね」
さまざまな短期プロジェクトに携わった古川。そのまじめな姿勢や経験が評価され、入社4年目にして大きな立場を任されることになる。
PMOからPMへ、すべてはお客様のために
古川が2019年秋から担当しているのは、大手メーカーの通信機器の開発業務。しかもエンジニアではなくPMだ。
古川 「今のプロジェクトは、機能ごとに無数のモジュールにわかれ、それぞれ4、5人のチームで開発にあたっています。私はその中で3つの開発プロジェクトのPMを任せていただいて。しかも開発業務にあたっているのは、お客様から委託された他社の社員の方なんです。初めてのPMとしてはハードルが高いですね(笑)」
PMOとしての取り組みや開発の経験が評価され、入社3年目にしてPMに大抜てきされたのだ。しかし、一筋縄でいくような仕事ではなく苦労することも多いと言う。
古川 「情けない話ですが、今はまだお客様の助けを大きく借りて、試行錯誤しながらプロジェクトを進めている状況です。自分が開発を経験していないプロジェクトで、PMを担当しているため知識が追いついていなくて。これまでの仕事とは、自分の役割も関係者の数も属性もまったくちがうのでどう立ち振る舞えばいいのかわからないんです。
でも古川ならできると指名してもらったのはありがたいですし、お客様やいっしょに開発にあたっている他社の方々の期待にもこたえたいです。目標はお客様をリードできるようなPMになること。お客様の要望を聞いて、自分なりに咀嚼し、情報を補完し計画を立てて、円滑に開発を進めてもらうようにならなければと思っていますね」
入社したばかりのころは、仕事を通して自分が成長したいという想いが強かったと言う。しかし、その考えは仕事をしていくにつれて変化した。
古川 「私たちはお客様からお金をもらって世に出るものをつくっています。決して自分が勉強し、成長するためのものではない。利益を生み出すための作業に『これでいいか」という甘えは許されません。この成果物をお客様がどう見るか、一文字一文字の体裁まで丁寧に仕上げるように意識しています」
そんな古川の真摯な姿勢が、共に働く人々の心を動かすのかもしれない。