コオロギ50匹分プロテインバー開発の裏側「食品工場で虫は”害虫”。日本では50工場以上断られました」 | キャリコネニュース - Page 2
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コオロギ50匹分プロテインバー開発の裏側「食品工場で虫は”害虫”。日本では50工場以上断られました」

松居さんと共同代表の西本楓さん(21)の海外での体験が開発のきっかけとなった。松居さんはカンボジアを訪問し、畜産の飼料耕作のために熱帯雨林が伐採されていることを知った。

西本さんは大学2年生の時、ボランティアとしてウガンダを訪問。栄養失調の子どもに問題意識を抱くが、現地の人にとって肉は高くて手に入らない。そこで、現地の畜産のシステム自体を変える必要があると気づいたという。

「各々の途上国での経験から、誰にも依存しない、搾取もされない、また人生が制限されない、持続的なタンパク質の生産システムとそれを消費する文化の構築と言う近い景色を共有できたので、一緒に歩みたいと共同で立ち上げました」(松居さん)

開発時に特に大変だったのが協力工場探しだ。現在は、昆虫食が盛んなタイで生産加工しているが、やはり日本の工場では昆虫であるコオロギを食品ラインへ入れることに抵抗がある。

「食品工場において虫は従来『害虫』扱い。コオロギを扱っているとなると、その工場で生産する他メーカーから誤解を招くという懸念が多かったです。今年5月から、日本での加工に切り替わりますが、和菓子・洋菓子工場など50軒以上に断られました」

理解があっても、昆虫はエビ・カニと同様に甲殻アレルギーが出る可能性がある。そのため生産ラインの汚染を懸念し、受け入れてもらえないことが多かったという。

また、昆虫の風味を心地よく感じるようにすることも苦心したようだ。商品の含有タンパク質をコオロギ由来で補おうとすると、「食感もパサツキ、風味もキツく、後味がウッとなりました」と語る。

「加える熱の温度、時間を調整し、コオロギの『きな粉』っぽい風味が感じられるようにしました。ターゲットである運動をされる方が、運動した後に食べやすいように、フルーツでチューイーな食感にしました」

今後「めっちゃ美味しい!材料を見たらコオロギだった」を目指していく

左・抹茶味、右・チョコ味

左・抹茶味、右・チョコ味

昆虫食の商品は、米国・カナダなど英語圏を中心にコオロギやミルワームのスナックなどが少しずつ認知されてきている。しかし、日本では市場が小さく、本格的に商業ベースで取り組んでいるところはないといい、

「従来の”昆虫食”の推進では限界があると考えています。しかし、機能性に優れた原料としては可能性があるのではないでしょうか」

と語る。今年1月には、徳島大学が災害備蓄用の食品として「コオロギパン」を発売している。一般的なパンよりもタンパク質を多く含むので災害時の栄養補給に期待されている。

バグモクリケットバーは、昨年11月の販売開始から累計3500本販売した。3月25日現在、オンラインショップは全品売り切れ状態となっている。

「購入者からは『とても美味しい』という声も寄せられています。既存のプロテインバーの人工甘味料などに不満を持つ人も多いですが、バグモクリケットバーは自然な本物の味ということで好評です。また食物繊維が豊富なので『疲れが取れやすくなった』『お通じが良くなった』といった健康の底上げに関する声もありました」

また、同商品を誰かに渡すと会話が生まれるという声も寄せられているという。

「子どもにおやつとしてあげる際に、牛さんを育てるにはたくさんのエサが必要で、森をなくなってしまう。コオロギさんは、小さなお家で、エサも少なく育てられるので、地球に優しいんだよ、と絵本を読む代わりに話しているそうです。説教でも、小難しい話でもなく、こういった光景が生まれてるのは嬉しいです」

この好反響に松居さんは、「一過性のブームに終わらないよう、コオロギだからの美味しさ・魅力を引続き提供して行きたいです」とコメント。今後については、

「バーはもちろん、もっと幅広いコオロギの食材としての提案をしていきます。『めっちゃ美味しい!で、材料を見たらコオロギだった』というように美味しい食材として食卓に溶け込む世界を近いうちに実現させます」

と語った。

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