採用担当者が「会社の未来を創る人」になりうる理由
しかし、現実の世界を振り返ってみれば、事業に応じて組織を作るためにどんな人を採るのかを決めるというような、一見するときれいな流れはそうそうないことがわかります。
むしろ、採用の当時は「この人は、今この会社が行なっている事業に完全にフィットしているとは言えない」と思われたような人が、想定外の力を発揮して活躍するという例の方が多いのではないかと思うぐらいです。
現場に最もフィットしていると思われたドラフト1位選手が必ずしも活躍するわけではなく、ドラフト外でギリギリ入ってきた選手が、チームのプレースタイルの変更に伴って活躍するというようなケースもよくあることです。
環境は変化するもの、させるもの
理由は簡単です。冒頭で組織が「従うべき」と述べた事業戦略は、今の世の中においては、どんどん変わっていくものだからです。環境や事業が変われば、求める人物像は変わります。
もっと言えば、今の環境や事業は人が作り出しているものですから、人が変えていくことができます。環境や事業は、変わらない制約条件ではないのです。
しかし、もし採用担当者の頭が固く、未来を見ることなく、変化の可能性を考えなければ、こういうことは起こりにくくなります。
採用担当者は「会社の未来」を描け
明日やる仕事にフィットしないからという理由で、いろいろなポテンシャルのある人材を次々落としていけば、その会社は採用担当者の思惑通り、現状維持を続けることになり、そのうち環境の変化に適応できずに潰れていくかもしれません。
良い採用担当者がいる会社では、「こういう人が採れたから、こんな事業ができるようになった」ということが頻発するものです。
採用担当者が「こんな人がいたら面白くなるかな」「こんな人がいたら会社は変わるかもしれない」というように考えて採用を行えば、間接的に事業開発者、つまり「会社の未来を創る人」にもなりうるのです。
【筆者プロフィール】曽和利光
組織人事コンサルタント。京都大学教育学部教育心理学科卒。リクルート人事部ゼネラルマネジャーを経てライフネット生命、オープンハウスと一貫として人事畑を進み、2011年に株式会社人材研究所を設立。近著に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)。
■株式会社人材研究所ウェブサイト
http://jinzai-kenkyusho.co.jp/