ゴミで廊下が埋め尽くされている。北京の「清華大学に留学中」だというユーザーのツイートした写真に多くの反響が寄せられている。(文・昼間たかし)
なんでこんなに散らかるの?
見ると、廊下が文字通りのゴミの山だが、これには「理由」があるという。大学当局が廊下に放置しているものはすべて破棄すると告知したところ、これ幸いとゴミ捨てが億劫な学生たちが廊下にゴミを投げ出したということのようだ。ちなみに、これ、毎年同じことが繰り返されているそうだ。【実際の画像は記事下部の関連記事から】
「ほんまかいな」と言いたくなるところだが、筆者は数年前に上海で開催された同人誌即売会でも、同じような光景を目にした。
そのときの写真がこれだ。
即売会の熱気は日本のコミケとも通じるものがあったが、全く違ったのは閉会後。大勢いた参加者が、同人誌が入っていた段ボール箱や、食事の容器や食べかけのゴミまで、ありとあらゆるゴミを雑然と放置して、椅子もたたまないままで帰っていっていたのである。
日本のコミケだと、閉会後は参加者たちが丁寧に後片付けをして、ゴミも所定の場所に捨ててから帰るのが当たり前。特に誰から指示されるわけでもないが、みんなが協力して動くのである。このギャップには驚いた。
ところで筆者は中国の都市で、こんなふうに雑然とゴミが放置されているのは見たことがない。街角には日本よりも数多くごみ箱が設置されているし、街は非常に綺麗に整備されている。日本と同じか、それ以上に清潔だという印象だ。
この落差はなんだろう。試しに中国出身の人たちに聞いてみたところ、みんなゴミが大量に放置されている光景にはドン引きしていた。
「これはちょっとありえない。少なくとも私の周囲ではゴミをゴミ箱以外のところに放置する人はみたことがありません。集団になるとモラルのない人が混じるというわけでしょうか」(上海在住の男性Aさん)
この写真に、中国の教育問題を見出す人も。
「受験戦争の厳しい中国では、道徳やマナーを学ぶ機会が少なくなっていると思います。多くの学校ではよい大学に入ることを目的にした国語、英語、数学に偏重した教育が行われていて、道徳や人文系の学問を学ぶ機会が少ないんです。その結果が、これなのではないでしょうか」(上海在住の男性Bさん)
答えてくれたのは中国の20代の人たちだが、日本よりも数段厳しい学歴社会の負の側面が、これなのだろうか?
学生の恒例行事になっているケースも
さらに、中国ではゴミをぶちまけるに等しい恒例行事があるという話も聞けた。
中国には毎年6月に全国統一の大学入試「高考」がある。ほぼ一発勝負で人生の決まる試験と言われている。将来への不安を抱えて勉強に励み、病んでしまう若者も絶えない。それぐらい「厳しい」試験だ。
それだけに、そんな試験後にはみんな溜まっていたエネルギーを爆発させる。試験会場で、問題用紙や使っていた参考書などを窓からぶちまけることが、一種の恒例行事になっているという。
多数の受験生が試験終了と共に一斉に紙を投げるのであたり一面に紙が舞い、紙の山で地面は真っ白に染まっていくという。この行事は「扔书(本を投げる)」などと呼ばれていて、今では恒例の学生文化となっている。その時期になると、中国では季節の風物詩としてニュースで取り上げられ、ビリビリ動画などの動画投稿サイトにも多数の動画がアップロードされている。
「もっとも、すぐに業者がやってきて掃除をしますし、後片付けをする学生も多いんですけどね……」(成都在住の女性Cさん)
実際、いくつかの動画では、地面に散らばったり立木に引っ掛かった紙片を片付けている業者や学生たちの姿もみることができる。一方で開放感に包まれた騒ぎは夜になっても続いている。
そうした試験を経て入学した大学でも、そのカリキュラムは日本の大学とは比べものにならないほど厳しい。ゴミを廊下に放り出すのは、そんな現実を生きる、学生たちの「祭」のようなものなのかもしれない。