加工食品・外食産業で「異物混入を100%なくすことは無理」と思う理由
ここ最近、食品の異物混入が話題になっています。異物混入関連のニュースを取り上げたワイドショーで、タレントが「100%安全でないものをお客に提供するのはどうなのか」と言っているのを見ました。
誰が聞いても、この意見は正しいです。皆さんも同様の意見をお持ちの方もいるでしょう。ただ、現場経験者の私が思うに「異物混入は以前からあり、今後も異物混入が完全になくなることは不可能」と思います。(文:ナイン)
「仕事でミスをしたことがない」人なんかいないはず
私が働いていた居酒屋では、厨房に入る際は必ず帽子をかぶり、手洗いを30秒以上行い、最後にアルコール消毒を行います。また、以前ノロウイルスが飲食店で集団感染した事件がありましたが、それを未然に防ぐために「体調不良のものは業務できない」という規定もありました。ノロウイルスは空気感染(飛沫感染)するためです。
食品関係で働く知人も、汚れが目立つように白色の帽子・マスク・手袋を着用し、腕まくりをして手洗いと消毒を行い、業務終了後も手洗いと消毒を欠かさない、と話していました。
飲食業界ならこのくらい気を使っていて当たり前なのですが、報道されている異物混入はなぜ起こったのでしょうか。言い訳がましく聞こえることを承知で言いますと、それは「異物混入は従業員のミスだから100%防ぐことはできない」ということなのです。
皆さんも仕事をしていく中で「今まで一度もミスをしたことがない」「お客様や同僚に迷惑をかけたことがない」という人はいないと思います。食べ物に故意に爪楊枝を入れる行為や、数年前に話題になった賞味期限偽装とは、明らかに質が違うのです。
異物混入はミスなのに対し、賞味期限偽装は悪意があり悪質な行為ということです。「異物混入はミスだからあっても構わない」というつもりはありません。こういったことをした従業員や店は、しかるべき対応をお客様に行うべきです。
現場の実態を知るほど「その程度」と思いがち
では、以前からあるはずの異物混入が、なぜここまで世間を賑わしたのか。それは会社の対応の悪さにあったのだと思います。
例えばマクドナルドの謝罪会見では、「今日はなぜ社長が来ていないのか」という記者からの質問に対し「社長が出るほどの問題ではない」といった発言がありました。店舗で異物混入を店員に言ったところ、笑いながら対応されたとお客が憤る様子も報じられています。
ただし現場の実態を知れば知るほど、「その程度」という気持ちが強くなるものです。たとえば子どもが「オムレツに卵の殻のかけらが入ってた!」と大騒ぎしても、母親は「あらごめんね。お皿の脇にどけておいてちょうだい」と言うでしょう。
卵の殻のかけらが入っていたとしても、子どもの健康に大きな影響を与えるわけではないし、毎日毎日家族の調理をしていれば、そんなことは当然起こりうるからです。
しかし現代の消費者は、相手の事情を理解してくれません。マクドナルドのような対応を見ると、「問題を起こした会社なのに異物混入は仕方ないと思っているのか!」と反省のない印象を与えてしまい、心証を悪くして事態を悪化させていたように思います。
真摯に仕事に取り組んでいる人がほとんど
異物混入に限らず、加工食品や飲食業で清潔を損なう問題はなくすべきです。「飲食業界全体としてどうなんだ」と言いたくなる気持ちも分かります。ですが実際には、真摯に仕事に取り組んでいる人がほとんどなんです。
皆さんが今後、実際に異物混入に遭遇したら、「ミスなんだから大目に見てやりなよ」とは言いませんが、問題そのものよりも、ミスを起こした人たちが仕事に真摯に取り組んでいる人なのかどうかを判断してもらえればと思います。
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