再雇用された60代の部下を年下上司はどうマネジメントする? ポイントは部下の「承認欲求」にある
超少子高齢化による労働力人口の減少予測から、日本政府は、長く働ける環境を早期に作ることを企業に求めてきています。その結果として、企業によってばらつきはあるものの、長く働く方が徐々に増えてきています。
そのような環境変化の中で、管理職の方が60歳を超えて働く方々のマネジメントに悩むケースがよくあります。今回は年下上司が60代の方々にどのように接していくべきなのかについてお話を進めてまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
まずは高齢者へのアンコンシャスバイアスに気付く
皆さんは”アンコンシャスバイアス”といった言葉をご存知でしょうか?”アンコンシャスバイアス”とは、人の思い込みからくる「無意識の偏見」といったものです。高齢者に対しての”アンコンシャスバイアス”が強いと、以下のような思いに縛られてしまいます。
「60歳になったら、退職してゆっくりするべきだ」
「60歳を超えたら、体も頭もなかなか働かないものだ」
「60歳を超えて働いている人は、能力的に使えない」
このような思い込みを持っていると、60歳以上の部下を持った時、出来ない面ばかりが目に入ってきてしまいます。人間の脳は関心を持った情報を取るようにできているからです。
60歳以上の方に限りませんが、マネジメントが上手になるためには、自分自身の”アンコンシャスバイアス”を超えて部下の強みに注目し、その強みを組織に活かしていく必要があります。
大事にしたい「尊敬・尊重・尊厳」
60歳以上か否かに関わらず、年上の部下の方々には「尊敬・尊重・尊厳」といった”3つの尊”マインドが大切です。尊敬と尊重は年上部下の方に対して管理者が持つべきもので、尊厳は管理者自らが自分に対して持つべきものです。年上部下に対し、その存在や行動を尊敬と尊重の念を持ちながら接し、自分自身の上司としての尊厳を持った関りをしていく必要があります。
その中でも、尊敬と尊重を大切にしていただきたいと思っています。なぜなら、そうでないと前述のアンコンシャスバイアスに縛られてしまうからです。「60歳以上は気難しくて使えない」とか「60歳以上の古い考え方には付き合っていられない」といった思いを持ってしまうと、高齢メンバーの”働きがい”や”生きがい”のポイントを知ることが出来なくなるからです。
いくつになっても人間は、「周りから認められたい」、「人の役に立っていることを感じたい」、「周りから声を掛けられたい」などの承認欲求を持っています。60歳以上の高齢の部下の方も必ず承認欲求を持っていますので、そこを満たす関わりをしていきましょう。多くの60歳以上の方が、「自分がどのような役割を果たしていけばいいのか?」と戸惑っています。
承認欲求を満たすためには、60歳以上のメンバーのこれまでの社会人人生を密なコミュニケーションで知り、そこから強みを発見し、担ってもらいたい役割と期待を明確に伝えていきましょう。そして、健康に配慮しながら、居場所と生きがいを作って差し上げるのです。
以上、60歳以上の部下をマネジメントするポイントをお伝えさせていただきました。60歳以上の方が生き生き働いている職場はステキな職場です。若い人も、年をとっても生き生きと働ける自分の会社に誇りと希望を持つはずです。それぞれが働きがいを感じながら働ける職場をつくっていってください。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。