新型コロナウイルスの感染拡大に伴う在宅需要の拡大で、宅配サービスが好調だ。ヤマトHDが今春発表した3月期決算によると、親会社に帰属する当期純利益567億円(前年同期比154.0%増)で、過去最高を更新した。
そんなヤマト運輸を特集した『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK、5月18日放送回)の番組内容がネット上で「採用PR動画みたい」などと話題になっている。
番組では、埼玉県内の営業所に勤める宅配ドライバーの男性(29)に密着。「約6万人のドライバーの頂点に立つほどの実力の持ち主」と紹介された男性が、荷物を届けるという”当たり前の日常”を支えるために汗を流す男性の仕事内容が限界までドラマチックに紹介された。
住人の在宅時間帯を記憶、雨が降れば駐車の向きにも配慮
仕事に懸ける男性の姿勢は驚異的と言える。例えば、担当エリアにある約2000世帯のほぼすべてに関して、住人が在宅している時間帯を記憶しているため、再配達率は業界全体の平均を下回る数パーセントにとどめられているというから驚きだ。
また雨が降っている時は、風向きとは逆にトラックを止めることで、荷台に雨が吹き込まないようにする、道端に生えている木の枝がトラックに接触し、木が痛むのを防ぐためにルートを迂回する、など数々の細かすぎる配慮がみられた。
そんな一見”仕事のできる”男性ドライバーだが、かつては短大を中退したり、夜遊びしていたりで、本人も「逃げてばかりだった」と語る。それでも、同社に入ったことで生まれ変わったといい、
「自分が大変な思いをしたってことは、その分お客様が大変な思いをしなかった、ということに繋がっているんじゃないか」
「いつか(宅配ドライバーが)職業の夢ランキングにでも入ってもらえたらな」
など数々の名言も飛び出した。ナレーションでも「永澤が荷物を運べば、街の空気も変わる」と流れた通り、荷物を受け取る人々や職場の同僚らの明るい笑顔が映し出されていた。
驚異の気配りも”過剰サービス”?
ツイッターでは、「めちゃくちゃ感動した」「ボロボロ泣いた」「本当にプロで凄い」といった声が挙がる。あまりにストイックな気配りぶりに驚愕した人が多いようだ。「やっぱり配達はヤマトに頼もう」とPR効果も十分だったようだ。
一方で「美化しすぎ」「案の定過剰サービス」「新人研修ビデオ見たい」といった冷静な声も。物流業界は慢性的な人手不足に陥っており、労働環境が厳しいことで知られている。さらにヤマトは2017年に230億円の残業代未払いが発覚。そうした背景を考えると、過剰なまでに気配りをするドライバーたちが少し心配になってくる。
ただ、コロナでの収益増を受けて、同社は昨年の冬のボーナスを5.8%アップしている。従業員の頑張りに応えるとのことで、今後また待遇が改善されていく可能性はありそうだ。番組で語られていたように、宅配ドライバーが「夢の職業」ランキングに入る日は来るだろうか。