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DXとは? デジタルトランスフォーメーションの現状と課題をわかりやすく解説

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を目にすることが多くなりました。DXとは何か。DXを実現するにはどんな取り組みをすればいいのか。フリーランスエンジニアとしてクライアント企業のDX支援に取り組む松坂匠記さんに話を聞きました。

目次

 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
 なぜDXが注目されているのか?
 DXの現状と課題
 DXを実現するツールやテクノロジーとは

松坂 匠記さんのプロフィール

大手SIerから独立。フリーランスでエンジニアやってます。 他にはコミュニティ運営、広告代理業、資産運用相談も手がけてます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

デジタル技術で人々の暮らしを豊かに

——日本では2018年に経済産業省がDXについて定義しましたが、DXをわかりやすく言うと、どういうことなのでしょうか。 DX(デジタルトランスフォーメーション)は、2004年にスウェーデンのストルターマン教授が発信したのが始まりです。ストルターマン教授はDXについてこう述べています。「進化し続けるデジタル技術を人々の生活に浸透させることで、生活をより豊かに変換する」。 つまり、デジタル技術で人間の生活を豊かにしましょうということです。経産省では企業向けに「企業もデジタル技術を取り入れて、ビジネスモデルや働き方を変えましょう」ということを言っています。

DXが実現しない場合に訪れる「2025年の壁」

——DX推進のおおもとには「人間の生活を豊かにする」という目的があるんですね。DXが実現しなかった場合、どんなことが起こりますか? 経済作業省が出している『DXレポート』に登場する2025年の壁」というキーワードがわかりやすいので紹介します。このレポートにはDXについてさまざまなことが記載されていますが、一番印象に残ったのが次の点です。

「業務とデジタル化(IT化)の融合をうまくできないと年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある」

ITテクノロジーは5年も経てば大きく変化してしまいます。PCは5年も経てば処理速度が遅くなって買い換えが必要になりますし、サーバも同じです。古いまま使い続けることでさまざまなコストが膨らんでしまいます。

全体的にデジタルを取り入れていかなければ、DX化に成功した企業や国と比較して大きな経済損失が出てしまうのです。

なぜDXが注目されているのか?

——先ほどのお話と重複するかもしれませんが、いまなぜDXが注目されているのか、理由を具体的に教えてください。 “なんのためにDXをするのか”と少し重なる部分はありますが、経営者さまや企業の上層部に「このままではマズいことになる」という危機感を持つ人が増えてきたのだと思います。

たとえば、「古い基幹システムを入れ替えなければいけない」「不正アクセスへのセキュリティ対策を強化しなければいけない」など、さまざまな課題が浮き彫りになる中、それに対応できるIT人材が不足している点が経営層の危機感につながっています。 健康な人が「運動したほうがいいよ」と言われてもピンときませんが、「このまま運動しないと数年後に大病を患う可能性がある」と言われれば運動する気になりますよね。それと同じで、セキュリティ面やコスト面で具体的な課題が見えてきたことで、DXを推進しなければと考えるようになったのだと思います。

——DXと言われる以前は、「IT化」ということが盛んに言われていました。IT化とDXとでは、どう違うのでしょうか。


ITはDXの中の1つのツールです。ITのリソースを活用してDXを推進しましょうという考え方ですね。DXにあたってはIT化も必要ですし、その中で業務プロセスを改善する必要もあるというイメージです。

たとえば、ある会社のICTチームが、部署間でデータ共有できるように、データ連携をしましょうと業務担当に持ちかけます。業務担当側では、システム化だけしても意味がないから現場の声を聞いて業務改善に落とし込むようにと意見します。 それを受けてICTチームは現場にヒアリングをしますが、「困っていることは何もない」と言われてしまいます。 このように、ITツールがあるから使ってみたいと思う側と、実際に業務を回している側とでは、考えがすれ違うことはよくあります。ITツールをただ導入するのではなく、そのITツールでどう業務改善をするか、どう人の生活を変えていくかを考えることが大切なのです。

DXの現状と課題

経営陣と現場が一丸となってDXに取り組むべき

——DXの現状や多くの企業が直面している課題を教えてください。 よくある事例として、DXを宣言した経営陣が、IT部門やDX部門に丸投げをしてしまうケースがあります。 業務プロセスの改善や現場のデジタル化には、大きな負担がかかります。DXすると決めたのであれば、それにあわせて業務を調整するなど上層部が号令をかけなければ進みません。DXは経営陣と現場が一丸となって取り組まなければ実現できないのです。 業務の一部をIT化するだけでも、つまずくポイントはいくつもあります。2つほど事例を挙げると、既存システムのブラックボックス化や属人化です。

