在宅勤務で「社員のエンゲージメント」がなぜ向上? コロプラ経営陣が変えた「社員とのコミュニケーション」のやり方
「白猫プロジェクト」や他社IPタイトルの好調で、2020年9月期は増収増益となったコロプラ。新型コロナウイルス感染症対策として、開発環境の整備やさまざまな施策に取り組んできた。
そのような対応を通じて「会社が強くなった」という。具体的にどのような取り組みを行い、どのような効果が出ているのか。同社取締役CFO兼CHROの原井義昭さんに聞いた。(キャリコネニュース編集部)
月曜日の朝礼をやめて「動画配信」に代えた
――コロナ対応の経験を通じて、会社が変わった部分はありますか。
6月と12月の年2回、wevoxというツールで社員の満足度調査をしているのですが、在宅勤務をしていたのにもかかわらず、コロナ禍で社員のエンゲージメント(組織や仕事に対する自発的な貢献意欲)がかなり上がったんですね。
どうしてなのかと分析してみたのですが、経営陣から社員へのコミュニケーションのやり方を変えた効果が出ているようです。
例えば、これまで毎週月曜日に朝礼をやっていたのですが、これをやめて、役員が動画を自撮りし、いまの会社の状況や考え方を話すようにしました。動画ですと、いつでも見ることができるし、1対1で話しかけられているようにも感じるので、メッセージがより伝わるようになったのではないかと思います。
また、当社では半年に一度、社員の一体感の醸成を目的にキックオフを行っています。いままでは1000人規模でホテルを借りてやっていたのですが、これもオンラインで開催しました。この満足度も、いままでにないくらい高かったです。
キックオフのコンテンツとして、昨年10月に発表したフィロソフィー策定の意図や背景について、役員が対談形式で、テロップを付けてテレビ番組のようなスタイルで流しました。
またハイパフォーマンスを出した社員を表彰するアワードも設けています。今回のオンライン開催でのアワードでは、受賞者と生で通話をつないでコメントをもらい、その間に表彰した理由をしっかり説明したのですが、どうしてこの人が表彰されているのかの納得感が高まったようです。
こういうコミュニケーションのあり方は、もしコロナが終わってもこのまま続けていいのではないかと考えています。
――「フィロソフィー」は、いつごろから準備していたのですか。
検討を始めたのは2年ほど前です。会社が急成長し、人員がかなり増えてきたので、会社の考え方をしっかり伝え、求心力を高めベクトルを揃える必要があると。在宅勤務だと、会社に属している意識や連帯感がなかなか生まれにくいので、その意味ではいいタイミングでした。
策定したフィロソフィーは、事あるごとに経営陣が語ったり、フィロソフィーを記載したカードを、コーポレートキャラクターである「クマ」のカレンダーとともに全社員の自宅に郵送したりしています。家にいても会社とのつながりを少しでも感じてもらえればと思います。
「執務フロアの4割削減」は本社移転後も継続
――1回目の「緊急事態宣言」で、業務にどんな影響がありましたか。
当社は「最新のテクノロジーと、独創的なアイデアで”新しい体験”を届ける」をビジョンに掲げています。他社が作らないような面白いゲームを作ることには、こだわりをもっている会社です。
もともとコミュニケーションをとても大事にしており、面白いゲームを作るために職種問わず活発に議論を交わす文化があります。ですので、リモートワークには最初すごく慎重でした。
経営陣も、本当にそれでゲームが作れるのだろうかと。特に新作開発の業務はアイデア出しや、開発チームでのレビューにおいて強い連携が必要になりますし、既存のゲームタイトルも常に運用がある中で、ユーザー様にご迷惑をかけずに済むのかと懸念していました。
――問題は、どうクリアしたのでしょうか。
まずは少人数のチームで在宅ワークをトライアルでやってみて、どうしたら問題が起きないか、チームで課題を洗い出して解決した後に、全社で導入するやり方を少しずつ取り組んできました。
在宅でも変わらないパフォーマンスでやってもらえるように、押印や稟議申請のオンライン化は、コロナをきっかけに可能になりました。現在は1ヶ月固定で出社者を決めており、出社率を30%に抑えています。
――2022年には、東京ミッドタウンへの本社移転を予定されています。
昨年11月に、現在の恵比寿ガーデンプレイスのオフィス面積を4割削減しています。移転先である東京ミッドタウンの新オフィスでも同じくらいの広さをお借りする予定です。
全社員が入れる広さにはなっているのですが、今後も感染症対策のためソーシャルディスタンスをどれだけ取るかという話もありますので、もしコロナが収まったとしても在宅勤務は一部残る想定でいます。最新の感染症対策を備えた、多彩なコミュニケーションを促進する空間にして、時代にあったオフィスにしたいと思います。
新しい働き方にあわせた「評価制度」へ
――在宅勤務をしている人たちへは、どんな働きかけをしていましたか。
社員の身体的、精神的な健康面での配慮ですね。特に若い社員で一人暮らしだと、健康に配慮しにくい。月1回のサーベイで、回答値が低かったり、急激に変化したりしている人がいたら、上長や人事が対応しています。
在宅勤務手当は6月から月1万円を支給しています。また、在宅では椅子の問題でパフォーマンスが落ちるのではという声もあり、社長のこだわりで選んでいるエルゴヒューマンのオフィスチェアを希望者に譲渡しています。
精神衛生上、雑談の機会があった方がいいということで、オンラインランチのサポート制度を設けています。1回1000円の補助で、四半期で最大5回まで使えます。オンライン飲み会は飲酒量が増えると健康によくないので、ランチで気軽にコミュニケーションをとれた方がよいのではと考えました。
このほか、企業向けSNSサービスGoogle Currentsを活用し、できるだけ雑談や仕事の間のコミュニケーションを取れるようにしています。また、Google Meetでオフィスの全執務室を常時映し出しており、在宅勤務の人からでもすぐ声をかけられるようになっています。
在宅だと「ちょっといいですか?」という声がけがやりにくいので、執務エリアが画面で見えると、いま誰が出社しているのかとか、話しかけてもよさそうかなといった様子が見えてよいという声があります。
――オンラインで「ラジオ体操」をしている話を年次報告書で読みました。
当社はパラアスリートを積極的に採用しているのですが、彼らにも参加してもらっています。社内向けに「健康管理支援ポータルサイト」を設け、食事や健康、睡眠について管理栄養士やパラアスリートが情報を発信し、社員の健康を支援する取り組みを行っています。
――これからの「求められる人材像」には変化はあるでしょうか。
いままで全員が出社していた状況から、出社している人、在宅で働いている人、働き方が急激に変わりました。どこで働いていても、成果をしっかりと出せる人が求められます。
これまでより成果ベースでコミュニケーションを図っていくことが、今後標準になっていくでしょう。そのため、新しい働き方にあわせてどんな環境でも成果を出す人に報いる評価制度へと制度を新しくしました。
もちろん、周りに配慮しているか、チームのことを考えてやっているか等の行動評価は、引き続き評価の重要な要素です。ただ、従来よりは成果そのものの比重がより高まっていくのではないかと考えています。