「小売業は働きづらい」というイメージを払拭!ゲオホールディングスが実施した「働き方改革」
2019年3月、株式会社ゲオホールディングスが「ホワイト企業アワード」(JWS/日本次世代企業普及機構 主催)で「ダイバーシティ&インクルージョン部門」を受賞した。
ゲオホールディングスでは、数年前より「ダイバーシティ推進室」を設置。様々な考え方や価値観を持った従業員が安心して働き続けることができる環境づくりを推進してきた。その結果として、「小売業は働きづらい」「ワークライフバランスが保てない」というイメージの払拭に貢献したことが今回の受賞につながった。今回はその具体的な取り組みについてお話を伺った。
LGBT、外国籍、高齢者…みんなが働きやすい環境作りを推進
ーーホワイト化について具体的な取り組みをご紹介ください。
「ダイバーシティ推進室」という専門部署を設置し、「みんなの個性が未来(あした)を変える力となる」とスローガンのもと、「働き方改善」「女性活躍」「LGBT活躍」「外国籍活躍」「エイジダイバーシティ(長く働き続けられる環境づくり)」の5つの観点から、幅広く活動を進めています。
「働き方改善」:
今年4月にスタートした働き方法案に先立ち、有給取得の促進活動を行いました。「女性活躍」:
管理職向け「ダイバーシティ・マネジメント研修」
女性社員向け「キャリア形成研修」
女性昇格希望者向け「女性リーダー候補者イベント」
などを実施しました。「LGBT活躍」:
社内アライ活動としてオリジナルステッカーを配布したり、同性パートナーシップ制度の導入、レインボープライドへの参加、LGBT基礎知識のeラーニングなどを実施しました。「外国籍活躍」:
店舗での外国籍パート・アルバイト採用トライアルや外国籍採用に関する就業規則の変更を行いました。「エイジダイバーシティ(長く働き続けられる環境づくり)」:
マネーセミナーや介護セミナーを実施しました。他にも、LGBTのアライステッカーとは別に、ダイバーシティ推進室のオリジナルネックストラップを作成し、広くダイバーシティ推進の活動に対して賛同する意思表明として、希望者に配布しています。
また、現在の活動については、ダイバーシティ推進室単体での取り組みではなく、採用トライアルは採用を担当している部署と一緒に、といったように、その業務を主業務として持っている部署と共同で進め、ダイバーシティの意識を広めるような動きを心がけています。
多くの従業員がダイバーシティを「自分事」として捉えるきっかけに
ーーその施策、取り組みの効果について教えてください。
幅広く活動を進めたことにより、多くの従業員が「自分ごと」としてダイバーシティの活動を捉え、活動に興味を持つようになりました。ダイバーシティ推進室から発信している取り組みだけでなく、自主的に自身の働き方を改めて考え、工夫しながら働く人が多くなってきていると思います。
また、ダイバーシティ推進室のオリジナルネックストラップやLGBTのアライステッカーを配布したことにより、どれだけの人が問題意識を持っているかを見える化することができたと同時に、そこからダイバーシティに関する会話が広がるきっかけとなったり、ネックストラップやステッカーを持っている従業員が積極的に周りに活動を広める活動をしてくれるようになり、会社全体の意識が変わってきていると感じています。
社員のネガティブな反応には「対話」で寄り添う姿勢を
ーー上記取り組み導入から実施、成果があがるまでに苦労したポイントはありますか?
ダイバーシティの取り組みは草の根活動から数えると、今年で6年目となります。スタート当初は今のように「働き方改革」「ダイバーシティ」「ブラック企業/ホワイト企業」という言葉が世間で当たり前になっている時代ではありませんでした。もちろん、自社でも取り組んだことのないものでしたし、それまでの企業文化・考え方を大きく変える活動だったため、「言っていることはわかるけれど…」とあまり良い反応ではないことが多く、浸透にとても苦労しました。
そのため、自分たちの主張をするだけでなく、なぜ良い反応ではないのか、働く中で困っていること・悩んでいることはないのかを様々な従業員と話す機会を増やし、まずは従業員に寄り添う姿勢を意識し、本当に従業員が困っていることから取り組みができるように活動を進めました。
その結果、様々な従業員の意見から広い視野で取り組みを考えられるようになり、少しずつ信頼を得ることができていったことで取り組みが浸透していったのだと思います。
ーー自社のホワイト化に取り組んだ後、社内・社外から感じられた効果はありますか?
ダイバーシティ推進室が本気で働き方改革の活動に取り組んでいることに対して、従業員も本気で受け止めてくれるようになりました。
一緒に活動をしていきたいという部署が増えたり、様々なアイデアをダイバーシティ推進室宛に連絡をしてきてくれる従業員が増えてきたり、ダイバーシティに関する取り組みに積極的に参加する従業員が増えたりと、一体となって進めていこうという意識を強く感じています。
また、社外からもその本気度を感じてもらえることが多くなり、定期的に情報交換をしたり、一緒に取り組みを進めることができる社外の企業様が増え、社内外問わず、多くの仲間と一緒に活動を進めることができています。
「家庭」との両立支援にも積極的に取り組みたい
ーー今後の課題・これから先目指す「取り組み」をお教えください。
今後は、育児・介護等で働く時間や場所に制限のある従業員が増えることが予想されますので、家庭との両立支援を進めていきたいと考えています。
特に両立支援は、本部と店舗勤務の働き方が大きく違うため、同じ取り組みを全従業員向けに進めることは難しく、1つの取り組み内容に関して、本部と店舗でそれぞれどのように運用できるかを模索し、それぞれの働き方に合わせたそれぞれの取り組み内容を考え、進めていきたいと思っています。
※本記事は、受賞当時(2019年3月)のインタビューをもとに作成しています。