鉄オタ夫に悩まされる妻の嘆き 「家は車両基地。最愛の息子も鉄オタにされてしまいました」
大学の写真部で知り合った雪子さんとご主人。旅行という共通の趣味を通じて仲を深め、結婚後も夫婦で撮影の旅を楽しんでいました。
「鉄道の写真を撮るのが好きなのは知っていました。なので、旅行先でローカル線の撮影スポットに立ち寄ることもありましたが、観光のついで程度。それ以外に鉄道の話題は聞いたことがなく、鉄オタだなんて思いもしませんでした」
そんなご主人が本性を現したのは、長男が産まれてから。産院から自宅に戻った日、「男の子だったら、産まれてはじめての贈り物にこれをあげるのが夢だった」と、プラレールを買ってきたそうです。
はじめは微笑ましく感じた雪子さんですが、毎月「生後〇か月記念」として車両を追加。子どもが目でモノを追うようになると、ベビーベッドからみえる位置にレールを敷いて電車を走らせるなど、エスカレートする夫の姿に違和感を覚えるように。
「息子のためって言いながら、どうみても本人が楽しんでいるんですよね。埃が気がかりではありましたが、それでも育児参加に繋がればと思って、黙認していたのですが……」
しかしこれらは試運転にすぎず、息子さんの成長とともに、雪子さんの本当の悪夢がはじまります。
「息子のため」と偽った独りよがりの鉄道旅行に連れ回される
英才教育(?)の影響もあり、かくして鉄道好きに育った息子さん。父親とプラレールで遊んだり、電車の絵本やDVDを一緒に見たりする姿は微笑ましいですが、子どもの興味が深まれば、もっと与えたくなるのが親心。「本物を見せてやりたい」というご主人の一声で、毎月のように”鉄道の旅”がはじまったのです。
「そのとき息子はまだ1歳。長旅になれば道中でグズるのはわかりきっているのに、『息子の好きな車両を見せる』って毎回遠方まで赴くんですよ。当然、息子の世話はすべて私。夫は隙をついてカメラ片手に消えていきます」
どうやら、ご主人が撮影したい電車の時刻表に合わせてプランを立てていたらしく、あえて遠回りをして目的地に向かう、ということもあったようです。
挙句、目的地に着くころには息子さんは爆睡……なんてこともしょっちゅうで、「子どもをダシにした独りよがりの鉄道旅行としか思えなかった」と、振り返ります。疲れるのはもちろんですが、旅費がかさんで貯金ができないこともストレスになったと言います。
“親子の趣味”によって進化を続ける自宅の車両基地
とはいえ、息子さんの成長に伴い、鉄道の旅は楽しみも増えていきます。子どもも電車を見て喜ぶようになり、少しずつ旅の意義を感じるように。しかしその矢先、新たな問題が勃発します。
「今度は、車両形式プレートのレプリカを入手してきたんです。もちろん子どもは大喜び。それに気をよくしたのか、駅舎や車両のパーツ、駅名票などがどんどん増えていきました」
なかには本物らしきものも。ネットで調べてみると、かなりの高値で取引されているものでした。経済的な不安からご主人を問いただすと、「自分が若いころに収集していたものを実家から持ってきた」と白状したそう。
「交際中、鉄オタがバレたら引かれると思って隠していたそうです。そのまま結婚しちゃって、言い出す機会を完全に逃したって。それなら最後まで隠し通してほしかったですよ……」
所かまわず「ここは島式ホームだ!」と語りだす息子にも困惑
ほかにも隠し事があるのでは? と疑心暗鬼になったり、信頼されていなかったのかと寂しさを感じたり、気持ちが落ち込んでいく雪子さん。一方ご主人は、カミングアウトでスッキリしたのか、前にも増して鉄オタぶりを発揮するように。
これまで秘密裏におこなっていたのであろう鉄オタ同志の交流を堂々とやるようになり、家族旅行はいつしか鉄オタ仲間との撮影旅行へ姿を変えました。イベントのときは有休をとって出掛けていくことも。
「浮気されるよりはマシって自分に言い聞かせていますが、鉄道に興味のない私には苦痛です。家の中は鉄くさいし、壁一面模型やプレートが埋め尽くして落ち着かないし、休みのたびに出かけていくし……。息子も5歳になり、最近はふたりでジオラマづくりも始めたんです。もういい加減にしてほしい」
親子で共通の趣味となっている以上、やめさせることもできずに困っているという雪子さん。最近の悩みは、息子さんが「ここは島式ホームだ!」「クハ201はね……」など、所かまわず鉄道用語を口にすることだそうです。
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