女優の深田恭子さん(38)が「適応障害」と診断され、休養する。所属事務所の発表によると、深田は昨年の春頃から体調を崩しがちとなり、今月に入って医師から適応障害と診断された。7月から始まるフジテレビ系の連続ドラマに主演予定だったが降板する。
今回は統合医療クリニック「ハタイクリニック」院長・西脇俊二医師に、適応障害の予防法や芸能人のメンタルヘルスなどについて聞いた。
仕事に行けないレベルになると「うつ病に近い」という見立ても
「うつ状態も適応障害も脳内のセロトニンやノルアドレナリンが不足している状態で、うつ病の一歩手前が適応障害と考えるとわかりやすいと思います。セロトニンは気分を安定させる神経伝達物質、ノルアドレナリンはやる気や意欲に関わる神経伝達物質ですが、これが減るのがうつ病や適応障害です」
適応障害やうつ病の症状は幅広く共通している症状も多い。うつ病との違いとして、よく言われるのが明確な原因があるか否かという点だが、「原因の有無を問わず、いくつかの症状の基準を満たしていればうつ病と診断される」と解説する。
「朝起きても意欲が湧かず、体が重くて動けなくて仕事に行けない、早朝覚醒などがあり寝れない、好きだった食べ物を食べても味がしない、今まで好きだったことが楽しめなくなるレベルはうつ病ですね。一般に精神科の診断基準として用いられるWHOの国際疾病分類では、原因に関係なく症状を診て判断される精神疾患がほとんど。しかし、適応障害は発症する前の1ヶ月以内に何か心理的なストレスを感じる体験が原因として確認できることが条件になります」
また、適応障害の条件にはうつ病などの診断基準を満たさないという条件もあり、実際に診断の線引きはあるものの分けがたいところはあるようだ。
適応障害は新入社員など若い人、うつ病はもう少し上の年齢層に多いイメージもあるが、深田さんくらいの年齢や仕事歴でも十分あり得るという。
もっとみんなズル休みできたらいい
「具体的な治療としては即効性が高いため、いきなり抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬を出すところが多いと思いますが、私はビタミン剤を最初使うことも多いです。タンパク質がセロトニンやノルアドレナリンに変化するには、体内の酵素を使うんですが、その働きを手助けする捕因子が必要になります。代表的な捕因子がビタミンC、ビタミンB6、鉄と亜鉛。血液検査で欠乏性貧血などがあれば鉄というように、不足している栄養素をサプリメントで補います」
ビタミンCはストレスや寝不足、疲労で消費されるため、現代人が不足しがちな栄養素で、治療だけではなく予防にもつながる。
「セロトニンとノルアドレナリンの原料となるタンパク質をしっかり摂り、ビタミンCは一日6グラムくらい摂ってほしいですね。また、貧血気味の女性の場合、貧血を改善することでうつ症状が良くなることもあります。サプリメントなどで間に合わなければ漢方を使い、それでも改善がなければ症状に合わせて抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬を処方するというのが、私の基本的な治療の流れです」
ビタミンCはいきなり大量に摂ると腹痛を引き起こすこともあり、最初は1日2グラムほどから摂り始めて、徐々に増やしていくのがいいという。
20年近く数々の人気ドラマの医療監修も担当してきた西脇医師。現在放送中の『ドラゴン桜』(TBS)の医療監修もしているが、芸能人やインフルエンサーのメンタルヘルスについて、次のように語った。
「やはり芸能人って選ばれたプロの人たちで、たくさんの人が関わっている中で、大きなプレッシャーかかっていて、責任が重いだけに調子が悪くても頑張らざる得ない場面が多いのかなと。深田さんくらいになると10年、20年とそれが続くわけで、病気にさえなれないと言うと変ですけど、プライベートあってないみたいな状態だと、それはやはり大変なことだと思います。極限まで深田さんも頑張ったんだと想像しますね」
一方で、一般の人でも本当に動けなくなるまで悪くなり、入院が必要になるまで頑張ってしまう真面目な人は多いとも語る。
「変な話、もっとみんなズル休みできたらいいと思いますね。自分の子どもが同じ状況だとして、薬飲ませてまで仕事させるのかって話で、そこまで義理はないですから。コロナ禍であっても小出しにストレスを発散して、ケアする習慣が大切だと思います」
■取材協力専門家プロフィール
西脇俊二 (にしわき しゅんじ)
統合医療クリニック「ハタイクリニック」 院長
ハタイクリニックの院長として診療をしながら、メディア出演やドラマなどの医療監修、執筆など多数の分野で活躍中。著書に『自分の「人間関係がうまくいかない」を治した精神科医の方法』(ワニブックス)、『コミックエッセイ アスペルガー症候群との上手なつきあい方入門』(宝島社)など。YouTubeチャンネルの運営のほか、『ドラゴン桜』(TBS)など数々の人気ドラマの医療監修も担当する。