「ウチは社内恋愛が多いですよ!」 そんな会社は「働きやすい職場」なのか考えてみた
奥深い恋愛論は分かりませんので、人が人に恋をするということを、今回はその第一段階としての「好意を抱く」ということに絞って話を進めます。心理学によれば、人が人に好意を抱くようになるには、いくつかの法則があることが分かっています。
例えば「類似性効果」、つまり自分と似ている点が多いほど、相手に対して好意を抱くという法則で、社内恋愛が多い職場は「同質性の高い職場」と言えるかもしれません。
もしもこれが理由で社内恋愛が多いのだとすれば、その「同質」に自分も当てはまる人にとっては居心地の良い職場となるでしょう。その一方で、同質から外れる人にとっては排他的な居心地の悪い職場となるかもしれません。
また、強いバイアスを持つ効果の一つとして「単純接触効果」というものもあります。要は「会えば会うほど好きになる」という効果で、社内におけるコミュニケーションの頻度や量が多い職場であればあるほど社員相互で単純接触効果が働いて、社内における「好意」の総量がどんどん増えていくことになります。
また、以前にも書いたように、職場の問題の大多数はコミュニケーションをケチることによって生じる誤解や疑心暗鬼から生まれるので、コミュニケーション量が多ければ、不要なイザコザや摩擦は比較的生まれにくいはずです。
ただし、仏教の四苦八苦の「怨憎会苦」(嫌いな人に会う苦しみ)ではありませんが、元々の印象が悪いと、単純接触効果は逆に働く(どんどん嫌いになる)ので、先述の「類似性効果」などが発生している状況が前提になります。
「どんな人にも等しく優しい職場」を物足りないと感じる人も
たくさん自己開示をする人は、対人魅力が高まるというような研究もあります(いろいろな結果があり、一概には言えませんが)。特に自分の内面や弱みなどを開示できると、相手と親密になれる可能性が高まるという結果が多く報告されているようです。
したがって社内恋愛の多い職場は、個人のパーソナリティとして「オープンマインドで自己を開示することに躊躇しない人が多くいるか」、あるいはそういう人でなくても安心して自己開示ができる「受容的な雰囲気のある職場か」、いずれかの可能性があります。
前者の場合、内気な人にとっては、やや開けっ広げ過ぎて辛いかもしれません。そんな人でも、後者の要素が強い職場であれば、どんな人にも等しく優しいので働きやすいかもしれませんが、逆に厳しい競争的な職場を望む人にとっては物足りないおそれもあります。
さらに、身も蓋もない話で恐縮ですが、社内恋愛が多いのはイケメンあるいは美人が多い可能性もあります。人は、飛び抜けた利点を持っている人については、その他の様々な側面についても比較的好意的な評価を下す「ハロー効果(後光効果)」を持っています。
どんなことをやっても、イケメンであれば「ただしイケメンに限る」と許されてしまう可能性があるということです。この場合、私のような非イケメンにとっては「働きにくい職場」になるような気もしますが(涙)。
危機感にあふれた職場には「吊り橋効果」が働く?
もちろんハロー効果は美醜という側面に限るわけではあく、飛び抜けた能力や素晴らしい人格についても生じると思われますので、何か突出したものを持っているであれば、恩恵にあずかることができます。要は社内恋愛が盛んな職場は「才気あふれる人の集まり」である可能性があるということです。
また、人はドキドキするような経験を一緒にすると、その原因を相手に対する自分の好意であると誤解する「吊り橋効果」があります。つまり、リスクテイクをどんどんしていて、日々が刺激的で、危機感にあふれた会社であれば、それを一緒に経験している人同士で恋愛感情が生まれることもあるかもしれません。
もし、そうであれば、リスクテイカーにとっては働きやすい職場でしょうが、安定を求める人にとってはあまり居心地がよいものではないかもしれません。
以上、いろいろ述べて来ましたが、要はひとことで「社内恋愛が多い職場」といっても、その原因となる文化や風土にはいろいろな状況である可能性があるということです。当然な結論かもしれませんが、社内恋愛が多い、即、誰にとっても居心地のよい職場とはならないので、お気を付けください。
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