「ブラックボックス化」は、業務に合わせてシステムを作り込みすぎたために、現状うまく動いてるが、仕組みが複雑になっていて中身がどうなっているかよくわからないという状態です。これはシステムリプレースする時にシステムエンジニアを悩ませる大きな問題ですね。当時の設計書や仕様書がないと、本当に苦労します。


「属人化」は、あるシステムについて「その人にしかわからない」という状態ができてしまっていることをいいます。その人にしかわからない状態というのは「その人に聞けばなんでもわかる」という安心感があり、一見大きなメリットがあるように思えます。しかし、その人が大きなケガや病気になってしまった時、システムについて誰もわからず業務が止まってしまうといったことが起こりかねません。

DXという言葉自体は最近よく聞くようになりましたが、振り返ってみればこれまでにも散見された課題とあまり変わりはないのです。 

キャッシュレス決済はDXの好例

——さまざまな現場でよく見聞きするような話ですね…。DXがうまくいっている具体的な例を1つ挙げてください。 私たちの生活に密着した例を挙げると、キャッシュレス決済ですね。PayPayやLINE PayといったQRコード決済もそうですし、交通系ICカードもそう。今ではICカードを持たず、スマートフォンやスマートウォッチで改札を通ることができます。

キャッシュレス決済は人々の生活を変えました。


——DXと聞くと難しく捉えがちですが、キャッシュレス決済のようなものを想像するとわかりやすいですね。企業のDXについてはいかがでしょうか。 そうですね。企業でいうと、テレワークの導入も1つのDXですね。ZOOMなどオンライン会議の普及で、どこからでも会議に参加できるようになりました。


いま、私が経営してる会社で取り組んでいることの1つが、IoTを活用した工場作業員の熱中症対策です。

作業員ひとりひとりにIoTデバイスをつけてもらい、その人の体温や周りの環境温度から熱中症リスクを検知します。それを周りの人が気付いて、熱中症予防につなげる仕組みを作っています。IoTの導入と、それによる業務の変革を目指して、企業のDX化を一緒に目指しています。

DXを実現するツールやテクノロジーとは

DXを実現するためには「目的と目標」を定めること

——DXを実現するためのツールやテクノロジーにはどんなものがあるでしょうか。 AIやクラウド技術、IoTなど、大きなものから小さいものまでたくさんありますが、私が一番カギになると考えているのはスマートフォンです。 スマホ1つあれば情報の収集やメールの送信ができます。クラウド上にデータをアップしたり、ZOOMで会議に参加したりすることも可能です。先ほど挙げたキャッシュレス決済や健康管理まで、実にさまざまなことがスマホで行えます。スマホはテクノロジーの最先端ですね。 ——企業がDX化を実現するためにツールやテクノロジーを導入するには、どうしたらよいのでしょうか。 個人が自分の生活にツールやテクノロジーを取り入れるには、とにかく使ってみて、合う・合わないを判断すればよいと思います。しかし、企業となると大きなお金が動くので、容易に導入の是非を判断できませんよね。そんなときは、「目的と目標」を定めることが大切です。 「このシステムを導入することで労働時間がどれくらい削減できるか」「業務効率化で空いた時間を使って顧客満足度を上げるためのアクションがいくつとれるか」といった、できるだけ具体的な指標を作るとよいでしょう。

「だからDXをするんだ」ということがコミットできれば、企業としてDXを推進することができます。

「使ってみたら手放せなくなっていた」こそDXの本質

——これからDXに取り組みたいと考えている人たちへ、アドバイスをお願いします。 物流倉庫を持つある製紙会社で、Googleのスプレッドシートで受注管理を始めました。電話などで受注があったときに担当者がスプレッドシートに入力し、工場側で確認して紙を生産するようにしたら、それだけでも効率が上がったそうです。これも1つのDXといえます。 「DXは難しい」と尻込みするのではなく、この会社のようにITツールやデジタルツールを「使ってみる」というところを一歩目にしてみてはいかがでしょうか。 「ちょっと使ってみたら意外と便利で、気づいたら手放せなくなっていた」というのが本当のDXだと思っています。いろいろなツールを試して、自分にあったものを見つけてみてください。

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