「サービス残業」の呼び名いろいろ ワタミは「ノーコン」、ファミレスは「待機」
残業時間がカウントされず、残業代が支払われない労働は、いつからか「サービス残業」と一般的に呼ばれています。日本人が持っている「サービス=タダ」というイメージに沿ったものなのでしょうが、サービス業で働く者にとってはたまったものではありません。
ところで、このサービス残業には他にもいろいろな呼び名があるようです。キャリコネでも以前「スーパー社畜タイム」「母さん助けて残業」といった新名称を取り上げていましたが、居酒屋チェーンのワタミで使われていたのは「ノーコン」という社内用語でした。(文:ナイン)
タイムカードを切った状態で休憩室にいる社員
ノーコンとは「ノー・コントロール」の略で、人件費が予算を超えた場合に使われる言葉です。店が「ノーコン」してしまうと、店長はエリアマネジャーに叱られるので、ワタミの社員たちはタイムカードを切った状態で働き、人件費を抑制していました。
厳密には「ノーコン=サビ残」ではないのですが、実質的に同じような使われ方をしています。この話を、別のチェーンのファミリーレストランに勤める友人にしたところ、自分のところでも同じような社内用語があると嘆いていました。
「ウチはさ、”待機”ってあるんだよ。あれが嫌なんだよね」
ここでいう待機とは、早い話が「サービス残業」のことです。店の売上が悪く、バイトを増やすと赤字になってしまうとき(要するにワタミの「ノーコン」状態になるとき)、そのファミレスでは、社員は従業員休憩室で「待機」していたのだそうです。
社員は自分のシフトが終了すると、タイムカードを切った後で「待機」。店が忙しくなると呼び出され、そのままタイムカードが切れている状態で働くことがあるというのです。
帰るタイミングが難しいのは、今はお客が少なくて暇でも、5分後には新規のお客がドッと来るかもしれないから。しかし誰も来ないかもしれません。要は「いつ忙しくなるかわからない」のですね。だからこそ帰れない、いや店は「帰せない」のです。
このように、いつ来る分からない「もしも」のときのために、時間にして2~3時間くらいはいつも「待機」していたのだそうです。
「サビ残」を知りながら計画を立てる経営者
外食チェーンでは、売上に対して使っていい人件費や原価が決められています。もちろん、売上が良ければ問題ないのですが、365日営業している外食チェーンで、毎日売上が予算通りいくことはありえません。当然、それを下回ることだってあります。
そんな中、会社は社員たちに「サービス残業」によって店の売上や利益の責任を負わせるシステムを確立しているのです。人件費が利益を圧迫するなら、そこを削りなさい、ということです。文句の言いにくい部下にサービス残業をさせれば、利益は確保できます。
このような状態を経営者は知りつつ、予算や売上の計画を立てているといっていいでしょう。だからこそ外食チェーンは、当たり前のようにサービス残業が横行しているのです。
これから日本は少子高齢化が進み、人材確保が難しくなることが予想されます。このような違法行為ばかり続けていると、
「外食チェーンでは絶対に働かない」
と決めて就職活動をする人が続出するでしょう。逆に言えば「そもそも法律自体にムリがあるんだよ」という言い訳をやめて、労働環境を確実に改善する会社だけが、必要な人材を確保することができると思いますよ。
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