香港の深刻な「ブラック学校」問題 相次ぐ小中学生の自殺に政府当局は「不自殺契約書」で対応
まずお見せしたいリストがあります。(図)
こちらは、このブラック学校問題でこの半年間に出た主な自殺者たちです。上は21、22歳の大学生もいますし、11歳の小学生までいるから驚きです。半年間で27人も学生が自殺しているということは、事件というよりもはや日常の一部になってしまうぐらい恐ろしい問題であります。未遂も含めれば、その何倍もの数の犠牲者がいるでしょう。読者の皆さん、11歳に学業のストレスで『自殺しよう!』と考えたことがありますか?
香港のブラック学校問題は日本ブラック企業同様、いってしまえば「残業量」が特徴です。小学校の授業は通常1日7時間と決まっています。ただし、通常の授業が終わったら補習などで、生徒は9~10時間ぐらい学校に拘束されることがほとんどです。
また、家に帰っても休めません。自殺者が相次いだことを受け、有志が、ネット上で100人の親から学校の宿題スケジュールを集めて調査を行いました。多くのケースで1日の宿題は16~22個もありました! 1つを15分で仕上げたとしても4時間はかかります。学校によって遊ぶ時間はもちろん、睡眠時間も削られてしまっているのが現在の香港の小学生の実態です。
「私、〇〇は自殺しないと約束します」という契約書にサインさせる
先日、日本では広島中3自殺事件の報告書が物議を醸していました。自殺の原因と性質は違うと言っても、香港でもメディアと政府が学生の自殺を問題視しているところは同じです。ですが、香港の関係部署はブラック学校問題に、ありえない手で対応しました。
香港教育局(香港の文部科学省)の局長は、学生に「不自殺契約書」を書かせれば良いという方針にしました。契約書は教育局の公式サイトからダウンロードできます。以下のような内容です。
「私、〇〇は、〇〇から〇〇の期間、自殺や自分を傷つけることをしないと約束します」
「自分を傷つけようと思ったら、救急、または自殺防止委員会に電話をします」
「『どのような問題でも解決方法がある』と常に意識するようにします。また、以下に述べる方法でストレスを発散します」
これに生徒本人だけでなく、保護者や立会人もサインします。ただ、当たり前ですが、「学生の自殺問題をどうやって解決するか?」に対して、環境改善の対策を立てるわけではなく、「学生に自殺させなければよい!」というのはおかしいです。どの程度効果があるかも疑問です。
子ども時代は人生の一番楽しい時期なのに、何で地獄のようなブラック学校に入らなければいけないのでしょうか。ブラック学校だけでは足りないのか、自分の子どもに、習い事や学習塾に通わせる親もいます。これは本当に子どものためでしょうか。
【プロフィール 】
ラ ガイシュン 香港出身。2009年に来日し、現在は都内IT企業セブンコードにデザイナーとして勤務している。本業以外にも、英語・中国語の通訳や雑誌コラムの執筆、海外貿易アドバイザーなど多岐にわたる分野で活動中。【Facebook】
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