「金持ち喧嘩せず」という言葉がある。なるほどお金を持っている人は心に余裕があって、喧嘩もしないし人に優しいものだろう。「自分も、そう思っている時期がありました」と語るのは、都内在住30代会社員の男性だ。
男性の現在タワマンに住んでいる。それも住所は千代田区である。しかし、住民は勝ち組の優雅なセレブばかりかと思いきや、意外に心の狭い人が多かった。いったい、どういうことなのか。(取材・文:昼間たかし)
「とにかく住民が冷たいです。コンシェルジュが挨拶しても無言で通り過ぎます」
男性が千代田区のタワマン住民になった理由は、実家の引越である。
「実家は文京区だったのですが、そこもマンションが建つことになり土地を売ったんです。てっきり、そのマンションに部屋を貰うものだと思っていたんですが、突然親が千代田区に住んでみたいといいだして……」
それまで新宿区で一人暮らしをしていた男性だが「新しい実家のほうが会社に近い」と引っ越すことに。ポジティブな「子供部屋おじさん」の誕生だ。もとの文京区の実家は土地は広いが築数十年のボロ屋だったそうで、新たな実家は文字通りの「宮殿」だった。
「入口にはコンシェルジュがいて、エレベーターにたどり着くまでは、自動ドアが複数箇所。エレベーターに乗っても、専用のキーをかざないとボタンが反応しないんです。単に面倒な仕様ですが最初の数ヶ月間はウキウキしましたね」
住んでいるだけで気分は「セレブ」どころか「貴族」かと思った男性だが、次第に殺伐としたマンションの雰囲気に気づくことになった。
「とにかく住民が冷たいです。例えばコンシェルジュが挨拶しても無言で通り過ぎます。エレベーターなんかで一緒になった時に、こちらが挨拶をしても無視です。それどころか、舌打ちされたこともありますよ」
とりわけ、舌打ちしてくるのは上層階に住んでいる団塊の世代くらいの男性が多いという。
「タワマンに住んでいるだけで、自分が特別だと思っているんじゃないでしょうか」
さらに酷いのは、宅配などの業者への態度だ。
「宅配業者などは、複数あるエレベーターのうち一つを使うようになっています。なのに、わざわざ業者が荷物を積んだ台車で乗った後に飛び込んで来て、舌打ちする住民が何人かいました」
とにかく部外者に舌打ちしたり見下したような視線で見るというのが、このタワマンでは日常だ。
「マンションの敷地はすべて私物だと思っているんでしょうか。宅配業者が敷地に入ってきただけで、イヤな顔をしている人もいますよ」
ついに昨年の夏にはこんなことも。
「ちょうど引越業者さんが作業を終えたところに出くわしたんです。養生を撤去して、エレベーター内も掃除しているところだったんですが、何度か遭遇した舌打ち老人がやってきて『汚えなあ』と聞こえるようにいってエレベーターに乗っていったんです。業者さんは笑顔で『ちゃんと掃除していきますから』と返してました。聖人かと思いましたよ」
人が羨むタワマンに住みながら、なんでこんなに殺伐としているのか。
「タワマンに住んでいるだけで、自分が特別だと思っているんじゃないでしょうか。実際、住んでいれば次第にそんな幻想はなくなると思うんですけど。自宅がタワマンって人に話して羨ましがられるのは一時だけですよ」
自分は特別なはずなのに、誰も羨ましがってくれない……。そうして歪んだ自意識が「下々の者」を見下すことへと繋がっているのだろうか。
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