凶暴すぎる父親が認知症になり「心がすうっとしました」 壮絶DVに長年苦しんだ女性の回想【後編】
「今なら、保護施設だとか一時保護という制度もあることを知っているのですが、今思い返しても腹が立ちます」
と憤った女性。警察に対してではなく、無知だった自分自身への怒りだろう。しかし人生は何をきっかけに上向くかわからないものだ。この事件のあと、女性と母親の人生は好転していったのだ。
「ともあれこの一件で私は母に、『あなたは養うから。離婚していいから』と宣言。母も決意し両親は泥沼の裁判の末離婚しました」
年末の帰省で首にアザができるほどの激しい暴力を振るわれた女性は、自分には帰る場所があるが、母親を残しておくことは忍びなかったのだろう。一方で母親のほうも、自身に経済力がなく夫の暴力にも耐えるしかないと長年諦めていただろうから、女性の宣言は嬉しかったに違いない。事件を機に母娘の絆が強まったようだ。一方で父親は離婚という結末に納得していなかった。
「『これまで(娘に)投資したのに、俺は恩恵を受けられないのか。不公平だ』と騒いでいたそうです。ちなみに私の貯金150万を父は使い込んでしまったことがあるのですが、まだ足りないというのでしょうかね」
父親が手をつけたのは娘の貯金だけではなかった。ついに警察の厄介になることに……
賽銭を着服したと警察から連絡→「逮捕して欲しいです」
時は流れ、両親の離婚から20年が経った。女性の元に警察が連絡してきたのだった。嫌な予感がしただろう。警察とのやりとりを次のように回想した。
「父が町内会で管理している氏神様のお賽銭を着服したと警察から連絡がありました。町内会の人は、着服した分を返せば訴えないと穏便にすまそうとしてくれていましたが、私はむしろ『刑事事件じゃないですか?逮捕して欲しいです』と冷ややかになってしまいました」
女性は結末を明かさなかったが、この事件から10年後の出来事をこう述べている。
「父は後見人がついて、特養に入所しています。認知症で見る影もない姿になっているのを30年ぶりに見た時、心がすうっとしました」
幼少期から長年にわたり暴力に耐え続けてきた女性だからこそ、そんな状態の父親を見ても微塵も悲しみを感じなかったのかもしれない。しかし過去とは言え、これほどの心の傷はそう簡単に癒えるものではない。
女性は現在、精神科に公認心理士として勤務しているそう。自身の体験も踏まえ、暴力を振るう親は子どもには不要だ主張し、理由を次のように述べた。
「父のおかげでずっと視線恐怖で、人の顔色ばかりうかがい、治すのに苦労したことも話しつつ、親になる資格がない奴もいるのだと主張したいです。子どもに親がいた方がいいから、問題ある配偶者だけど離婚しないという方、子どもが何らかの精神病になるリスクが跳ね上がるので、とっとと離婚した方がいいですよ?」
確かに、親に虐待された苦しみは体験した人にしかわからない。当事者に「どんな親でもいたほうがいい」と安易に声を掛ければ、その言葉自体が、ときに暴力にもなり得るかもしれない。
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【前編はこちら】「父が私の髪を引きずり、ビールを浴びせかけてきました」壮絶DVに長年苦しめられた女性の回想