共同通信のアンケートに、全国47都道府県が「20年度から非正規公務員にもボーナスを支給する」と回答したそうだ。自治体が雇用する正規職員の総数はおよそ64万3000人。平均月給は17年度の事務職員で14万5000円と低く、”官製ワーキングプア”なんて不名誉な呼称もある。
ボーナスの支給は、非正規労働者の待遇を改善する「同一労働同一賃金」を背景にしたもの。「職務内容が同じであれば、同じ額の賃金を従業員に支払うべき」という考えの下で、大手企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から、法律で事業主に義務付けられる。民間企業でも「同一労働同一賃金」に向けた対応は進んでいるのだろうか。企業口コミサイト「キャリコネ」に寄せられた口コミを見てみよう。
「同一労働同一賃金を実施」と公言したが……
「社内に緊張感が足りない。競争意識が欠けている。同じ仕事をしているのに同一労働同一賃金ではなく、不公平を感じる」(ホテルスタッフ、30代後半、男性、正社員、年収360万円)
「給与面、規律面で不透明な部分が多すぎる。拘束時間も長く体力的にキツイ部分もある。同一労働同一賃金をいち早く実施したと世間に公表していたが、社員への説明もなく変更後も説明はない」(物流サービス、30代前半、男性、正社員、年収500万円)
「待遇面では多くの不満がある。特に給料が安く、年功序列が色濃い。同一労働同一賃金で、営業成績次第で給料や昇進を決めてほしい。実力主義の会社がとてもうらやましい」(代理店営業、20代後半、男性、正社員、年収312万円)
法律施行が来年以降ということもあってか、実際に待遇改善や変化を実感しているとの口コミはみられなかった。むしろ、正社員同士でも同じ仕事をしているのに、年功序列などで給与格差を感じる場面が多いようだ。さらに、同一労働同一賃金の実施を公言している企業でさえも、従業員には何の説明もなかったという口コミもあり、形だけの取り組みになってしまっている恐れがある。
企業によっては「正社員の給料を下げて実現」も?
「同一労働同一賃金と言われている昨今ですが、店頭業務に差はなく一通り同じ仕事をしているにもかかわらず、正社員との賃金の格差はハッキリ有ります」(カウンターセールス、40代後半、女性、契約社員、年収350万円)
「自分は派遣社員だったのですが、正社員と同等、むしろそれ以上の働きをしながら報酬に大きな差が出ることに対して大きな不満を持っていました。同一労働同一賃金を制度として定めないと、多くの若者は自分のようにやる気をそがれてしまうと思います」(ショップスタッフ、20代後半、男性、派遣社員、年収234万円)
契約社員や派遣社員からは、正社員との間に待遇差を感じている生の声が挙がった。正社員以上に仕事をこなすケースでも、現状では評価されず、格差を感じているという。
「同一労働同一賃金」が導入されれば、契約社員や派遣社員、パート従業員らの基本給アップやボーナス支給といった待遇改善に加え、福利厚生や休暇、教育・研修制度などについても正規と非正規の差がなくなる可能性がある。
しかし、雇用する企業側にとっては負担が重くのしかかるのも問題。前述の非正規公務員へのボーナス支給に関しても、年間の人件費は判明分だけでも約130億円に膨らむ見込みという。コスト増を懸念する企業によっては、厚生労働省のガイドラインで「望ましくない」とされている正社員の待遇を下げることで「同一賃金」を実施することも考えられる。正規、非正規のどちらの労働者にとっても”改悪”にならないよう祈るばかりだ。