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『呪術廻戦』作者もダウン… 精神科医に聞く「激務ストレス」の対処法

疲れた男性の写真

疲れていると思ったらどうすればいい?

『週刊少年ジャンプ』の人気漫画『呪術廻戦』の休載予告で、作者・芥見下々さんの体調不良が理由だということが明らかになると、大勢のファンから「ゆっくり休んでください!」などと気遣うツイートが相次いだ。

芥見さんは発表した文章で、「体調を崩したと言っても大病したわけではなく、メンタルは通常運転なのでご心配には及びません」と説明したが、その一方で「(ネームに取り掛かるまで)二日半は”横”みたいな状態が続いてしまい……」と、疲れがたまっていたことをうかがわせる記述もあった。

週刊連載の厳しいスケジュールやプレッシャーなど、人気漫画家にかかる重圧は計り知れないが、メンタルの不調を感じていなくても仕事の疲れが抜けない、という経験は多くの人が持っている。毎週の掲載を楽しみにしているファンたちが、続きが読みたい気持ちを抑えて体調の心配をするのは、週刊連載の激務っぷりが有名だからというだけではなく、自分のつらかった時の経験を重ねていたからかもしれない。

一般人が仕事のストレスでキツイと感じた時、何か良い対処法はあるのだろうか。統合医療クリニック「ハタイクリニック」院長・西脇俊二医師に聞いた。

達成感を小まめに感じる工夫を

2018年3月の連載開始から3年以上、週刊連載を続けてきた芥見さん。一般企業の会社員だったとしても、3年間ストレスフルな環境で働けば「限界」を感じて、やらなければならない仕事や勉強に、なかなか手をつけられなくなることもある。

西脇氏はこの点について、次のように解説する。

「ドーパミンとセロトニンを出しながら仕事できるかが問題です。主にドーパミンは達成感を感じると出る脳内物質で、脳に報酬を与えることで次も頑張れるサイクルができていれば、まだメンタル的には良いんですね。でも、どんな仕事も3年やればだいたいマンネリ化して、とりあえずこなす、という状態になりやすい。そうすると、最初の頃は自然にあった達成感がなくなり、結果的に燃え尽き、うつになることがあるんです」

そうならないようには、どうすればいいだろうか? 西脇医師は意識してドーパミンやセロトニンを小まめに出す工夫が大切だという。

「ゴールがないと達成もないので、まずは自分で小刻みにゴール設定をすることです。例えば文章書くのに嫌で嫌でしょうがない場合、20分でタイマーをセットして、目標ラインを決める。タイマーと競争して少しでも早く終わったらドーパミンが出ます。これを繰り返すと1時間で3回ドーパミンを出せるので、1時間に1回出すよりトクだし、1時間ぶっ通しでだと脳が疲れた状態から、なかなか回復しにくくなるんです」

1回に集中できる時間は個人によって違うので、15分、30分など自分に合ったタイミングを探して設定するのがポイントだという。

「よそ見したり、余計なものを触ったり、身体が動き出すと集中が切れている状態です」

また、1日の中で「ToDoリスト」を作るのも、達成感を得るために効果的だ。

「完璧主義で30個とかたくさん書いてしまう人もいますが、あまり細分化せず一日5つまでにしてもらいます。大切なのは優先順位を意識して仕事することです」

一方で、やり残した仕事が気になって、そのことばかり考えて休まらないケースもある。そんなとき、上手にリフレッシュするコツはあるのだろうか? 西脇氏はこう話す。

「仕事とか余計なことを考えないことが一番。瞑想が良いとも言われますが、何も考えないって意外と難しいので、例えば編み物とか料理とかある程度、集中しないとできないことをやるのがおすすめです。不規則で時間に追われる漫画家さんでも夜食は自分で料理したりすると、いいかもしれませんね」

どれぐらい休めばいい?

最近では、大坂なおみさんがうつ病を、深田恭子さんが適応障害を公表するなど、著名人がメンタル面での不調を公表して休養するケースも珍しくなくなってきた。それでは、たとえば「うつ病だと診断された場合」だと、一般的にどのくらいの療養期間が必要になるのだろうか。

「うつ病ですと、普通は3カ月以上とることが多いと思います。うつは、そもそも完璧主義の人がなりやすくて、休んでいても仕事のことを考えてしまい、なかなか気持ちが休まらないんですよ。医師からもかなり働きかけても、休む状態に慣れるまでに1カ月ほどかかることが多いです」

一方、西脇氏は「薬を飲んで休むだけだと、元に戻ったら同じことの繰り返しになる可能性が高く、今度は薬で維持するようになってしまう」と指摘、日常復帰には職場環境や生活環境を変えることが重要だと語る。

たとえば、「会社員の方なら仕事量を調整しつつ、半日勤務などから徐々に慣らす」ことを勧める。また、「療養期間には、物事の捉え方や受け取り方を意識的に変容させてストレスを感じにくくする『認知行動療法』も練習してもらいます」と話していた。

もちろん、どんな対応が必要かはケースバイケースで違う。「キツイな」と感じたら、早めに医師に相談してみてもよさそうだ。

西脇俊二医師

西脇俊二医師

■取材協力専門家プロフィール

西脇俊二 (にしわき しゅんじ)
統合医療クリニック「ハタイクリニック」 院長
ハタイクリニックの院長として診療をしながら、メディア出演やドラマなどの医療監修、執筆など多数の分野で活躍中。著書に『自分の「人間関係がうまくいかない」を治した精神科医の方法』(ワニブックス)、『コミックエッセイ アスペルガー症候群との上手なつきあい方入門』(宝島社)など。YouTubeチャンネルの運営のほか、『ドラゴン桜』(TBS)など数々の人気ドラマの医療監修も担当する。

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