最近では、文科省がTwitterで教員の声を募集したところ、過酷な働き方を訴える悲痛な声が、あちこちで上がったという事件がありました。「#教師のバトン」というタグを目にした方もいらっしゃるでしょう。
このように現場教員の過酷さは年々増加していると言われます。「新しい事態に対応するために、やるべきことは増えるのに、何かを減らすことはない」状況だと聞いています。
教師の仕事は、授業だけではありません。たとえば授業準備、テスト作成、担任の先生ならクラスの運営があります。それに加えて、教員免許の更新、運動会や卒業式、遠足や家庭訪問のイベントもあります。
さらに、いじめや不登校があれば、その対応にも時間がかかります。専門的な知見が必要な発達障害・外国人児童生徒への対応・ICT教育に向けた自己研鑽も必要になってきます。
「部活動」の大きな負担
そして、最も過酷と言われるものが部活動。部活の担当は強制ではないものの、「もちろん、やるよね?」という空気感が半端ないそうです。引き受けると、放課後や土日に多くの時間が割かれます。
このように授業以外に幅広い仕事があります。OECD加盟国の中でも、学校の先生が学習指導から生活指導まで全てやる国は日本ぐらいと言われてます。
それなのに、公立学校の教師は「給特法」という特別ルールがあり、基本的に残業代がつきません。副業もできません。こうした事情があるからか、公立学校教員の採用選考試験の倍率も、年々低下しています。
志の高い学校の先生は優秀な方が多く、キャリアコンサルタントである私から見ると、「民間に就職していれば、もっと年収が高そうだ」と感じることも多々あります。実際に、優秀な公立学校の先生は、高い年収で私立学校に引き抜かれることもあります。
私立学校では残業代がつく場合もあり、「教えるだけ」に特化できるなどの分業が進んでいる学校も多いです。この傾向が進むと、質の高い教育を受けるためには結局は私立に通わせないといけなくなるため、二極化がさらに進展するリスクがあります。
特に、田舎は教師不足に陥りやすいです。そもそも先生の数が少ないので、産休になった先生の代わりも、なかなか見つけられません。担任が持ち回りとなり、受験生へのサポートも不足しがちです。地域のコミュニティとの距離が近く、交流が親密になる一方で、プライバシーが確保しにくくなる点も、人が集まらない要因になっています。
関係者の意識は高いけど……
このような事態を解決すべく、文科省も本気になっていると聞きますが、一筋縄ではいきません。現場の学校では、校長先生に多くの裁量があります。都道府県・市町村の教育委員会との調整も必要です。「過疎地域や荒れている学校に、どの先生を配置するか」という話ひとつでも、簡単には決められません。
つまり、公立教員の労働条件や人手不足解消は、文科省・教育委員会・校長、そして学校の先生本人が一丸となって取り組まなければ解決しません。私が知る限り、現場の先生も、教育行政に関わる方も、課題意識を強く持って動かれている方は多いですが、問題解決には時間がかかりそうな印象です。
教育は、人財育成の根幹で、あらゆる産業の礎です。より良い社会と幸せな個人の幸せな人生を創るためにも、教育の役割は相当に大きいと感じています。1日も早く現場の先生の待遇が良くなり、質の高い公教育が安定して受けられる社会になって欲しいと願います。
【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアコンサルタント・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。
大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40~50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアコンサルタントとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。